「日本人は清潔好き」とよく言われますが、清潔を通りこして「潔癖」と思われる人もちらほら…。

 

しかし子育てにおいては、いわゆる「潔癖症」だと困ってしまうことも多いのではないでしょうか。

 

今回は、実際に育児中のママたちに、子育てで辛いことや困ったことはないかアンケートで確かめてみました。

 

また育児を通じて自身の「潔癖」度に変化があったという経験談も紹介します。

そもそも「潔癖症」とは?

通常、「あの人はきれい好き」「清潔好きなお母さん」というのは好感を持って受け止めらると思われますが、「私は潔癖症です」と聞くと、「症」というワードから何か病的なものを感じてしまう人が多いのではないでしょうか。

 

潔癖症といわれる行動には次のようなものがあります。

 

  • 1回手を拭いただけのタオルでも菌が繁殖しているようで洗濯しないと気が済まない
  • 電車の吊り革や階段の手すりにばい菌が付いているような気がして触れない
  • 他人が触った書類やお金に触れることができない
  • 他人が作った料理が食べられない

 

上記が度を越して日常生活や社会生活に支障をきたすレベルになると「強迫性障害(OCD)」と診断されることも。

 

以前は心理的な要因で発症すると考えられていましたが、最近ではそれだけではなく、「セロトニン」など神経伝達物質のバランスが崩れていることや、脳の特定の部位(前頭前野、帯状回など)の機能障害が原因であることが分かってきています。

 

治療は「選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)」を中心とした薬物療法と「暴露療法」「儀式妨害療法」などの行動療法を並行して進めていきます。

外出先でのオムツ替え、トイレトレ…潔癖症ママの育児ストレス

赤ちゃんは何でも口に入れたり、しゃぶったり。

 

家の中ならまだ掃除や消毒を徹底することもできますが、潔癖症のママにとって外出はある意味、恐怖の連続となるようです。

 

「ショッピングモールのオムツ交換台で、以前に順番を待っていた時に少し大きい子が靴のままでシートの上に立ったり、ウンチがちょっとついても拭き取らずに帰ってしまう人を見かけたことがあって。そこにわが子を寝かせるのは抵抗があってオムツ替えを中止。残りの買い物の予定を取りやめて帰宅してしまいました」(Kさん・31歳・0歳児のママ)

 

「児童館のおもちゃって、1日1回くらいは消毒してくれている…と思いたいけど、数も多いし、午前中に誰かがしゃぶったおもちゃは午後になってもきっとそのまま。何でも口に入れてしまう時期は、それが心配でなかなか児童館に連れて行けませんでした。とはいっても、保育園に入ってからはそれどころじゃなくなってしまいましたが」(Fさん・36歳・5歳児と3歳児のママ)

 

「家族でプールに行ったとき、隅の方に髪の毛や虫の死骸が浮いているのを見つけ、それ以上入っていられなくなってしまいました。子どもは喜んでいるので申し訳ないと思いながら、その後はずっと夫に子どもの相手を担当してもらいました」(Eさん・29歳・1歳児のママ)

 

「ママ友と親子でランチに行ったのですが、ブッフェ式のレストランだったんです。料理を皿に取りながらしゃべっている人が大勢いて、唾が入っているのでは…と気になりだしました。子どもが自分で取りたがるので、できるだけ周囲に不審がられないようにしつつ奥から取らせるようにして疲れ切ってしまいました」(Yさん・32歳・4歳児と1歳児のママ)

 

家の中でも、潔癖症の人にとっては「聖域」ともいうべき場所があり、そこにはお風呂上りなどでないと触ることも足を踏み入れることもできない人もいます。

 

「4歳の娘が私のメイク道具に興味を持って自分も触りたがるのですが、手を洗ってからでないとどうしても触らせることができないんです。あなたは汚いというメッセージを送っているようで、娘の心に悪影響がないか気にはなっているのですが、どうしても我慢できず…」(Wさん・33歳・4歳児のママ)

 

また、トイレトレーニングについては「もっともストレスだった」というママも多数。

 

Uさん(34歳)は、

 

「よく、床でシャーっとやらせればすぐに覚えるといいますよね。でもカーペットや畳の部屋もあるし、ベッドやソファーなど布製家具の上もやめてほしい…おしっこならまだしも、それがウンチだったら…と考えると、とても踏み切れませんでした」

 

と話し、おむつをつけたままでトイレに誘う方法でなんとかトイレトレーニングを進めたそうですが、

 

「途中何度も中断したし、なかなかトイレでしてくれなくて、結局1年以上かかったかも」

 

といいます。

子育てで潔癖症は変わった?先輩ママ・パパ体験談

今回、0歳から14歳のお子さんを持つママ・パパに、「あなたとパートナーは潔癖症(気味も含む)ですか」とアンケートでたずねてみました。

 

すると答えは次のようなものに。

 

  • 家族に潔癖症の人はいない…67%
  • ママが潔癖症(気味)…22%
  • パパが潔癖症(気味)…9%
  • 子どもが潔癖症(気味)…9%

※複数回答あり

 

3分の2の家庭では、とくに潔癖症の人はいないという結果でしたが、パパや子ども自身が潔癖症(気味)という家庭は一定数あるようです。

 

また、約5人に1人のママが潔癖だという結果に。

 

具体的にどんな点で困ったのか聞いてみました。

 

「離乳食のついた手で顔や頭を触って髪の毛がごはんつぶだらけになるのが嫌で、つきっきりでひんぱんに手を拭いたり、外出中にトイレの壁にもたれようとするとダメ!と叫んでしまって子どもがびっくりするなど…かなり神経質に育ててしまったかもしれません。おかげで何か手に取るときに、チラっと私の顔を伺うようになってしまいました」(Nさん・33歳・2歳児のママ)

 

「スーパーのカートが汚いんじゃないかと思って、1回も使ったことがありません。特に乗り物型のカートを見ると子どもは乗りたがるのですが、中を見るとたくさんゴミやお菓子のカスなどが落ちていて、いつも子どもともめるので、最近はそれのないスーパーばかり行ってしまいます」(Hさん・30歳・3歳児のママ)

 

しかし、こういった例を上回るのが、育児で「かなり感覚が変わった」「平気になった」という声でした。

 

「以前は菌に敏感で、スプーンやお箸など少しでもお皿以外に接触したらすぐに洗うということをしていました。洗ったお皿を布巾で拭くなんてとんでもない!と…しかし末っ子が生まれてからは全く気にしないようになりました。むしろもっと菌と接触しないと弱くなる、というのが今の考えです」(Sさん・37歳・6歳と4歳と1歳のママ)

 

「顔にうんちをかけられる。網戸をなめる。もう、どうしようもないことが多すぎて、だんだんどうでもよくなりました。家をきれいに保つ余裕がなくなり、多少のホコリで死にはしないな、という意識に変わりました」(Mさん・35歳・3歳児と1歳児のママ)

 

「育休中はかなり衛生に気を使ってほとんど病気せずにを1歳を迎えましたが、保育園に入園したとたん一度にたくさんの病気にかかり、入院が必要になるほど。過保護すぎたと感じました。また保育園で泥まみれになって遊んだり、泥水でままごとしたり、うれしそうな写真をみてそれまで触れさせてこなかったことを反省しました」(Aさん・30歳・1歳児のママ)

子どもの衛生観念をしっかり考えよう

身の回りの多種多様な雑菌は、体内に入ると消化管や呼吸器などの粘膜に層を作り、あとから侵入したウイルスや病原菌につけいるスキを与えない働きがあるともいいます。

 

育児を経験したママ・パパは本能的にそれを感じるのか、あるいは次々に汚したりなめたりする子どもたちにお手上げでこだわっていられなくなるのか…いずれにしても、「潔癖症」から「キレイ好き」程度に変化して落ち着いたという人も少なくありません。

 

子どもの心身両面にとって最適な「衛生観念」とはどの程度をさすのか、時々立ち止まって考えてみたいですね。

 

文/高谷みえこ