毎日のように食料品の買い物に訪れるスーパーなどの店頭で、手に取った商品のパッケージ表示を確認する機会は多いと思います。
「いや消費期限しか見てないわ!」という人から、原材料の産地・食品添加物の種類・遺伝子組み換え原料の有無・カロリーなど、さまざまな情報が詰め込まれた「食品表示」。
2020年の4月1日から、この食品表示が統一されたことに気づいていますか?
今回は、毎日バタバタで仕事に育児に忙しいけど、子どもの食の安全に関わることはやっぱり気になる…というママやパパのため、改正のポイントをざっくりと解説します。
「食品表示法」は3つの法をまとめたもの
食品表示法そのものは、実は5年前の2015年4月から施行されています。
ただいきなり全パッケージを切り替えるのは大変なので、5年間の猶予期間が取られていましたが、今年4月からはその期間も終わり新しい表示が義務づけられることとなりました。
「食品表示法」は、以前からあった次の3つの法律を1つにまとめ、事業者にとっても消費者にとってもわかりやすくするためにできた法律です。
- 食品衛生法…食の安全性確保を目的とした法律
- JAS法:::食品の品質に関する基準をまとめた法律
- 健康増進法(のうち、食品にかかわる規定)…国民の健康維持や疾病予防を目的とした法律
複雑でいろいろな法律状の規定が混在していた表示が統一され、見やすくなったものと考えてよいでしょう。
今後は表示が十分でなければ、メーカーや生産者に罰金が課せられるようになります。
アレルギーの原因がわかりやすくなった
過去、食品そのものに異常がないにもかかわらず店頭から回収処分となったケースのうち25%は、アレルギーの原因となる原材料を適切に表示していなかったためといわれます。
また、パン、うどんなど小麦を含むことが明らかな食品や、オムレツなど卵を含むことが明らかな食品は「特定加工食品」と呼ばれ、小麦や卵の表示は省略可能でした。
改正後は、「特定加工食品制度」が廃止され、たとえばサンドイッチなら「マヨネーズ」という特定加工食品名を表示すれば原材料の「卵」は省略しても良かったのが、必ず「マヨネーズ(卵を含む)」と明記するよう変わりました。
今後は、たとえば米粉を使ったパンのサンドイッチで、表示内のどこにも「小麦」の文字がなければ、基本的に小麦アレルギーの子にも安心して食べさせられるということになります。
加工品のカロリーや食塩、栄養素が明記される
以前は、コンビニなどでパンやスナック菓子のパッケージ表示を見ると、カロリーや塩分などが記載されているものと表示されていないものが混在していたはずです。
今後、表示が義務化されるのは次の5つ。
- 熱量(カロリー)
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
- 食塩相当量
以前は、塩分に関しては「ナトリウム(塩化ナトリウム)」と表示しているメーカーもありましたが、ナトリウムは食品じたいにも含まれているため、分かりやすい「食塩相当量」に改められました。
ついつい手が出てしまうおやつも、カロリーや塩分が表示されていれば食べ過ぎをチェックしやすいですね。
「遺伝子組み換え」表示は限定的
さまざまな表示を分かりやすく…をめざした新しい食品表示法ですが、実は「遺伝子組み換え」や「ゲノム編集」によって栽培・養殖された食品の表示は限定的で、確実に知ることはできません。
現在、表示が義務づけられているのは次の8品目とその加工品33品目です。
- 大豆
- とうもろこし
- ばれいしょ
- 菜種
- 綿実
- アルファルファ
- てん菜
- パパイヤ
「え、でも、納豆や豆腐…遺伝子組み換えでないと書かれたものを選んでいるけど?」
と思うかもしれません。
たしかに、大豆のたんぱく質が残る豆腐や納豆には表示義務がありますが、しょうゆやサラダ油、それらを使ったドレッシングなどは「任意表示」となっており、遺伝子組み換え原料の有無は表示していない商品が大半です。
もし表示があったとすれば、それはメーカーが消費者の要望に応えて自主的に表示しているもの。
基準の厳しいヨーロッパ(EU)では、日本のメーカーが行っているような「遺伝子組み換え食品を使用していません」という表示だけでなく、「使用しています」という表示も求められます。
日本でも、2023年からは、メーカーごとに
- 「混入を5%以下に抑えるよう管理しています」と表記
- 流通段階から完全に管理して「遺伝子組み換えでない」と明記
のいずれかが選べるようになります。
しかし現状は、何も書いていなければ、微量~100%の遺伝子組み換え食品が使用されていることが普通でしょう。
また、狙った遺伝子を切断することで、肉厚な魚やたくさん実のつくコメなどを作り出す「ゲノム編集」食品に関しては、最先端の技術のため、世界でもまだルールが決まっている国や地域がないという状態。
人体への影響も未知数なので、子どもを持つ親としてはぜひ表示してほしいと考える人が多いのではないでしょうか。
小さなお店では表示がないことも
「食品表示法」は、原則としてすべての全ての加工食品、事業者に義務付けられています。
ただし、商店街のお惣菜屋さんで売っている煮豆やコロッケなどは、カロリーや塩分(食塩含有量)表示がない場合もあります。
「消費税免税業者(年間売上高が1000万円以下)」に限っては、成分の分析費用やパッケージ設備などが高額で負担となる場合は表示できなくても罰則が免除されるからです。
作り手の顔が見える手作りのパンやお惣菜などは、比較的添加物は少なめと予想されますが、子どもには味が濃すぎることはあるかもしれません。
初めて食べさせる時には味見したり、アレルギーのある子にはお店の人に材料をたずねたりする工夫も必要かもしれませんね。
おわりに
食品表示法の義務付けによって、基本的には、アレルゲンや原産国など消費者にとって分かりやすくなったといえます。
機会があれば、買ってきた食材を手に取って表示を確かめてみてはいかがでしょうか。
文/高谷みえこ
参考/消費者庁「新しい食品表示制度について」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/risk_commu_2015_003/pdf/150721shiryou_1.pdf
消費者庁「知っていますか?遺伝子組換え表示制度」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/quality/genetically_modified/pdf/genetically_modified_190425_0003.pdf
厚生労働省「ゲノム編集技術応用食品の表示の在り方について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11131500/000527478.pdf