今や日本は、産後に職場復帰する女性が5割を突破し、共働きがあたりまえの時代。 国や企業が育休制度や時短制度を充実させるなど、さまざまな試みが始まっていますが それでも、働くママたちの悩みや問題はつきません。 今後の社会、企業、そして私たち自身はどう向き合っていけばいいのか ―― 。 育児や女性の働き方に関することのプロ、イキイキと働く先輩ワーママ、ずらり12人のみなさんにCHANTO読者が今、すべきこと、考えるべきことを語っていただきました!(CHANTO2017年7月号より)
[ワーママ×教育]
子どもの教育問題に関心は高いものの、平日の日中に自由に時間を使えない働くママたち。 子どもが成長するたびに感じる、十分サポートができていないのでは?という 不安やあせりをどうすれば解決できるのか。今、できること、やるべきことを考えました。
議題:習い事やお受験、英語教育...限られた時間で子どもの教育に どう取り組めばよい ?
保育園と幼稚園で、学力に差は出てしまうの?
「教育がベースである幼稚園にくらべ、生活の場としての保育園だと、小学校入学後の勉強面で遅れが出る」などの言葉に、とまどう保育園ママは少なくありません。「わが家は子どもを保育園に通わせていましたが、 人とも文字や数字もよく覚えてきたし、特に学力で遅 れをとるようなことはなかったですよ」と小島慶子さん。高濱正伸さんも「昔と違い、今では保育園 でも学習時間を設けるのはあたりまえ。それほど心配する必要はありません」と話します。2人の子どもを保育園と幼稚園の両方に通わせた経験のある治部れんげさんは「保育園だから教育をしていない、 というのは若干、偏った刷りこみがあるように感じます。ただ、幼稚園 でも保育園でも、私立の場合、宗教的な行事やユニークな教育法をとり入れるなど、特色が。教育方針にこだわりのある人は、公立と私立の両方をチェックして」とアドバイス。また、学習面より、幼児期は豊かな実体験から人間力を伸ばす時期、というのが共通した意見です。 「保育園では異年齢で多様な子どもたちがぶつかりあう頻度が高い。それらは将来、社会の荒波を生き抜く免疫を作るための重要な経験です。現代においては、強く、たくましく育つことが将来 "メシが食える大人"になる近道だと思いますよ」と高濱さん。小島さんも「似たような環境で育った子どもでまわりを固めても、実社会はそうはいかない。親も子も、保育園でさまざまな家庭環境の人たちとふれあうことで、社会の多様性を知るきっかけになり、人の経験値が上がった気がします」と話します。一方で、保育園育ちだと、あまり厳しい規律がなく、自由に過ごす時間が長いので、集団行動や授業に集中することができない、いわゆる"小プロブレム"に直面しやすいのでは?という心配も。 長男が保育園だった治部さんは「幼稚園や保育園でどれだけ規律正しく教育されてきたかより、先生の目がどれだけ行き届いているかや、個人差によるものが大きいのでは? 事前に小学校を見学してようすを見ておくのもいいですね」との意見。保育園に頼 りすぎず、家庭の生活習慣を見直すことも重要です。
習い事や塾に通わせる時間がない…ワーママはお受験に不利?
平日の送迎が難しいワーママが 子どもに習い事をさせる場合、土日しか選択肢がないため、子どもの教育機会を減らしているのではないかと悩む人も。「プロをめざすのでなければ、習い事は週末だけでも十分。勉強以外に、スポーツ、 芸術、野外体験など、バランスよく組みこんで」と高濱さん。「送り迎えや経済的な問題があるならば、 わが家の現状をきちんと子どもに伝え、できる範囲のベストを親子で考えてみては? 興味のあることに挑戦するのはもちろんですが、 そのためにいかに工夫するかも、 勉強のひとつだと思いますよ」と 小島さん。どうしても平日に通わせたいなら「習い事の日を在宅勤 務にできないか上司に交渉したり、 夫と話し合って協力態勢を整えたり、働き方の見直しと"ワンオペ"前提の育児の解消が先決です」(治 部さん)。ただし、複数の習い事や受験勉 強に子どもが負担を感じるケースも多く、親と子がお互いにストレスにならないバランスが必要。 受験に関しても、「ブランド品を買うのと同じような感覚で、偏差値の高い学校へ子どもを入学させるのは間違い。小・中学校の受験は親が主体で導くものなので、子どもの個性などをふまえ、夫婦でよく話し合うことが必要です。塾選びも、ウワサに流されず、実際に見てから判断して」と高濱さん。小島さんも「親は、子どもが最適な場所を見つけ、自分で進路を決められるよう、ヒントを与える存在であるべき。だから、受験するしないにかかわらず、人生にとって勉強は大切だということは、つねに意識して伝えています」と話します。「小学生になったら土日だけでも、 1日10分でいいので勉強を見る。図書館や博物館へ行ったり、 子どもがおもしろいと思う本を親 も読んでみたりする。教育をアウトソーシングする前に、親子でできることをしてみて」と、母でもある治部さんもアドバイス。 最近では、習い事の送迎サービスや学習指導も行う民間学童も増加傾向。月5万~〜10万円と高額だったり、人気の施設は「保活」並みの激しい入所競争もあったりするので、早めのチェックが必須です。
将来、英語で苦労させないために、今、何をすべき?
2020年からは小5で英語が正式教科に。「今や、日本で働いていても英語は当然に必要な要素。通信教育などできる範囲内でいいので、日常的に英語にふれる習慣をつくることが大事」と、今まさに自身も子どもの英語教育に向き合っている小島さん。 グローバル化が急速に進むなか、 将来の職業的、社会的な環境を考 え、幼少期の英語教育に、親の関心は高まります。一方、「英語のテストでよい点数が取れても、海外の人と議論するのは苦手、というようなことが日本の英語教育の大きな問題」と指摘するのは高濱さん。「言語だけを習得しても、 話せる中身がないと会話は成立しない。まずは日本語でちゃんと物事を考えられるようにするのが優先だと思います」と、治部さんも過熱しすぎる早期英語教育には警鐘を鳴らします。「スポーツや料理などを通して、楽しみながら会話に英語をとり入れるなどすると、自然に英語力がアップしますよ。CNNニュースを見ながら、親子で話し合うのもいいアイデアです」(高濱さん)。 また、小学生になるとサマーキャンプやプチ親子留学などに参加する家庭もふえているのだとか。「リスニング力をつけるなら、英語ばかりの環境に飛びこんでみるのは効果的」と治部さん。「発音がなまっていたり、文法があいまいだったりしても、英語を話すことができれば世界中の人とコミュニケーションがとれることを実感してほしい。まずは、親がどんどん"ダサい"英語でも話してみましょう! とにかくしゃべって、身ぶり手ぶりでも通 じることを子どもに見せてあげ て」(小島さん)。親子の会話を通して積極的にコミュニケーション力を養うことが、英語力アップの下地になるようです。
会議に参加してくれたのは、この3名
「将来、めざすべきは単に仕事ができるよりメシが食えて、モテる人!」
学習塾「花まる学習会」代表
高濱正伸さん
子どもの「生き抜く力」を育てることを重視した教育法が各メディアで反響を呼び話題に。著書に『働くお母さんの子どもを伸ばす育て方』(実務教育出版)など。
「たかが受験や習い事で、子どもの人生かわりませんから!」
タレント、エッセイスト
小島慶子さん
元TBSアナウンサー。2014年に家族でオーストラリアに移住し、日本と行き来しながら、 各メディアで活躍中。中 3と小 6 の2児の母。 新著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。
「子どもの教育は、ママひとりでなく、夫婦のチームプロジェクトです!」
フリージャーナリスト
治部れんげさん
経済誌記者を経てフリージャーナリストとして活動中。小3と年長の2児の母。 著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)。 昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。
取材・文/吉岡名保恵