口には「食べる」「話す」「呼吸」の3つの機能があり、これらを総称し「口腔機能」と呼びます。こうした口腔機能は哺乳・離乳の時期から始まり、段階的に正しい経験を積むことで発達していくもの。将来的に、体の健康ときれいな歯並びにつながります。子どものために気をつけてあげたい「口腔機能発達不全症」について解説します。

「口腔機能発達不全症」とは

iStock/TAGSTOCK1

 

「口腔機能発達不全症」は、咀嚼(そしゃく/噛むこと)や嚥下(えんげ/飲み込むこと)がうまくできなかったり、発声の異常があったり、口呼吸などが認められる症状です。

 

15歳未満で「咀嚼機能・嚥下機能・食行動・構音機能・栄養(体格)・その他」の項目のうち、「咀嚼機能を含む2項目以上」に異常が見られると、口腔機能発達不全症と診断されます※1)

 

以下のような様子が見られたら、注意が必要です。

 

  • 食べ物を左右どちらかに偏って噛む
  • 常に口をぽかんと開けている
  • いびきをかくことが多い
  • 食事の時間が長すぎたり、短すぎたりする
  • よく噛まずに飲み物で流し込んでいる

 

「口腔機能発達不全症」の原因

iStock/kohei_hara

「口腔機能発達不全症」の原因には、大きく次の3つがあると言われており、これが複雑にからみ合っています。

1.「乳児嚥下」の残存

「乳児嚥下」が残っていると、唇が開いたまま、舌が前に出た状態で飲み込みをしてしまいます。すると、歯並びがガタガタになってしまったり、出っ歯になり易くなります。

2.口呼吸

出っ歯になり易い、免疫の低下により風邪をひきやすくなる等健康への影響があります。

3.低位舌

舌が低い位置になり気道が狭くなり、睡眠時無呼吸になる可能性が上がります。

 

特に02歳の哺乳期・離乳食期には、正しい哺乳・口腔機能の発達に、合わせた食事を行うことが非常に重要になっていきます。

 

乳幼児期に注意すべき「予防のポイント」

iStock/Milatas

母乳は、栄養素や免疫物質が多く含まれているという点だけでなく、実は口腔機能の発達に非常に良い影響を与えます。 乳児を哺乳するとき、舌の中央部分で乳首を保持して加圧し、舌根部を上下運動させることにより、母乳を咽頭(いんとう)へ送ります。この運動で、顎の正しい成長と舌の正しい使い方を習得するのです。

 

哺乳瓶を倒しただけでミルクが出てくるような人工乳首を使用すると、赤ちゃんは常に出てくるミルクをせき止めるため、舌を前後にピストン運動しながら飲み込む形になってしまいます。 すると口腔機能が育成されず、舌突出癖や異常な嚥下といったクセがつき、将来的に不正咬合を招く要因となってしまうことも。 とはいえ母乳が出なかったり、仕事をしながらの完全母乳は難しいことも多いですよね。

 

現在では人工乳首も様々な種類がありますから、できるだけ「母乳を飲むときと同じような口の使い方」になるものを選ぶようにしましょう。 また、授乳時は乳首を唇の先でくわえさせるだけではなく、上下の唇をラッパ状にしっかり開けて、口全体で乳首を覆い深くくわえるようにしましょう。 授乳時の姿勢も大切です。赤ちゃんの頭が反らない様に、頭を支え、丸く抱きかかえるようにして授乳してください。

 

正常な口腔機能が「健康ときれいな歯並び」を作る

iStock/weareadventurers

離乳食につては、咀嚼機能の発達に合わせて、段階を踏んで与えることが非常に大切です。 歯の生える時期や口腔機能発達スピードはかなり個人差があります。同じ月齢の子が完了食に入っているからと焦ったりせず、子どもの口腔や全身の発育状態に合わせて、ステップアップしてくださいね。

 

乳幼時期の口腔機能の正常な発達は、結果的に健康な身体ときれいな歯並びを獲得することにもつながります。 正しい口腔機能を獲得する為のトレーニング等もありますので「うちの子は口腔機能発達不全症かもしれない」と感じたら、歯科医院を受診し相談してみてくださいね。

 

文:園延妙子

(※1)口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方 平成30年3月日本歯科医学会