実は最近、絵本を出しました。「ちんちんぼうずのだいぼうけん」という実に手に取りづらいタイトルの冒険ファンタジーですが…これ、息子が考えた物語に私が絵をつけたもの。つまり親子合作です。

 

もともとの目的は、自分たちだけで楽しむ絵本を作ることだったので、好き放題やりました。当然パンツを履いていない主人公の少年と、意志を持ったちんちんが人助けをしたり、おしっこでドラゴンの炎を消したり、銀シャリと鮭のランチを楽しんだりします。そんなものを作っているさなかにまさかの書籍化の話。いいんですか!?下、履いてませんよ?

 

…それからは激動の日々でした。当時4歳の息子にヒアリングをしてストーリーを完結させるのに7か月、キャラクやーや背景を絵に起こして、その都度イメージを息子に確認し、色を塗るときには隣に座って指示を出してもらい、その間に息子は5歳になって…トータルでかかった時間は実に1年以上。私の仕事のなかでも一、二を争う長期プロジェクトです。

 

大人の私が息切れしそうになっているのに、若干5歳でよくついてきたものだと思います。完成した絵本が届いたとき、私も息子もポカーンとしてしまった。人って嬉しすぎると思考が停止するみたい。それから私は少し泣き、息子は雄叫びを上げて床を転がっていました。

 

 

「ちんちんぼうずのだいぼうけん」は、本気で遊んでいたらいつのまにかそれが仕事になっていて、本物の作品ができてしまった、という嘘みたいな話。でもそれは、私がずっと夢見ていた理想の仕事のかたちです。

 

私は不器用なもので、仕事とプライベートを切り離すことができず、子どもがいるのにこんなありさまでいいのだろうか、と悩んだこともあるのだけれど…。この絵本づくりに関しては、最初から最後まで息子と一緒に経験することができて本当によかったと思います。仕事と暮らしを切り離すことができないのならいっそ、ちゃんと仕事の中身を見せるというのも、ひとつのやり方かな、とも。

 

そして息子はひとつの作品を最後まで手掛けたことで自信をつけ、将来の夢がきまったのだそうです。

 

「オレ、おおきくなったら編集者になる!」

 

…そっち!? なんにせよ、絵本を作ったことがポジティブな経験になったようでよかった。

 

 

 

文・イラスト/横峰沙弥香