4種類の血液型だけで人の性格を決めつける「ブラッドタイプ(=血液型)ハラスメント」、略して「ブラハラ」の存在を知っていますか?

 

ちょっとした会話の中で血液型の話題で楽しむのは一見問題ないように思えますが、なにがハラスメントにあたるのでしょうか。

 

今回は、子育て中のママから聞いた「ブラハラ」体験談を取り上げてみたいと思います。

「ブラハラ」とは?

日本では、1970年代に血液型で性格診断や相性を解説する本がベストセラーになり、雑誌やTV番組などでも度々取り上げられたことで、人々に「血液型」によって人の性格が決まるという認識ができていきました。

 

上記の本で取り上げているのは、輸血時などに利用される「ABO型」ですが、血液型の分類にはそのほかにもたくさんの種類分けがあります。

 

書籍の内容は、おもにABO型で多くみられる気質と行動の傾向を伝えるものでしたが、しだいに、

 

「AB型は二重人格で変人」

 

「B型は時間にルーズでチャラチャラしている」

 

といった性格の一部分があたかもその血液型の人全員に当てはまるように広がっていったと見られます。

 

さらに、血液型の話題が人気だったため、血液型相性占い・運勢占いのコーナーをもうける番組や雑誌も増え、血液型で人の性格や欠点を決めつける風潮が強くなっていきました。

 

「やっぱりO型は大雑把よね~」等と言われれば、言われた人は不快に感じることも多いですし、度重なれば学校や職場での偏見や差別・いじめにつながる可能性もあります。

 

そこでこれらを「ブラッドタイプ・ハラスメント」と呼び、嫌がらせをなくしていこうという動きが出てきました。

 

BPO(放送倫理・番組向上機構)の青少年委員会は、2004年、「血液型を扱う番組」の現状は、放送基準に抵触するおそれがあると判断し、各放送局に以下のような要望を送りました。

 

血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしようもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある。(中略)血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する。

 

その後「血液型診断」がマスコミに登場することは激減しました。

 

しかし、子ども時代・学生時代によく触れていた影響からか、ママ友世代でもいまだに血液型を話題にする人は多いようです。

ママ友・職場・祖父母…ブラハラ攻撃の心理

単に血液型ごとの傾向を口にするだけなら問題はないのかもしれませんが、それが「ハラスメント(嫌がらせ)」に変わってしまうのはどんな時でしょうか。

 

ブラハラに遭った経験のあるママたちに話を聞かせてもらいました。

 

「うちの子、AB型なんです。たしかに何人かでブロック遊びをしているときに、みんなが他のことをしようと言っても、作り上げるまで1人でその場に残ってることはありますが、それって血液型のせいというより、個人の性格だと思うんですよね。でも、やっぱり○くんAB型だね~、変人タイプ?と。私の性格は別に何を言われてもいいのですが、子どものことを言うのはやめてほしい。特に本人や他の子が聞いているときは」(Mさん・32歳・4歳児のママ)

 

「以前の職場のマネージャーは、血液型で人を分類するのが大好きだったんです。誰でもミスはあるのに、やっぱりキミはB型だねー、まあ僕は知ってたから想定内だったけど?みたいな発言をよくする上に、それを仕事に生かせてると思ってるのがきつかったです。その後転職し、今の職場にはそんな人がいないので快適です!」(Tさん・35歳・7歳児と5歳児のママ)

 

「地域の子育て支援センターなどで数人で話しているとき、よくB型をディスって笑いものにするママがいるのですが…輪の中にB型の人いるかもよ?お子さんや家族がB型の人ぜったいいるよ?とドキドキしています」(Hさん・30歳・0歳児のママ)

 

「夫の実家は全員A型、私はO型。結婚前に、姑からO型についておおざっぱだとかきめ細かい気配りができないという発言を聞いたことがあり、私のことではなく一般論だと思うことにしたんですが…子どもが生まれたときO型だったことがわかると、あら、ついに○○家にO型が誕生しちゃったわねと言われて、カチン!ときました」(Kさん・33歳・2歳児のママ)

 

「急にたずねてきた義母に、A型なのに片付けが下手なのねって言われて本当にイヤでした!仕事終わりに3歳児とを1歳児を保育園から連れて帰って怒濤の家事育児、A型なだけで魔法みたいに家が片付くわけがないです」(Rさん・36歳・3歳児と1歳児のママ)

 

ブラハラに限らず、一般的にハラスメントをする人は、自分の価値観と合わない相手を見たときに「どちらの考え方もある」と考えられず、相手が間違っていると思う傾向があるそうです。

 

そして「間違っているものは正したい、正すべき」という心理が働き、つい指摘したり攻撃したりするといわれます。

 

そのほか、もともと相手に対して良い感情を持っていない場合や、ライバルを牽制したいとき、ストレスのはけ口がほしいときなどに、誰にでもある欠点や失敗を見つけると、なんとなく科学的に思える「血液型」を根拠にすればおおっぴらに批判・攻撃できるという心理もあるとされています。

ブラハラ発言への対処法

明らかに悪意があるときも、相手を不快にさせていることに気づいていない場合も、できればブラハラを仕掛けてくる人とは距離を置いて過ごしたいもの。

 

しかし、同じ職場などで簡単に離れられないケースもありますよね。

 

「血液型の性格診断に根拠なんかないんだから気にしなければいい」と言われても、「それができれば苦労しない」と感じる人も多いでしょう。

 

実際、仕事内容を血液型で割り振られては困りますし、血液型による悪口も度重なるとストレスになります。

 

ハラスメント全般に共通する対処法は、やはり信頼できる上司やハラスメント対応窓口などに相談すること。

 

言われた日時や内容などをメモしておくと、より冷静に状況を説明できます。

 

なお、仕事の面接時に「ところであなた何型?B型は協調性のない人が多いから採用してないんですよね」等と言われたような場合は、各都道府県の労働局や総合労働相談コーナー、派遣会社などを通じて報告することもできます。

 

総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

 

プライベートやママ友からのブラハラ発言に対しては、ママたちからこんな対処法も教えてもらいました。

 

「帰省したとき、義父のお気に入りのネタなんですかね?酔うとすぐに、だからB型の女はな~と持論を言い始めるんです。最初は我慢していたけど、子どもも生まれて教育によくないと思ったので、最近は笑顔で”あ、それ前聞きました!”と大きい声で言います。さすがに恥ずかしいのか、だいぶ言わなくなりましたね」(Dさん・34歳・1歳児のママ)

 

「ママ友で血液型談義大好きな人ってよくみたら限られてる。大部分の人は付き合いで話を合わせてるだけなので、その人が血液型の話題に行きそうになったら、子どもの世話をするフリして輪を離れてます」(Aさん・28歳・0歳児のママ)

おわりに

筆者の学生時代はまだ血液型占いが人気だったので、おしゃべりにも度々登場していたことを覚えていますが、2000年代に入りマスコミの影響が薄れてきたためか、いまの20代以下の世代では、血液型をネタにすること自体かなり減ってきているようです。

 

世界的にも、血液型で人の性格や相性を語るのは日本を含めたごく一部の国だけだそう。

 

グローバル社会を生きる子どもたちの将来のためにも、人に対して血液型で偏見を持つような発言は控えていきたいですね。

 

文/高谷みえこ ※画像はイメージです

参考/書籍『血液型でわかる相性―伸ばす相手、こわす相手』能見 正比古 著/青春出版社

BPO 放送倫理・番組向上機構 青少年委員会|「血液型を扱う番組」に対する要望

https://www.bpo.gr.jp/?p=5125