共働きで子育て中のファミリーのなかには、通勤に便利な首都圏の「タワマン」ことタワーマンションの購入を検討中の人も多いのではないでしょうか。

 

現在、東京を中心に全国のタワーマンションは1300棟を超え、2020年以降も258棟・10万戸以上の建設が予定されています。

 

今回は、タワーマンションでの育児を検討中のママ・パパ向けに、実際に「タワマン」に住んでいるママたちへのアンケートもまじえ、メリットや意外なデメリット・今後の見通しも紹介します。

 

「タワマン育児」のメリットいろいろ

まずは、東京都湾岸部の駅に近いタワーマンションで、共働きをしながら2人のお子さんを育てているHさん(34歳)に、タワーマンションならではのいい点を聞かせてもらいました。

 

「ほんとうの都心に行くと、もっと建物が密集していますが、このあたりは道路もマンションの棟間隔も広々としていて渋滞も少なく、子育て環境としては気に入ってます。敷地内に保育園やスーパー、クリニックが揃っているのも安心ですね」

 

Hさん夫婦は、上のお子さんの育休中に住宅の購入をすすめましたが、都内のタワーマンションか郊外の一戸建てかかなり迷った結果、タワーマンションに決めたそうです。

 

「一戸建てだと、予算内では駅から遠く、バス込みで通勤に1時間以上かかる場所になってしまい、夫婦とも残業時に保育園のお迎えができず困ると思ったんです。今は都心の職場から近いので、その心配がないです」

 

上のお子さんが小学生になると、夏休みや夕方に友達どうしで遊ぶ機会が増えたそう。

 

「集会室が複数あるので、雨の日でも誰かの家に負担をかけることなく、集まって遊べるのも助かっています」

 

下のお子さんが赤ちゃんの時に入居したHさんですが、育児で助かったことは

 

「ゴミ捨て場が各フロアにあり、オムツのゴミをいつでも捨てられるのが地味にうれしかったですね!長男の時はアパートで、おむつバケツがいっぱいになって大変だったので」

 

だといいます。

 

過去には、都市部にタワーマンションができて急に地域の人口が増えた結果、保育園や小児科・スイミングスクールなどの習い事まで不足したり、小学校のマンモス校化が社会問題になりました。

 

しかし比較的新しい建設エリアでは、ライフラインに必要な施設があらかじめ確保されたタワーマンションが増えているようです。

 

元「タワマン育児」ママが語るデメリット

いっぽう、タワーマンションの高層階に引っ越したものの、結局引っ越してしまったというAさん(39歳)は、その理由を次のように話してくれました。

 

「上の子が2年生、下の子が4歳のときに新築で入居しました。キレイで眺めもよく、子どもたちも大喜びで最高…のはずだったのですが」

 

入居後しばらくして夏になり、大きな台風が直撃したときのこと。

 

「ものすごく揺れて怖かったんです。免震の面からは、むしろ揺れる方が安全だとは頭では分かっているんですが、トラウマになってしまい、しだいに普段もなんとなく揺れている気がするようになってきました」

 

しかし、同じマンションの人に話すと、誰もそんなに揺れを感じていないことが分かり、Aさんは自分がおかしいのか…と、かなり悩んだといいます。

 

「実はもうひとつ、ストレスになることがあったんですね」

 

それは、子どもを通じて知り合った上階の2人のママたちでした。

 

「長女があるとき、帰宅して泣き出したので聞いてみると、最高層階の同級生2人が帰り道でいつも自分を置いて走って逃げてしまうと言うんですね。娘はその子たちと仲良くしたいので追いかけるのですが、エレベーターが違う子は入れてあげないと言われてしまったそう」

 

お子さんが学校に行きたくないと泣くので、翌日はAさんが迎えにいったところ、例の同級生の子たちが近づいて来て

 

「○○ちゃんのパパってどこの会社?」 「お給料いくら?」

 

と聞かれ、びっくりしたそうです。

 

「前日のこともあったので、思わず、お給料とかは聞くもんじゃないのよ、と答えたんです。そうしたら、家に帰ってママに話したみたいで…数日したら、今まで公園で一緒に遊んでくれた近所の親子が、いっせいに目をそらして逃げるようになってしまって」

 

もちろん、そんなことをする方がおかしいのだとは思いながらも、子どもたちにさらに寂しい思いをさせてしまう結果になり、Aさんは愕然としたといいます。

 

「精神的なものもあってか、ますます揺れとめまいが強くなり…夫も心配して、とうとう、駅からは遠いけど、中古の一戸建てに買い替えることになりました」

 

引っ越したあと、前の同じフロアのママがこっそり、メッセージアプリでAさんたちを無視するように指示があったのだと知らせてきたそう。

 

「ごめんね、ずっとここに住むと思うと逆らえなくて…と謝られました」

 

新しい学校では特にトラブルもなく、今はAさんのめまいも回復し、落ち着いて暮らせているそうです。

 

「今の家の周りは、商店街や銭湯などもあり、いろんな世代の人たちと触れあえることを実感しています」

 

もちろん、ママ友トラブルが発生するのはタワーマンションだけとは限りません。

 

しかし、新しいエリアに同じ年代のファミリーがいちどに数千世帯も入居する環境では、多様な価値観が育まれにくい側面があるのかもしれませんね。

 

「タワーマンション」今後の予測は…

2020年の新型コロナウイルス感染症によって、働き方や住まいの価値観も大きな影響を受けることが予想されています。

 

テレワーク・リモートワークの普及や、通勤・勤務の密を避けるため、今後、賃料の安い郊外のオフィスに移転・分散する企業が増える見通し。

 

それに合わせて通勤に便利な都心のタワーマンションの需要は従来よりも減る可能性が指摘されています。

 

また、今後テレワークやオンライン授業が一定の割合で定着すれば、住まいの条件は「職場や学校への近さ」よりも「スペースの広さ」が求められるようになるでしょう。

 

ただ、職業上テレワークは不可能で転勤の可能性がない人や、将来の売却益を見込まず住み続けるつもり…という場合は、上記の理由から購入価格が下落傾向なので、逆に今はチャンスといえるかもしれません。

 

おわりに

筆者は、いろいろなタワーマンションの友人宅を訪ねたことがありますが、中央が吹き抜けになっているタイプの建物は廊下からちらっとのぞき込むだけで気が遠くなりそうで、「自分にはとても無理」と思いました(笑)。

 

眺望や利便性に優れたタワーマンションですが、やはり住まいは「自分たちに合っているか」をよく見極めることが大切。

 

プラス面・マイナス面ともに、事前の情報収集は欠かさないでおきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/株式会社 不動産経済研究所「不動産経済・マンションデータ・ニュース-超高層マンション動向 2020-」https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/423/md20200427.pdf

書籍『タワーマンションは大丈夫か?!』齊藤 広子/浅見 泰司 著・プログレス出版