日常的な長時間労働に対して疑問が投げかけられ、見直されつつある今日。
かつては、「たくさん残業している人ほど仕事ができる」というような認識を持っている人が少なくありませんでしたが、現在では効果的な効率化を図って生産性をあげられる人が「仕事のできる人」になっています。
仕事の後に子どもをお迎えにいったり、家事をする子育て世代にとっても、効率を上げるということは非常に重要なことではないでしょうか?
しかし、仕事の効率化を行うことにはメリットだけではなくデメリットもあるようです。
具体的に仕事の効率化とは?
仕事を効率的に行うというと“テキパキと進める”“手際がいい”“仕事が早く終わる”といったことが想像できるかもしれません。
ひとつひとつの作業を効率的に行うことは、職務全体のスピードアップにつながったり、ストレスの少ないスムーズなルーティーンを生み出したりします。
仕事の効率化については、しばしばトヨタ自動車の生産方式「ジャストインタイム」が好例として出されることがあります。
「ジャストインタイム」では、“ムリ・ムダ・ムラ”を改善することが重要とされています。具体的に3つを見てみると、以下のようになります。
- ムリ=仕事が働き手の許容を上回っている状況
- ムダ=必要のない仕事や生産を働き手に課している状況
- ムラ=繁盛期と閑散期など、時間や期間ごとで仕事の量に変化がある
自分の仕事に落とし込んでみると、あてはまる部分がある方も多いのではないでしょうか?
仕事の効率化とはこういった無駄を省いて、業務の生産性を上げていくことなのです。ちなみにトヨタ自動車では、これらを徹底的に見直すことによって、無駄のない生産工程を実現し、世界に「トヨタ方式」というモノつくりの概念を知らしめました。
仕事を効率化することによるメリット
仕事を効率化すると、さまざまなメリットが生まれます。 とくに大きなメリットは次の3つではないでしょうか?
仕事時間の短縮
仕事を効率化するメリットとして最初に上げられるものは、なんといっても仕事時間が短くなるというもの。
それまでただなんとなくダラダラと行なっていた作業を見直し、ムダを省くことで、作業をスピードアップさせることができます。その結果、残業などをせず、本来の勤務時間内に無理なく仕事ができるようになります。
仕事時間を短くすることができれば、家族との時間や自分の趣味のための時間を確保することもできます。
残業時間減によるコスト削減
働く側としては、残業時間が減るというメリットがあります。しかし、これは雇用主側にとってもコスト減に繋がるメリットになります。
企業としてコスト削減は見逃すことのできない重要な要素。仕事を効率化することで手早く終えることができれば、残業の必要もなくなるかもしれません。また、余った時間で他の仕事を進めることもできます。同じ時間内で、より多くの仕事をこなすことができれば、生産性も上がりコストの削減に繋がります。
ミスが減ることで仕事の質が向上する
仕事をする上でミスをすることはある程度仕方のないことでしょう。しかし、一度ミスを犯すと、それを挽回するために多くの時間やコストを必要とすることもあります。
効率化とは、ただ仕事をスピードアップすればいいというわけではなく、クオリティも維持することが前提となっています。作業が早く終わったとしても、ミスだらけではかえって時間がかかってしまうので、ミスを未然に防ぐ工夫とミスを早期に見つける工夫をすることが必要になります。
その結果、ミスが減り、仕事のクオリティが上がるのです。
効率化によるデメリットも見逃せない
仕事の効率化は“いいこと”と感じている人が大多数だと思いますが、実はデメリットもあります。
能力が開発されない
例えば自分が苦手とする業務で時間を費やしてしまうのなら、得意としている人に助けてもらった方がはかどりますよね。業務のスピードアップはもちろん、ストレスの軽減にもつながります。
各自が得意分野を担う形で仕事を分担すると作業効率は向上します。しかし、個々人のスキルを見てみると、苦手を克服できないままということになります。
もし、部署異動や転職などで、これまでやっていなかった作業をやらなければいけないという状態になったとき、ゼロベースで能力開発をしなくてはいけないかもしれません。
新しいことに挑戦できなくなる
効率化のために無駄を省くことを第一に考えてしまうと、新しいことに挑戦しにくくなってしまいます。
例えば、新たな資格取得に挑戦しようと思っても、必ず合格するとは限らない→勉強時間がムダ、となってしまっては意味がありません。
本来持っているポテンシャルを活かしきれず、目の前の作業だけを淡々とこなすだけ、というのももったいないことです。
仕事の効率化は、バランスを持って考えることが大切でしょう。
仕事を効率化させるために、まずは作業の“棚卸し”を
メリット・デメリット両面を持ってはいるものの、ワークライフバランスを考えると仕事の効率化は積極的に行なっていきたいもの。
効率化をするためには、まず自分の仕事内容を書き出してみましょう。 そのうえで、以下を考えます。
- ミスが多い部分はないか、あるのであればそれはどれなのか
- 時間を取られやすい業務はどれなのか
- 一日のスケジュールに無理はないか
- もっと人に協力を仰げる部分はないか
- 自分が仕事に集中しやすい時間帯はいつか
一日の業務をスリム化するためにできることを“棚卸し”することで、自分の業務内容が明確に分かり、改善点を見つけやすくなるのです。
個々の項目から問題点が見つかったら、ムリ・ムダ・ムラの要素も踏まえながら、どうやって改善していくかについて考えていきます。
“棚卸し”が終わったら改善していく
改善するべきポイントが見えたら、実際に見直しをしていきましょう。
例えばミスが多い業務があるのであれば、なぜミスをしているのかに焦点を置きます。何かの業務と同時に行うことが多い、集中力の下がりやすい時間帯に行っているのではないか、など原因を分析することで改善することができます。
自分が仕事に集中しやすい時間を把握しておくということは実はとても有効で、その時間を活用しない手はありません。
食後の誰でも眠くなるような時間帯に、わざわざミスを誘うような業務を行うことは効率的とはいえませんよね。
自分自身の体調も考慮し、仕事をスケジューリングすることで、仕事がはかどるだけでなく「なんでミスをしてしまうのだろう」といったストレスからも解放されるかもしれません。
人に協力を仰いだ方がよいことでも、相手の都合も考えて頼みにくいことがあるかもしれません。文字に書き出してみることで客観的に考えることができれば、自分で抱え込まず、協力してもらうべきだと気づけることもあるでしょう。
このように仕事を効率化していくと、ただスピードをあげて仕事をする、生産性を上げる、といった事だけでなく業務中の悩みが減り、自分自身リラックスして仕事に向かうこともできるようになります。
仕事の効率化によってモチベーションもあがる!
ムリ・ムダ・ムラを省くという概念は、仕事をスリム化していくためのポイント探しにとても役に立ちます。
一日の業務が予定通りに終われば、ストレスも少なく達成感もありますよね。もちろん、イレギュラーな仕事が発生することもあるので計画通りにはいかないものですが、自分自身のコンディションと、仕事のバランスを整えておくことで柔軟な対応もしやすくなるでしょう。
文/佐藤仁美