超高齢化社会が進みつつある現代の日本。 高齢者の希望と施設の調整をおこなう大切なケアマネージャーですが、実は、年々資格取得の受験者数が減っているんだとか。

 

なにか資格を取得しようと考えている人にとって、介護関係は見逃せない成長分野ですが、将来性も含めてしっかり仕事内容をチェックしておくことが大切です。 今回は、ケアマネージャーの資格取得を考えている人に向けて、役割や将来度についてご紹介したいと思います。

ケアマネージャーとは?

ケアマネージャーとは、正確には「介護支援指導員」という名称です。一般的には「ケアマネージャー」「ケアマネ」と呼ばれることが多く、みなさんもこちらの名称の方が馴染み深いかもしれません。

 

主な仕事内容は高齢者と施設やサービスとの調整で、高齢者や家族から希望を聞いて、施設や制度と交渉します。これを元に具体的なケアプランを作成し、高齢者の安心して生活できる生活を提案します。

 

利用者の体調の変化や生活の様子を見て、プランを変えていくといった大切な役割もあるので、ケアマネージャーは高齢者の心地よい施設生活を実現するためになくてはならない大切な存在です。

ケアマネージャーの資格を取ると年収はどうなる?

介護施設とって大切なケアマネージャーですが、仕事内容の幅が広く、給料と見合わないという多くの声もあります。

 

ケアマネージャーになるためには、「介護支援専門員実務研修試験」に合格する必要があります。この試験は、実務経験を5年以上積んでいないと受験することができません。つまり、これまで別業界で働いていた人がいきなり挑戦することが難しい資格なのです。

 

また、資格取得のハードルの高さもさることながら、勤務する施設によって仕事内容も変わり、生活保護の申請や配食サービスの手配など、利用者の生活に関するさまざまなことを担う必要があるようです。

 

しかし、厚生労働省が発表している「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、ケアマネージャーの平均年収は385万円。しかも、介護福祉士など介護に関する他の職種の平均年収と比較しても、平均年収が大幅に変わるとは言えません。

 

そのため、資格取得にかかる労力や仕事内容を考えると、簡単に資格が取れる他の介護職を選ぶ人も少なくないようです。

 

 

ケアマネージャー資格の取得方法

ケアマネージャーになるためには、「介護支援専門員実務研修試験」通称ケアマネ試験に受かる必要があります。 また、誰でも受けられるわけではなく、受験資格を得るためには施設での長い実務経験が必要です。現在は受験資格として、次の5つのうちのどれかを満たしていることが求められています。

 

1:国家資格等に基づく実務経験5年

介護や医療に関する国家資格を取得し、その資格の本来の業務に従事した経験が5年なくてはいけません。例えば介護福祉士の資格を持っていたとしても、別の業界で営業職などについていた場合は認められません。

 

2:生活相談員として5年以上の実務経験

 

3:支援相談員として5年以上の実務経験

 

4:相談支援専門員として5年以上の実務経験

 

5:主任相談支援員として5年以上の実務経験

 

1の国家資格というのは、看護師や作業療法士などの医療職や、栄養士、保健師、社会福祉士などの保険系や福祉系などの資格を指します。 前ページで介護業界以外からに挑戦は難しいと説明しましたが、医療や福祉系の国家資格を取得していて実務経験がある人であれば、介護業界での就労経験がなくてもケアマネ試験を受けることができます。

試験の合格率は10~20%前後

ケアマネージャー試験の合格率は例年10~20%と高くはありません。 厚生労働省が発表している「

第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について

」から2018年の数字をみてみると、49,332人が受験し、合格したのは4,990人。合格率は10.1%でした。

 

実務経験がマストの資格試験なので、介護福祉士など別の仕事をしながらの受験する人が多く、仕事と試験勉強の両立が難しいことも突破率の低さになっているとされています。

 

スクールや通信講座を利用する方法もありますが、独学での合格を目指すのなら、勉強時間をいかにして確保するかが鍵となるでしょう。 子育てをしながらケアマネージャーの資格取得を目指すのなら、パートナーの理解やお子さんの協力が必要となってきそうです。

 

ケアマネージャーの資格取る上で知りたい介護業界の現状

ケアマネージャーの資格について考える前に、まず日本の介護業界の現状を確認してみましょう。

 

2015年に団塊の世代が65歳以上となり前期高齢者となったため、高齢化が加速していることは周知の事実です。高齢者の割合が増え続け、それに伴い介護施設では慢性的な人手不足が続いています。

 

では、なぜ介護業界で働く人が増えないのでしょうか? 理由のひとつとしては「きつい、汚い、危険、暗い、臭い」の5Kであるといったマイナスイメージが強く、求人を出しても応募者が少ないことが挙げられます。 介護は人の命を直接的に預かる仕事で、体力的にも精神的にもラクな仕事ではありません。

 

もうひとつの理由は、成長分野であることから参入企業の数が多く、小規模の事業所は運営が難しいということです。 小規模の事業所の場合、大規模な事業所に比べて賃金が安いということがあります。仕事を選ぶうえで、給与額は非常に重要な条件のひとつです。そのため、介護に興味を持っていても、実際に介護の仕事を選ばないという人も少なくありません。

ケアマネージャーの資格取得は挑戦して損はない

ケアマネージャーの仕事はやりがいもあり、需要も高い仕事です。高齢者の数が増え続ける現代日本においては、将来性のある職のひとつだと言えるでしょう。 一方で、ケアマネージャーの資格取得までの道のりはけっして平坦なものではありません。一定期間以上の実務経験が求められ、合格率も高くはなく、資格取得まで時間がかかります。

 

そのハードルの高さに戸惑う人もいるとは思いますが、需要が減らない職種ではあるので、あせらずに時間をかけて資格を取得しても損することはありません。今現在介護業界で働いている人や、将来的に介護業界で働こうとしている人は、一つの選択肢としてケアマネージャーの資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。

 

文/佐藤仁美