いまの日本は、少子化に伴い、希望さえすれば全員がどこかの大学に入れる「大学全入時代」ともいわれます。

 

2020年までの大学入試センター試験にかわって2021年からスタートする「大学入学共通テスト」では、予定されていた英語民間試験や国語・数学の記述式問題の導入があいついで見送られたというニュースを覚えている方も多いでしょう。

 

しかし、「じゃあ今までどおりでいいんだよね?」というわけではないんです。

 

英語の読み書きだけでなくヒアリングや会話を重視する傾向はますます強まっています。

 

「でも、うちの子保育園だし、大学入試なんてまだまだ…」というママ・パパもいるかもしれませんが、数年後には小学校で英語の授業が始まり、英語の能力が問われるようになります。

 

そこで今回は、現在までの情報を整理してわかりやすく紹介、ママやパパには何ができるのかを解説します。

「英語4技能」とは?

「英語4技能」とは次の4つの英語の技能をさします。

 

  1. 読む(Reading/リーディング)
  2. 書く(Writing/ライティング)
  3. 聞く(Listening/リスニング)
  4. 話す(Speaking/スピーキング)

 

英語に限らず、将来、仕事や海外生活で外国語を使うなら、上記4つのどれも本来できていなければなりませんよね。

 

しかし、過去には海外に拠点を持つ企業も今より少なく、日本企業は採用する人材や学生にそこまでの語学力を求めていませんでした。

 

また昭和から平成にかけては今よりも子どもの人数がずっと多かったため、大学入試では個別対応の求められるスピーキングテストなどは導入が難しく、読み書き重視のペーパーテスト中心の時代が長く続きました。

 

ところが近年になって急速にグローバル化が進み、若者たちが英語を話せなければ日本の企業や個人は国際社会で生き残れない…という危機感を抱いた国は、2000年頃から調査を開始。

 

「中学校・高校を卒業したら英語でコミュニケーションができる」 「大学を卒業したら英語で仕事ができる」

 

を目指した英語教育のカリキュラムを検討し始めたのです。

 

そして2013年には、

 

「東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年を目標に、高校卒業時に半分以上の生徒が英検2級から準1級程度の語学力を持つことを目指す」

 

と発表。小学校高学年からの英語の教科化や、大学入試で4技能の評価を取り入れることも決まりました。

小学生や幼児にも関係あるの?

現在、公立小学校では、2020年度に全面実施される『新学習指導要領』にもとづき、3~4年生で週に1コマ、年間35時間分の英語学習の必修化が決まっています。

 

さらに5~6年生では、週に2コマ、年間70時間分が教科化されます。

 

関連記事:小学校の英語 必修化と教科化の違いは!? いつから始まるの?

 

もちろん小学校3年生でいきなり中学校のような英語の授業をするわけではなく、まずは身近なモノを英語で言ってみたり、クラスメイトと英語で自己紹介をしたり…と、楽しみながら英語に親しみを持つのが目的です。

 

この流れを受けて小学校1~2年生の子どもたちもゲーム感覚で英語活動に参加する小学校や、英語を使った手遊びや絵本、おもちゃを取り入れる保育園・幼稚園もあります。

うちの子どうなる…将来への対策を知りたい!

では、家庭で親ができることは何かあるでしょうか。

最終決定はこれから。情報収集はしっかりと

徐々に改革が進んできた学校での英語教育ですが、2021年開始の大学入学共通テストで導入が予定されていた、英語民間試験結果「大学入試成績提供システム」はいったん導入が見送られました。

 

関連記事:大学入試の「英語民間試験見送り」はなぜ…今さら聞けない人へ解説します!

 

とはいえ、大学入試でリスニングやスピーキングといった英語の能力が重視されなくなったわけではなく、むしろ重要度はますます高まっているといえます。

 

国公立・私立を問わず、高校在学中に英検やTOEFLをはじめとした英語の民間資格を取得したり高得点を取ったりすれば、試験当日にリスニングテストが免除されたり、試験の点数として加算されたりする大学が増えています。

 

しかし注意すべきは、英語の民間試験・民間資格を今後どう大学入試に活用するのかはまだ完全に確定していないという点。

 

現在の文部科学省の発表では2024年からの導入が決まっているとのことですが、全員に英語の民間試験を義務付ける方式では、「家庭に経済的余裕がなく、何度も受験できない子や試験会場から遠い地方在住の子が不利になる」などの問題があり、いまも議論が続いています。

 

中学生以下の子どもを持つ親としては、今後の動向に十分気をつけておくことが必要ですね。

「英語って楽しい」と思える環境づくりを

子どもと英語の関係がうまくいくために最も大切なのは、早期教育や個別のテクニックを身につけさせることより、子ども自身が「英語って楽しい」と思えること。

 

時々見るアニメや動画・車で聴く音楽などを日本語吹き替え版から英語版に替えてみたり、お菓子のパッケージに書かれた英語を「なんて書いてあるんだろうね」と一緒に読んでみたり…日常生活のなかで、英語は楽しいものというイメージを持てるようにするのがおすすめです。

「自分の意見」を持った子に

さらに、日本人が英語圏の人々とのコミュニケーションでつまづく原因の1つが「自分の意見をはっきりと表現できない」という点です。

 

周囲の意見を読み取り、自己主張をおさえて上手に合わせることが日本では評価されやすく、自分の意見をはっきり言うと「空気が読めない」と批判されたりします。

 

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しかし、常に周囲の意見を読み合わせることに慣れてしまい、いざ外国人と話す段になって

 

「What do you think?(あなたはどう思う?)」

 

と聞かれたときに、

 

「I don't know.(わからない)」

 

と答えたり、毎回

 

「Me too.(私も同じ)」 「I think so, too.(私もそう思う)」

 

ばかりだと、幼い頃から自分の意見をはっきり述べるよう教育されてきた英語圏の相手からは、下手をすると一人前の人間として扱われなくなってしまうことさえあります。

 

実際の友だちとの会話で口に出すかどうかは別として、何かあったときや、ものごとを判断するときには、常に自分の頭で考えて意見を持っておく練習を小さい時からさせてあげられるといいですね。

おわりに

「2020年に多くの子どもたちが英語で外国人とコミュニケーションを取れる」という文部科学省の目標が完全に達成できたとは思えませんが、小学校をはじめとして、かなり英語に親しむ環境が広がってきたことは確か。

 

本来、英語4技能の習得はそれ自体が目的ではなく、読み書き・英会話はコミュニケーションをとるための道具の1つではないでしょうか。

 

親としては、そのことを忘れず、焦らずに子どもをサポートしていきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:文部科学省「英語が使える日本人育成のための行動計画」

文部科学省「生徒の英語力向上推進プラン」

学校法人駿河台学園「2019年度入試 英語外部試験利用入試を実施する主要私立大学一覧」