5月ごろから特に強くなるといわれる紫外線は、なんと肌老化の原因の80%にもなるそう。日頃からの対策が必要ですが、子どもの世話や家事に追われて、ケアがおろそかになっている人も多いのでは。そもそも紫外線を甘く見ている人もいるかもしれません。

 

今回は、紫外線の怖さと私たちに必要不可欠な紫外線対策を解説します。十分理解して、毎日のケアを習慣づけることが大切です。

 

話を伺ったのは… ウォブクリニック中目黒 総院長 皮膚科医・美容皮膚科医

髙瀬 聡子Akiko Takase先生
日本美容皮膚科学会・日本皮膚科学会正会員。英国医学会(BSEM)会員。ルボア認定メディカルフィトテラピスト資格取得。東京慈恵会医科大学を卒業後、同大学付属病院で皮膚科勤務を経て、2007年美容皮膚科クリニック「ウォブクリニック中目黒」を開院。シミ・肝斑治療をはじめ、育毛治療、ヒアルロン酸、ボトックス注射・メソセラピー・レーザー治療・ケミカルピーリングなど、メスを使わずに女性の美しさを引き出す、安全かつ効果的なアンチエイジング治療を提供。その丁寧で的確なカウンセリングには定評があり、美容のプロやモデル、女優の顧客も多い。

 

肌の老化の8割は紫外線!対策はいつから?目からも日焼けする?

「紫外線は、活性酸素の発生を促し、そのことによって炎症が起きます。さまざまな組織が破壊され、シミやシワといった老化が促進されます。最終的にはDNAが損傷し、皮膚がんのリスクも」と警鐘を鳴らすのは、自身でも化粧品ブランドを手がける、ウォブクリニック中目黒の髙瀬聡子先生。

 

紫外線にはおもに、以下の2種類があります。

  • UVA…波長が長く、シワなどに影響を与える。これの防止効果を表す数値がPA。
  • UVB赤い火傷状態を引き起こす。これの防止効果を表す数値がSPF。
UVケアの必要性については、かなり浸透していると思いますが、まだ「冬は塗らなくてもいい」「夏だけ気をつけている」という人もいるのではないでしょうか?実は、肌の奥に透過して害を与えると言われるUVAは冬でも降り注いでいることがわかっています。

 

「日焼け止めは基本的に一年中、使用するのが好ましいです。特に5月以降は紫外線がさらに強くなる分、SPFPAともに高いものを使うほうがよいでしょう。また、目からも日焼けをするので、サングラスや、長袖、日傘など、物理的なブロックも効果的です」

 

本来、シミの元となるメラニンという色素は、生成されてもスムーズに排出されます。ですが、30代以降になると代謝が落ち、排出されずに残ってしまいます。これがシミの原因に。日焼け止めを塗ることは大前提として、多角的に紫外線を防ぐことが、美肌の近道だということを忘れないようにしたいものです。  

 

紫外線は窓からも!「家の中だから…」その油断が将来のシミを生む

「自宅で過ごす時間が多い今、そんなに紫外線を意識しなくてもいいのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。

 

「紫外線UVAは、室内にいてもガラスを透過して入ってきます。今あるシミに紫外線が当れば、そのシミはさらに濃くなりますし、無防備な状態で紫外線を浴びると、新しいシミが4秒後から作られはじめます」と髙瀬先生。

 

4秒後にシミが生成されはじめるなんて恐ろしい事実!家にいるからといって油断は禁物です。

 

「紫外線は肌の柔軟性も失わせ、乾燥を促進します。将来、シミやシワが目立つエイジング肌になりたくないのであれば、毎日のUVケアは欠かせません。日焼け止めを塗るまでがスキンケアと考えてください。毎日の紫外線が蓄積して、未来の肌を作るんですよ」(髙瀬先生)

 

ちょっと洗濯を干すだけだから、ちょっとゴミを出すだけだからそのちょっとの油断が、将来のシミにつながるのです。家にいるからといって、紫外線対策せずにいるのはNG。先生のアドバイスにもありますが、スキンケアをしたらそのあとすぐに日焼け止めを使えるように、スキンケアグッズと日焼け止めはセットで置いておいておきましょう。

 

ちなみに先生の話によると、妊娠中はホルモンの作用で紫外線が当たるとよりシミが濃くなると考えられるので、妊婦さんは特に注意してくださいね。

 

 

紫外線対策グッズこそ、使い心地を大切に選ぼう

では、どういった日焼け止めを選べばいいのか、高瀬先生に改めて伺いました。

 

「日焼け止めは、毎日使うのが鉄則。つまり、使い心地や香りなど、自分が使いやすいものを選ぶことが大切です。肌の敏感な人は、紫外線吸収剤不使用のものがおすすめ。ノンケミカルでもテクスチャーのよいものが増えてきているので、そういったケミカルフリーのタイプを選びましょう」

 

▶︎ここで解説!日焼け止めには以下の2種類の成分があります。
  • 紫外線散乱剤…文字のごとく、紫外線を散乱させて皮膚をガードするもの。肌に優しいものの、白浮きしやすく、紫外線防止効果がやや弱い。
  • 紫外線吸収剤…紫外線を吸収してエネルギーに変換して皮膚へ浸透させるのを防ぐもの。白浮きしにくく、紫外線防止効果が高いものの、肌の負担になりやすい。

最近の研究では、UVAUVBのほかに地上に届く、近赤外線からの害が報告されています。また、スマホやパソコンなどのブルーライトは、目からも入りますし、肌への影響も少しずつ明らかにされています。

 

こういった最新の研究を搭載した新製品も数多く発売されているので、新作もチェックしておくといいかもしれませんね。紫外線散乱剤と吸収剤のメリット、デメリットは確かにありますが、近年の研究と最新技術により、デメリットはかなり克服されたものが多く発売されているので、それも合わせて選んでみてください。

 

 紫外線対策の効果が高い日焼け止めも、こまめに塗らないと意味がない

そして、大切なのが日焼け止めの使い方です。たとえば「SPF50、PA++++と最高値のものを使っていても効果が感じられない…」という場合は、使い方に問題がある可能性があります。SPF値は、実際に皮膚に塗って計測して計算されるのですが、そもそも一般の人は塗る量が不足している、と髙瀬先生は指摘。

 

「皆さんが普段使用している量はこの実験値の値の4分の1くらいだと言われています。それに加えて、SPFはあくまでも目安なので、こまめに塗り直すことが重要。2、3時間おきに塗り直してください。ファンデーションや仕上げのパウダーなども、UV機能のあるものを重ねると、より効果的です。最近ではスプレータイプや塗り直しに便利なタイプもあるので、朝塗っただけで満足せず、こまめな塗り直しを心がけましょう」

 

SPFPA値はもちろんですが、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤か、なども意識をして確認し、さらに自分がつけていて「心地いいと感じるもの」「毎日使っていて負担にならないもの」「仕上がりが満足できるもの」を基準に選んでみてください。

 

紫外線でダメージを受けるのは顔だけじゃない!

また、忘れがちなのが、髪の毛へのダメージ。

 

「人体に影響はないものの、過剰に紫外線を浴びることで、表面のキューティクルが損傷し、乾燥してカラーリングが変色することはあります。また、頭皮は皮膚の延長なので、肌と同様、紫外線の影響を受けます。日焼けにより、乾燥が進んでバリア機能が低下すると、赤みやかゆみといったトラブルにもなりますので、物理的に日傘や帽子などで紫外線をブロックしてください」

 

頭皮は皮膚の延長…これはいつも意識しておきたいこと。先生の言うとおり、物理的にガードするほか、最近では、UVケア機能のあるヘアスプレーなども発売されているので、利用してみるのもひとつの手です。

 

うっかり日焼けはすぐ冷却!鎮静してからたっぷり保湿を

もしケアが不十分な状態で、うっかり日に当たり日焼けしてしまったときには、すぐに肌を冷やして火傷状態を鎮静させてください。炎症がおさまっていない時点で、保湿をするとしみたりする可能性があるので要注意です。

 

炎症がおさまってから、しっかり化粧水やジェルなどでたっぷりと保湿してください。保湿して肌が落ち着いたな、と思ったら美白美容液を投入しましょう。早め早めの対策が、未来のシミを防ぐコツです。今日から、日焼け対策をしっかり始めましょう!

 

 

 取材・文/久保直子