新型コロナウイルス感染拡大予防のための3ヶ月近い休校の後、各地の学校で授業が再開されましたが、季節は6月。急激に気温が上がり蒸し暑くなる時期です。

 

まだ学校に慣れていない新1年生をはじめ「重い荷物を持って、真っ赤な顔で下校してきた」と熱中症などを心配するママの声が相次いでいます。

 

必要のない教科書や学習用品を学校に置いて帰る「置き勉」に関しては、2018(平成30)年に、文部科学省から全国の学校に向け、置き勉を認めるよう通知が出されましたが、いまだに全て持ち帰るよう決められている学校もあるといいます。

 

今回は、子どもの学校で置き勉が禁止されているというママたちの声や、なぜ禁止なのか、考えられる対策などを考えてみます。

 

コロナ休校明けで体力が落ちている中…

Yさん(36歳)は、この春からお子さんが小学校に入学。とはいえ、すでに全国的な休校中で入学式もなく、5月の末からはじめての登校となりました。

 

「外出自粛期間中は外で走り回れる雰囲気でもなく、私も在宅勤務で家で過ごしていたため、保育園時代とくらべて息子の体力はずいぶん落ちてしまった感じです…でも、荷物の量はすごいんです」

 

と心配しています。

 

「教科書やノート、ファイル類、水筒も大きめのものを持たせますし、週末や月曜日は上履き、それにランドセルそのものもけっこう重いですよね。下校時刻もちょうどお昼の一番日が高い時間で、帰ってきたら顔を真っ赤にしてふうふう言ってます。その日に使わないものは学校に置ければいいのに…」

 

ランドセルメーカーが実施したアンケート調査では、小学生が背負ったランドセルと中身の合計は平均6キロで、3人に1人の小学生が体の一部に痛みを感じていたとのこと。

 

以下の記事でも、宿題以外の教科教材は学校に置いて帰ってよいとする「置き勉」で、子どもの身体的負担を軽減したいと考える保護者がおよそ9割だったことがわかっています。

 

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部活のある中学生はさらに過酷な荷物の重さを強いられていることも。

 

「中学2年生の娘。3月の休校直前にはすべての教科書や学用品・部活の道具を持ち帰ってきた日があり、はかってみたら15キロもありました!」(Hさん・41歳・中2と小5のママ)

 

しかし、お子さんによれば、定期テスト後などには教科書や部活の道具を全部持って登校するため、以前からこのくらいになることは珍しくなかったとか。

 

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「小学校は比較的家から近いんですが、中学校は学区も広いし、うちは端の方なので25分くらい歩きます。背が伸びないんじゃないか、体が傾いちゃうんじゃないか…と思いますよね。でも、置き勉は禁止なんです」

 

文部科学省が「置き勉OK」と言っているのに…?

たしかに、過去にはすべて持ち帰るよう決まっている学校が大部分でした。

 

しかし近年、学習要領の改正などにともない教科書や資料集などは大型化。英語など新しい教科も増え、以前よりも子どもの荷物は重くなる傾向にあります。

 

そんな中で、2018(平成30)年、文部科学省は、全国の小・中・高を管理する教育委員会などに向けて「置き勉」を認めるように通知を出しました。

 

ところが、2年が経過しようとしている2020年現在も、まだ「置き勉禁止」という学校は意外と多いようです。

 

禁止の理由はいくつかありますが、本当に子どもの負担を減らそうと考えるなら対策を取れるものも多いのではないでしょうか。

 

禁止の理由①「時間割や明日の準備を整える練習にならない」

毎日、翌日の準備をきっちりする練習が必要だから…という理由ですが、たとえ教科書が学校にあっても、連絡帳や筆記用具・ハンカチ・ティッシュなど明日の準備は常に必要です。

 

また、家と学校が入れ替わるだけで、下校時に「今日は何を持ち帰らなければいけないのか」を考えることも練習だといえるのではないでしょうか。

 

禁止の理由②「宿題に必要な教科書を学校に忘れて帰ったら困る」

これからはデータのクラウド化がますます進み、どこからでも情報にアクセスできるようになる時代。

 

忘れ物をしないことはもちろん大事ですが、「宿題をやること」が目的なら、家庭でタブレットでプリントをダウンロードするなどのシステムを整えてもよいのではないでしょうか。

 

禁止の理由③「登校とオンライン授業併用なので自宅に教科書がないと困る」

1日おきに登校とオンライン授業…という学校もあります。

 

しかし、学校では紙の教科書を使い、自宅のオンライン授業では教科書を使わず小テストや演習を行うなどの工夫をまず考えてみて、どうしても必要な時だけ持ち帰る…などの方法をとるだけでも、荷物の量はかなり減らせるでしょう。

 

禁止の理由④「盗難やいたずらが心配」

過去の学校は今よりも自由に人の出入りが可能でしたが、現在はかなり戸締まりや防犯システムが発達している学校が増えています。

 

また、少子化でスペースにゆとりができた学校も多いので、個人用の鍵付きロッカーを設置するなどの方法を考えてもよいのではないでしょうか。

 

コロナウイルス感染防止にも悪影響?

2020年は休校期間の学習の遅れを取り戻すために夏休みが短縮される学校も多く、そうなると子どもたちは8月でも炎天下を歩いて登下校しなくてはなりません。

 

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同時に新型コロナウイルス感染予防も続けていく必要がありますが、夏場のマスクは顔付近の温度上昇やのどの乾きに気づきにくくなるなど、熱中症のリスクを高めるため、「登下校ではマスクをしなくてもよい」という通達が学校に届いているはず。

 

そして、マスクなしで感染を防ぐ方法のひとつとして、「晴れた日もみんなで傘をさす」というアイデアを取り入れている学校も増えているそうです。

 

しかし、お子さんの学校では置き勉が禁止されているというWさん(43歳・小学3年生のママ)は、

 

「いいアイデアだと思いますが、水筒や給食袋に加え日替わりで体操服・習字セット・絵の具・鍵盤ハーモニカ…傘を持つ手が足りないですよね」

 

と心配しています。

 

おわりに

日本では、近年の温暖化で夏にエアコンを使わないと生命が危険にさらされるようになってきたのと同じく、以前は当たり前だった全部の学用品を持ち帰るルールも、環境が変われば許容範囲を超えてしまうこともあります。

 

「学校のルールだから」で終わらせず、目の前の子どもたちの状態をちゃんと見て安全と健康を第一に考える…そんな当たり前のことが全国に広まってほしいものです。

 

文/高谷みえこ

参考/文部科学省「児童生徒の携行品に係る配慮について」 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/keikohin/__icsFiles/afieldfile/2018/09/06/1408967_001_1.pdf

株式会社セイバン「小学生の荷物の重さとランドセルに関する調査結果」 https://www.seiban.co.jp/news/pdf/news_release20180606.pdf