妊娠している人が医療機関を受診した際に自己負担が増える「妊婦加算」。今年1月から凍結されていた同制度について、厚生労働省が再開断念を決定しました。妊婦への負担が大きかっただけに、「本当によかった!」と喜ぶ人が相次いでいます。
妊婦に一律で医療費を加算していた「妊婦加算」が廃止に
「妊婦加算」とは妊婦が外来診療を受ける時、「妊婦には通常よりも慎重な対応や特別な配慮が必要」という点から診療報酬が追加される制度。追加される診療報酬は患者が負担することになるので、妊婦だけが外来診療費を値上げされていることになります。たとえば妊婦が病院に行くと、初診では約230円、再診では約110円が自動的に追加請求されていました。
“妊婦である”というだけで医療費が割増しになるため、実質「妊婦税」ともいえる「妊婦加算」。中には妊娠していても診療内容が変わらない“コンタクトレンズの処方”で加算されたという報告も。批判が高まったため、今年の1月から制度自体が凍結されていました。厚生労働省は2020年度の診療報酬改定に合わせて制度を再開するか議論していましたが、「従来と同じ形では理解を得られない」と再開を断念。実質的に制度廃止が決定した形です。
制度廃止を知った人からは、「少子化が問題視されてるのにおかしいと思ってた。廃止で当然」「なんでこういう制度を思いつくのかわからない。廃止になって本当にホッとしたよ」と安堵する人が続出していました。
「任意での情報連携」に追加報酬の仕組みを検討中
「妊婦加算」は再開しないことがわかりましたが、「医療機関の間で情報連携がされる場合」は医療費が上乗せされる可能性も。患者の同意が得られた場合には医療報酬を追加して「情報連携」を行う、新たな仕組みを検討しているそうです。
また2019年12月13日には、政府が来年度の診療報酬をマイナス改定する方針を固めました。医師の技術料や人件費にあたる「本体部分」は0.55%引き上げられたものの、薬代などの「薬価部分」は下がって全体で見ればマイナスに。定期的な検診や体に不調の出やすい妊婦さんにとって、医療費が下がるのは嬉しいニュースです。
ネット上では「妊婦になってから病院に行く回数は明らかに増えました。医療費が全体的に引き下げられるなら、とても助かります」「『妊婦加算』がなくなって医療費も下がるのは朗報かな」と喜ぶ声が相次ぎました。
妊娠出産・育児に使える補助金や助成金
妊娠出産はお金の負担が大きいものですが、国からの補助もいろいろ。例えば出産・育児についてだけでも、“出産育児一時金”“出産手当金”“児童手当”などの給付金制度があります。それでも費用的な問題で出産時に入院できない妊産婦には、「入院助産」制度という入院・出産費用の助成も。
妊婦がかかりやすいといわれる“妊娠高血圧症候群”“糖尿病”“貧血”“産科出血”“心疾患”といった症状の認定基準を満たしており、入院治療が必要な場合は医療費の給付制度を受けることが可能です。
こうした取り組みは自治体ごとに異なり、地域によっては出産子育てへのサービスがさらに手厚くなることもあります。たとえば東京都の港区には「里帰り出産等のために、妊婦健康診査受診票が使用できない」人の医療費を一部助成してくれる制度が。ほかにも地域でのママ友づくりも兼ねた「母親学級」や、産前産後の家事・育児に関するサービスが充実。子育て世帯を手厚くサポートしていきます。
生活していく上で避けて通れないお金の話。かしこく制度を利用して負担を減らしたいものですね。
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文/長谷部ひとみ