何かとマナーが難しいビジネスメール。一般的に結びの言葉として「何卒よろしくお願い申し上げます」というフレーズが使用されることが多いですが、結びの言葉に体調を気遣うような文言を入れたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
友人相手であれば「体に気をつけて!」と言えますが、ビジネスメールで使うにはカジュアルすぎます。 上司や取引先の方などの体調を気づかうときには、どのような言葉をかけるのが適切なのでしょうか?
目次
仕事のメールで「おからだに気をつけて」はNG?
何気なく使っている言葉には、実は目上の人に向けて使うべきではないものも多くあります。知らずに使った言葉で、相手を不快にさせてしまってはメールの心意も伝わらないかもしれません。
厳密にいうと「おからだに気をつけて」の後に“どうしてほしいのか”という部分がないため、敬語として目上の人へ使うのは注意が必要です。
「~て」で終わってしまうと、ともすれば「やって」「待って」「取って」のような命令口調にとらえられてしまう心配もあります。
とくにメールの場合、言葉で発したような感情やニュアンスが伝わりにくいので、より丁寧に書くほうが無難といえるでしょう。
もちろん「おからだに気をつけてください」という表現も日本語として正しい表現になりますが、「おからだにお気をつけください」のほうがより丁寧な表現だと受け取ってもらえます。
「お体」なのか「お身体」なのか
実はどちらを使っても大丈夫なこの二つの漢字表現なのですが、厳密にいうと少しニュアンスが違うようです。
「体」とは肉体のみを表現しますが、「身体」の場合は心や精神的な部分も含めることになります。
つまり、「お体にお気をつけください」は「風邪や病気など、肉体の不調に気をつけてください」と解釈することができ、「お身体にお気をつけください」の場合は「体や心の不調に気をつけてください」と解釈することができるのです。
そのため、体のみを心配するよりも丁寧だととらえられることも。 とくに目上の人に向けて使用する場合には、「お身体」を使用してみてはいかがでしょうか?
目上の人の体調を気づかう結びの言葉の例
よく使われる結びの言葉として「お身体にお気をつけください」というフレーズをご紹介しましたが、他のフレーズについても見ていきましょう。
「ご自愛ください」
文末の締めとして、季節を問わず使える言葉です。ただし、一点注意しておかなければならないことが。
“自愛”には「自分のからだを大切にする」という意味があります。 “自分のからだ”が意味に含まれているので「お身体ご自愛ください」という表現はNGとなります。
また、この言葉は「体調を崩さないように気をつけて」といった意味合いもあるので、すでに体調を崩している人に対して使うのは失礼になります。
「お大事になさってください」
これは相手の方がすでに体調を崩しているとわかっているときに、回復を願って使用されるフレーズです。
“お大事に”には「病気が悪化しませんように」や「からだを大切にしてください」といった相手のからだをいたわる意味があるので、同僚や後輩など、普段から親しく相手であれば「お大事に」だけで使うこともできます。
しかし、目上の人に対して使う場合には文章を終わらせる形の「お大事になさってください」のほうが丁寧。
同じような表現ですが「お大事にしてください」はNGとなります。
“してください”は要求や命令的な意味合いが含まれてくるため、目上の人に対しては失礼な言い回しとなるようです。
「お身体をお労りください」
「お労りください」は、相手を思いやっているという心情がより伝わる言葉です。
“労り”には「心をもって気にかける」いう意味合いがあるため、強く体調を気づかっている時に使用するといいでしょう。
メールで使える体調を気遣う結びの言葉
一言で「体調を気遣う言葉」と言っても、シチュエーションによって使えるフレーズは変わってきます。
シチュエーション別に、具体的な結びの言葉を見ていきたいと思います。
相手が病気で入院中や療養中の場合
「一日も早いご回復をお祈りしております」
「一日も早いご復帰をお待ちしております」
こうした表現は、元気になってまた出社することを待っている、といったニュアンスが伝わりやすい表現です。 また、相手のことを日頃から頼りにしているといった思いも伝わりそうですね。
いらない心配をさせず、ゆっくり休んでもらいたいという思いを伝えたい場合は、次のような表現がよいでしょう。
「どうぞ心配なさらず、安心してご静養ください」
「この機会に、どうぞ十分に養生なさってください」
相手の方の普段の働きぶりを理解しているといったニュアンスが伝わる表現は、心までいたわってもらえたようで喜ばれるかもしれませんね。
相手からの返信を求めない場合
「ご返信はお気遣いないようお願いいたします。」
療養中とはいえ、仕事に関わる相手からのメールとなると「返信しなくては」と思ってしまう人も少なくありません。
返信を急がないメールの場合は、文末にこの表現を書いておくと相手に不要なプレッシャーをかけずに済みます。
季節の変わり目にメールをする場合
「厳しい寒さが続きますが、くれぐれもご自愛ください」
「風邪が流行っているようです。体調などお気をつけください」
「寒さもだんだんと厳しくなってきました。どうぞお身体をお労りください」
「季節の変わり目、どうぞ体調にお気をつけください」
実際の季節感や流行などの情報を織り込むことで、形式ばった雰囲気が和らぎます。 それによって、義務的に結びの言葉を書いているわけではなく、本当に相手の体を気遣っているということが伝わりやすくなります。
メールでもスマートに相手の体調を気遣おう
ビジネスメールにおける挨拶や結びの言葉は、定型文的に用いられることが多いもの。
だからこそ、相手が体調を崩しているようなイレギュラーな場面で、その状況にふさわしい結びの言葉を使えるとスマートです。
メールの相手との関係性などによっても、体調を気遣う結びの言葉は変わってきます。 相手の状況を踏まえ、ぴったりのフレーズを選べるといいですね。
文/ 佐藤仁美