新型コロナウイルス感染拡大によって社会全体が大きな経済的打撃を受けるなか、事故などで親を亡くしたり、親の病気や貧困、虐待などの事情で親と一緒に暮らせない子どもたちも今、困った事態に直面しています。

 

子どもを持つ親として、私たちに今できることは何か考えてみました。

 

児童養護施設の子どもたちはどう過ごしている?

何らかの事情で親元や親戚などの家で暮らせない子どもたちの受け入れ先として、「児童養護施設」があります。

 

受け入れ年齢は基本的には1歳~18歳です。1歳までの子は「乳児院」に入ることも多く、また18歳を過ぎても必要に応じて20歳まで入所できる場合もあります。

 

全国で約3万人の児童養護施設利用者のうち小学生は約3分の1を占めています。

 

施設ではできるだけ家庭に近い環境で暮らせるように配慮されていま。しかし、スペースの関係などから、小学生までは多くの場合4人程度が1部屋で寝泊りすることが多く、休校中でも「密」を避けられないことも考えられます。

 

また、子どものストレスや運動不足解消のために広い場所で身体を動かして遊ばせたいものの、人数も多く、一緒に生活しているとはいえ「預かっている」立場のため、一般家庭のように保護者の判断でちょっと公園まで出かける…ということは難しく、施設内にとどまらざるを得ない子どもたちも多いそう。

 

成長した子たちにも大きな影響が

児童養護施設に在籍し、高校などに進学する子の割合は97.2%と近年100%に近づいていますが、大学や短大・専門学校への進学率になると、全体の76.9%に対し22.6%と、ぐっと少なくなります。

 

また進学しても、奨学金を借りたものの額が不十分だったり、友人と遊ぶお金はおろか生活費や将来に向けたスキルアップのお金も足りず、長時間アルバイトをしなければいけない子がほとんどです。

 

そこへ新型コロナウイルス流行のためにアルバイト先が休業になり、「学費が払えない」「生活できない」と、学校を辞めなければいけないのかと不安になっている学生も急増しています。

 

卒業して就職しても、不況で職を失い、家賃が払えない・奨学金の返済ができない…というときに頼る実家や親戚がいないため、長期に渡って経済的基盤が不安定な状況予想されます。

 

今、大人たちにできること

こういった子どもたちを取りまく環境も過去に比べて少しずつ変化し、大人数から、少人数のより家庭的な環境の施設や、一般家庭の「里親」のもとで育てられるような形に法改正が進み、少しずつ移行してきています。

 

前述した大学進学率(11.2%)も、里親のもとで育った子は23.3%と倍近くなることが報告されています。

 

里親になるには、保育や教育の資格などは必要なく一定の研修を受ければ可能。金銭的にも毎月十数万円の養育費・生活費・医療費・教育費が支給されます。

 

また夏休みや年末年始に数日~1週間だけ子どもを受け入れる「季節・週末里親」制度もあります。

 

とはいえ、いきなり里親になるというのはハードルが高いですし、2020年現在では感染拡大防止の観点からも受け入れは難しいでしょう。

 

今すぐにできる支援としては、寄付や募金もあります。

 

食品やランドセルなど物品の寄付に関しては、衛生上受け取れなかったり、子どもたちが好むものでなかったりする可能性がありますので、できるだけお金や商品券などが望ましいとされています。

 

2019年には、千葉市で「サンタクロース大作戦」という事業が行われ、事前に県内施設の子どもたちが通販サイトに登録した「欲しいものリスト」を見た支援者がクリスマスプレゼントとして購入するという取り組みもありました。

 

千葉市:支援が必要な子どもたちへの「サンタクロース大作戦」

 

また、交通事故・災害・病死・自死などで親を失った子どもへ奨学金やケアハウスなどの支援をしている「あしなが育英会」では、10億円の緊急援助を開始。

 

しかし、コロナウイルス感染拡大防止のために例年実施していた街頭募金が中止になり、資金調達は厳しくなっているそうです。

 

この状況のなかでも、会長による以下のようなメッセージが発信され、SNSでも「ありがとう!」「自分も子どもたちを応援します!」と大きな反響を呼びました。

 

「私はどんな事があっても、今進学に困っている遺児たちを諦めさせるようなことなく、頑張っていく。ちゃんと行かせる自信があるので安心して、勉強なりお母さんの手伝いなり、やって下さい。私は長年の経験で必ずきみたちを守るから」

 

筆者もこれを見て、同じ子どもを持つ親として力になりたいと思い、少しですがインターネットを通じて寄付しました。

 

勤め先が休業になったり勤務時間が減ったりして減収になり、今すぐ寄付する余裕はない人も多いかもしれません。

 

そんな時は、賛同できる内容であれば、SNSで拡散するだけでも支援になるのではないでしょうか。

 

おわりに

2020年現在、対面でできる活動が難しく、子どもたちのためにできることも限られている状態です。

 

しかし、やがて経済が動き出したあとも不況のダメージは長く続くことが予想されます。

 

この先もすべての子どもたちが経済的な理由で苦しむことのないよう、社会全体で支えていく仕組みがより進むことを願います。

 

そして、子育て中の私たち自身も、いつ事故や災害などで命を落とすかは誰にも分かりません。万が一の時に残された子どもたちのためにも、どのような支援があるのか、情報を把握しておきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/全国児童養護施設協議会「もっと、もっと知ってほしい児童養護施設」 http://www.zenyokyo.gr.jp/pdf/pamphlet_2019.pdf

厚生労働省「第14回 新たな社会的養育の在り方に関する検討会/児童養護施設等について」https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000166119.pdf

厚生労働省「継続的な自立支援のシステムの構築/中学校卒業後及び高等学校等卒業後の進路の状況」 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000102428_2.pdf

厚生労働省「里親広報2019リーフレット」 https://www.mhlw.go.jp/content/000553513.pdf

あしなが育英会「 ご支援について」 https://www.ashinaga.org/support/once/