いつもゆっくり行動し、遊びや競争にも積極的に参加しようとしないうちの子。
よく言えば「おっとりしている」だけど、このまま小・中・高と集団生活の中でやっていけるの…?と心配しているママは少なくないのでは。
さらに将来、仕事に就いたときテキパキと働けるのか、出遅れてソンしてしまうことはないのかと、心配ごとは尽きないかもしれません。
今回は「おっとりした子」の性格と行動の理由、将来のために親ができること、逆にしてはいけないこと・しても仕方ないことなどを解説します。
どうしてこんなにマイペース?
よく言えばおっとり、でも時には「鈍い」「どんくさい」などと言われることもある子たちは、心の中ではどう感じて行動しているのでしょうか?
その心理と理由をいくつか挙げてみます。
いわゆる「奥ゆかしい」子
Yさん(36歳)は6歳の男の子のママ。
以前から、お子さんが公園の滑り台やブランコで順番を抜かされても怒りもしないので、見ていて時々じれったくなるといいます。
「早いモノ勝ちで景品がもらえるときも、んー、まあいいやって感じで。たまには他の子を押しのけてでももらいにいくようなガッツがあるといいな…なんて、欲張りですかね(笑)」
他の子がわれさきにと突進するのを見ると、自分はあとでもいいやと譲ってあげるタイプですね
古来の日本なら「奥ゆかしい」と称えられるかもしれませんが、近年は資本主義の競争社会で価値観の変革がすすみ、最近では「うちの子の長所は奥ゆかしいところです」などと言う人はほとんどいないかもしれませんね。
よく考えてから行動に移すタイプ
「小学校の参観日、次々に手をあげる子もいるのに、うちの子はぜんぜん手をあげようとしないんです。答えは分かっているはずなのに、発言したい!という欲求があまりないみたいなんですよね」
というRさん(40歳・3年生のママ)。
ただ、担任の先生からは、道徳などじっくり考えて意見を述べるような授業では、みんながはっとするような深い発言をすると言われているそうです。
お子さんが日頃ポンポンと発言しないのは、浮かんだ考えを口に出すべきかどうかよく考えていて、みんなが分かっていることはあえて自分が言わなくても大丈夫と判断しているのかもしれません。
おっとりしているように見えて、実はとても精神年齢が高いともいえますね。
そもそも生まれつきの気質もある
おっとりしたタイプの子は、中学校や高校に進学後、部活で役に立たないと思われたり、就職すれば「仕事が遅い」と言われたりするかも…と、親としてはちょっと心配になってしまいますよね。
小さいうちになんとか改善しなくては!と焦ってしまうかもしれませんが、そもそも、人にはそれぞれ生まれ持った「気質」があります。
周囲のかかわり方や教育など、後天的な要素で「性格」は変わりますが、気質は基本的に一生変わらないとされています。
生まれつきおっとりしたタイプの子は、
- 病院の待合室や電車、レストランなどで騒がない
- 予防接種や中耳炎の治療などをあまり嫌がらず受けてくれる
- イヤイヤ期が比較的おだやか
など、活発で気性が激しい子のママから見ると天使のような面もあります。
また、職場でも、作業や行動は早いけれどミスが多い人がいるのではないでしょうか?
なんでも手際よくできて、控えめで自己主張ばかりしない…というのは大人でもかなり難しい要求。
できない部分にフォーカスせず、良いところに目を向けて伸ばしてあげられればベストですね。
おっとりしてマイペースな子の親がいまできること
おっとり・行動が遅いのが心配なわが子に対し、親として小さいうちに何かしてあげられることはあるでしょうか?
毎日の生活で「段取り力」を鍛える
おっとりした子は「マイペース」と呼ばれることもあります。
マイペース=その子なりのペースは根本的に変えることが難しく、むやみにスピードだけ上げさせようとしてもなかなか結果が出ないばかりか、ストレスから心身の不調が出てくる子もいます。
ただ、無理にペースは変えずとも、ある程度のテクニックを練習して身につけることは可能です。
仕事術としてよく取り上げられる「段取り力」は、子どもの毎日の生活にも応用できます。
- その場になってから判断するのではなく、前もって流れを考えたり、紙に書いたりする
- こうすると結果はこうなる…というシミュレーションを何パターンか用意しておき、本番ではそれにそって行動する
- いくつもやることがあるなら、理由を考えて優先順位をつける
など、ビジネス書に書かれている内容がそのまま通用する部分も多々あります。
ポイントは、結果をすぐに出そうと思わず、何度も練習を繰り返すこと。
たとえば、家族旅行に行くとしたら、ママやパパが事前に計画を紙に書いたり口に出したりして、「ホテルの立地によって車か電車かが変わるから、まずホテルを決めよう」など、子どもの前で実況してみせるのも効果的だといわれています。
親の気質もふまえて対応する
両親も比較的おっとりしている家庭では、子どもの気持ちも分かるため、あまりイライラしたり叱ったりせずに済むかもしれません。
しかし、両親がテキパキタイプだと、子どもの考え方が理解できず「なぜこんなことができないのか」とイライラする可能性があります。
ママ・パパのどちらかがせっかちという自覚があれば、パートナーに「セカセカしていたら教えてね」と頼んでおくといいかもしれませんね。
おっとりした子を育てることで価値観の幅が広がり、ママやパパにとっても成長の機会となるのではないでしょうか。
子供のよさに目を向けることが大切
以前、筆者の娘が通っていた幼稚園の園長先生から、小さな子どもに接する人はおっとりした性格が一番よく、そうでなくても「こんなおっとりした叱り方でいいの?」と思ってしまうくらいの対応を心がけるとよい…という話を聞いたことがあります。
「ママのバカ!」と言われても即座に叱り飛ばさず、「わあ、ママ(パパ)、そんなこと言われたらうれしくないなぁ」くらいが良いとのこと。
おっとりタイプの子は友達が傷つく発言をすることも少なく、たとえ目立たなくてもみんなに好かれている子が多いといいます。
お子さんのおっとりした部分を否定せず、認めて育てていきたいですね。
文/高谷みえこ