「共家事」という言葉を聞いたことはありますか? 今回は、共家事とはどんな意味なのか、いつから使われている言葉なのかなどを解説。 今後の課題や、実は隠された深い意味が…?なども紹介します。
「共家事(ともかじ)」聞いたことある?
「共働き」「共稼ぎ」は聞いたことあるけど、「共家事(ともかじ)」なんて初耳…そんな人も多いかもしれません。
共家事とは、共働きの夫婦や家族がみんなで一緒に(=共に)家事を行うこと。
ここ5年ほどで、テレビや雑誌などのメディアでもちらほらと見かけるようになりました。
共働き率58.6%と「日本一共働きの多い県」として知られる福井県では、女性の家事負担軽減を図り、夫婦や家族で共に家事を楽しめるようにと以前から共家事を提唱しており、婚姻届を提出したカップルに「家事・育児シェア見える化シート」やリーフレットを渡すなどして周知につとめています。
2017年には大手の家庭用品メーカーが「共家事婚姻届」として、実際に役所に提出できる様式の婚姻届をホームページ上で配布。
「脱ぎっぱなしの靴下は脱衣所へ。使い終わったハサミは引き出しへ」「妻が寝込めば夫が、夫が多忙なときは妻が」「わけあいたい家事を書き出してみよう」など「10の誓い」を記載し、夫婦で家事についての認識を確かめあう機会を提供しました。
同じく、大手画像配布サイトでは「家事をしている画像といえばいつも妻(女性)なのはおかしい」として、男女ともに家事を行う画像の無料配布キャンペーンを行い、話題になりました。
「共家事」の課題
しかし、「共に家事をする」と言うのは簡単ですが、やはりそこには課題もあります。
夫側の意識
日本で共働き世帯とサラリーマン+専業主婦世帯の割合が逆転したのは1997年頃。
いま30代の夫婦の子ども時代は、家事の多くを母親が負担していた家庭もまだ多くありました。
そのためか、当たり前のように家事に取り組む男性もいれば、何をすればいいのかわからなかったり、メインは妻で自分は手伝える時に手伝えばいいという認識の男性もいて、家庭ごと夫婦ごとの意識に開きがあります。
妻側の意識
同じく女性も「家事は分担するべき」とは思っていても、ロールモデルが専業主婦の母親であるためか、無意識に自分が動かなければと思ってしまうことがあります。
また、「夫に頼んで嫌な顔をされたりケンカになるくらいなら」と諦めている人や、「自分がやった方が早い」「自分流を貫ける」という理由であえて夫に何も言わず、結果夫は何もしなくなってしまった…という人もいます。
共家事を定着させるには
子どもたちの未来には、家事の分担で女性が消耗したり何かを諦めたり、夫婦が険悪になることは避けたいもの。
今後、「当たり前のように共に家事をする家庭」を実現するには、上記のような意識改革のほか、以下のような点でも工夫の余地があります。
- 動線を改善し、誰でもさっとモノを片付けられるようにする
- 「名もなき家事」を見える化し、家族全員がいま何のタスクが残っているのか、何を優先してするべきなのか把握する
- 分かりやすい家事用品の収納で「ママしか分からない」という状況を避ける
共家事の「共」には「共感」の意味もある
過去に行われた共家事に関するキャンペーンでは、PR動画の中で妻が夫に「あなたもたまには家事やってよね」と言うシーンがあります。
これは、夫からすると一見、非協力的な態度を責められているだけに思えるかもしれません。
しかし、妻としては時間的・肉体的な負担が大きいから家事の作業を分担してほしいという意味だけではなく、一緒に取り組むことで、どの部分がどう大変なのか、気持ちを共有してほしいという気持ちが込められているといいます。
一般的に男性には「共感する」ことが苦手な人が多いといわれます。
共に家事をすることで、もっとも大切なパートナーに共感できる部分が増えるのも「共家事」のメリットであり、目指すところだといえます。
おわりに
2018年、専業主婦世帯641万世帯に対し共働き夫婦は1188万世帯。
世間の夫婦のほぼ3軒に2軒が共働き世帯の世の中なのに、毎日欠かせない家事を共にするという視点で語られたことはほとんどありませんでした。
テレビCMなども少しずつ、男女ともに協力して家事を行う姿が標準的になりつつありますが、まだまだ解決すべき課題も多く、当たり前のようにどの家庭でもみんなが家事をするにはもう少し時間がかかりそうです。
家事はママの仕事で他の家族は手伝うもの…そんな固定観念がなくなる頃には、もしかして「共家事」という言葉も消えているかもしれませんね。
文/高谷みえこ