お子さんを育てていて、あるいは自分自身が子どもの頃に、一度は「成長痛」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

典型的な症状は、夜になると子どもが「足が痛い」と訴えたり泣き出したりするものの、朝になると痛みは消えてけろっとしている…というもの。

 

幼児から小学生の成長期によく起こることから一般的に「成長痛」と呼ばれますが、実は「成長痛」という単独の病気は存在しないそう。

 

今回は、成長痛の基本的な知識やママたちの「わが家の成長痛体験談」を紹介します。

「成長痛」という病名は実は存在しない!?

子どもが毎晩のように「足が痛い」と訴えるにもかかわらず、レントゲンなどを撮っても異常がなく、日中は元気に走り回っている…という場合、整形外科などで「いわゆる成長痛ですね」と言われたママもいるかもしれません。

 

「成長痛」という言葉は19世紀に登場し、日本で広く使われ出したのは昭和に入ってからとみられています。

 

筆者も子どもの頃に、ケガをした覚えもないのに足が痛かったことが数回あり、母親が「成長痛かな?」と言いながら夜に足をさすってくれた記憶がありますので、かなり前から広く認知されていることが分かります。

 

現在では「骨が急成長することで直接痛みが生じたり、周囲の筋肉などが引っ張られて痛くなるわけではない」と考えられていますが、保護者にわかりやすく伝えるため、今も「成長痛」が通称として使われているようです。

痛みをすべて「成長痛」で片付けるのは危険?

ただ、注意しておきたいのは、成長期の子どもが「足が痛い」というときには、実際に関節や骨に障害や病気が生じている場合もあるということ。

 

子どもの下肢(足)に起こりやすい、痛みをともなう病気には次のようなものがあります。

「踵骨骨端症(別名:セーバー病)」

成長期に激しいスポーツやサイズの合わない靴・肥満などにより、かかとに大きな圧力がかかった結果、軟骨を損傷し炎症や痛みが起こります。

「オスグッド病」

同じく成長期に、スポーツなどで膝の曲げ伸ばしを繰り返した結果、膝下の骨を損傷して痛みが起こるもの。サッカーをしている小中学生に起こりやすいといわれます。

「単純性関節炎」

足の付け根(股関節)に炎症が起きたり水がたまったりして痛み、そちら側の足をついて歩けなくなったり、熱が出たりします。

「ペルテス病」「化膿性関節炎」

大腿骨の端(骨頭)に血液が流れなくなった結果、潰れたようになってしまう「ペルテス病」や、関節に細菌が入り込んで炎症を起こす「化膿性関節炎」なども、初期症状として足の痛みが起こります。

 

上記が疑われるような所見がなく、ストレスや心因性の痛みではないかと推測される場合は、積極的な治療はせず、さする・温める・ストレッチなどを指示されることもあります。

 

ただ医療機関や情報サイトによっては、心因性のものとスポーツ等が原因で起こるもの、病気などをまとめて「成長痛」と呼んでいる場合があります。

 

ママ同士で話していて認識が異なり「あれ?」と混乱することがあるかもしれませんが、「成長痛」はあくまでも通称なので、具体的な治療や対応はかかりつけの医療機関の診断にそっていれば問題ないでしょう。

夜泣きは成長痛のせい?わが家の体験談

実際にお子さんが「成長痛」と診断された経験のあるママたちにも話を聞かせてもらいました。

 

「2歳の娘、あるときから夜泣きが続くようになりました。当時はまだ言葉があまり話せなかったのですが、イタイイタイと泣くので、どこが?と聞くと足を指差すんですね。でも朝になると、泣いていたことも忘れて元気に走っていて。2~3日おきに数回続いたので受診してみたのですが、特に異常はなく、成長痛とのことでした。あんな小さい子でもなるんですね!」(Wさん・33歳・当時2歳児のママ)

 

なお、当時Wさんは2人目のお子さんの妊娠初期で、つわりで体調が不安定だったそう。安定期に入って体調が落ち着いた頃から、上のお子さんも夜泣きがおさまり、足を痛がらなくなったといいます。

 

Yさん(40歳・当時小学2年生のママ)は、

 

「息子が小学校2年生のときに、スポ少でサッカーを始めました。2~3週間経ったあたりから、夜になると膝が痛いと言い出して。慣れない練習で、普段使わない箇所を使ったから?と思ったのですが、次の日学校でも痛みが出てきて保健室に行き、学校から念のため受診をすすめられました」

 

と振り返ります。

 

「レントゲンや触診では異常がなかったのですが、スポーツを始めたばかりということもあり、今後、足を引きずって歩いたり、押さえると痛みがあったり、ジャンプして着地した時に痛みが走るなどの場合は再受診して下さいと言われました。子どもは骨の端部分が柔らかいため、もし損傷したまま放置しておくと将来にも影響するからと…」

 

しかし、その後は痛みが出ることはなく「やっぱり成長痛だったのか、今となってははっきり分かりません」ということ。

 

子どもの骨や筋肉は発達の途中であり、日中にスポーツで筋肉を酷使すると、夜になって疲労から痛みやだるさを感じることもあり、これも成長痛の一因と考えられています。

おわりに

お子さんの激しい足の痛みを心配して受診したものの、「成長痛ですね」といわれて何もせずに帰ってきた…という人もいるかと思います。

 

ただ、骨や関節に異常がなくても、子どもが足を痛がっている最中は、本当に泣くほどの痛みを感じているはず。

 

そのことをママやパパが分かってくれているだけで、子どもはかなり安心できるのではないでしょうか。

 

※なお記事内では、医療機関等が公開している情報に基づき一般的な症状について解説していますが、医師の診断に代わるものではありませんので、痛みがあるときはまず医療機関で診断を受けることをおすすめします。

 

文/高谷みえこ

参考/独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター「成長痛ってどんな痛み?」 https://shikoku-mc.hosp.go.jp/news/ohisama_basics_c_vol12.htm

l公益社団法人 日本整形外科学会「オスグッド病」https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osgood_schlatter.html