2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ予断を許さない状況で、国は「不要不急の外出を控えて」と国民に要請しています。

 

そのなかで、ハイリスクとされる高齢者や基礎疾患を持つ人と比べると報道される度合いは低いですが、同じくらい大きな恐怖と緊張感の中で過ごしているのがプレママ(妊婦さん)たちです。

 

いま彼女たちがどのような気持ちで過ごしているのか、何を望んでいるのか…実際に話を聞いてみました。

 

赤ちゃんのために妊婦さんが耐えていること

東京都在住のSさん(34歳)は、5月に第一子を出産予定のプレママです。

 

3月いっぱいで産休に入る予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で、1か月早めて2月末から産休をとることで職場と合意、現在は自宅で過ごしています。

 

「3年前に出産した姉から、出産後はしばらくゆっくりできないから、今のうちに夫婦で食事したり、友だちと会ったりしておくといいよとアドバイスをもらっていたので楽しみにしていたのですが、すべてキャンセルしてひたすら家にこもっている状態です」

 

現在妊娠9か月、昨年末で会社を退職した神奈川在住のFさん(30歳)は、

 

「検診でなかなか赤ちゃんの性別が分からなかったので、判明したら可愛いベビーグッズを買い揃えようと楽しみにしていたのですが、すべて通販に切り替えました」

 

とのこと。

 

退職後、安産のためにと産院でマタニティヨガのクラスも予約していましたがそれもキャンセルし、出産が迫った現在は、食品や日用品の買い物もできるだけ夫が担当しているといいます。

 

「いまは世界中が大変なときなので…でも、やはり妊娠中は特に不安が大きいです。立ち合い出産どころか、夫は付き添いですら病院に立ち入れない可能性も出てきました」

 

治療薬やワクチンができても…

2020年3月時点での厚生労働省のサイトによれば、新型コロナウイルスによる妊婦さんの死亡例はなく、妊娠中の母子感染の可能性も中国でわずかな人数が報告されるにとどまっています。

 

「だからといって、妊婦さんは感染しにくいというわけでは決してないと思います」

 

と言うのは、現在妊娠6か月のKさん(福岡県・32歳)。

 

「もともと妊娠中は飲めない治療薬が多く、プレママはさまざまな病気に感染しないよう、細心の注意を払っているはず。その結果ではないでしょうか」

 

新型コロナウイルスについては、ワクチンはまだ開発中で存在しません。

 

治療薬は、インフルエンザ向けに開発された「アビガン」に一定の効果があるとしてまもなく医療現場で使用されることが報じられていますが、服用にあたっての同意書には次のような記載があり、妊娠中は飲むことができません。

・動物実験において催奇形性などが認められており、妊娠中に服用することで胎児奇形や流産・死産を起こす可能性がありますので、妊娠している方、妊娠している可能性のある方は服用できません。
・妊娠する可能性のある女性患者の場合には服用前に妊娠検査にて陰性を示すことが必要です。
・このお薬は精液中へ移行することがわかっていますので、男女ともに避妊が必要です。特に、男性患者の場合には、胎児への影響が考えられるため、妊婦との性交渉はできません。
・このお薬は母乳中へも移行しますので、授乳中の方は、授乳を中止してください。

人手不足などの理由から妊娠中の女性が通勤で働いている職場もありますが、薬が飲めないというリスクも認識したうえで、早急にリモートワークなどを検討するべきではないでしょうか。

 

「不要不急」の意味を再確認しよう

プレママ・妊婦さんたちに、いま一番いいたいことは?と聞いてみると、やはり答えは共通して

 

「不要不急の外出は本当に控えてほしいです」

 

ということでした。

 

「感染者が爆発的に増えることを防げば、万が一妊婦が病気にかかった時に治療が受けられなかったり、病院でコロナウイルスに感染するリスクを最小限にとどめることができるかもしれません」(Fさん)

 

「自粛が長引く中で遊びに行きたい気持ちはよく分かります。私自身そうですし…息が詰まりますよね。でも、お腹の中の子にもしものことがあったらと思って、近所の散歩すら自粛しています」(Sさん)

 

海外では、スーパーへ行くにも外出許可証が必要だったり、無断で出歩いていると逮捕されたりなど、法で不要不急の外出を規制している国も多くありますが、日本では現在、法的に取り締まることはできず、自粛の呼びかけ・要請にとどまっています。

 

「不要不急」のめやすは、一般的には「食料品の買い出し」「通院」など、出向かないと生活や健康に支障が出るものを指すとされています。

 

仕事ですら試行錯誤しながらリモートワークに切り替える企業が増えるなか、妻が妊娠中の夫が「飲み会」に行く…などは厳に控えてもらいたいですね。

 

おわりに

インタビューを通じ、妊婦さんたちが非常に大きなリスクと闘いながら、お腹の赤ちゃんを必死で守っていることが伝わってきました。

 

もちろん乳幼児を育てている人、お年寄りや基礎疾患のある人の家族…それぞれ心配は尽きません。

 

筆者もすぐ隣にリスクを抱えた人が暮らしているかもしれないことを忘れず、対策をしっかりとっていきたいと思います。

 

文/高谷みえこ

参考:厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針(令和2年3月28日付)」

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000614803.pdf

「妊娠中に新型コロナウイルスに感染した場合、どのような症状や胎児への影響がありますか?」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q36

中国政府 臨床試験でアビガンに治療効果 治療薬として使用へ | NHKニュース

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200317/amp/k10012336431000.html

「アビガンⓇ錠服用に関する同意書」

https://www.pmda.go.jp/RMP/www/400022/29a587a6-7cdb-4f19-913b-e2cbf9ae54e0/400022_625004XF1022_01_002RMPm.pdf