「子どもは夫婦の間に生まれるのだから、育児も2人でするべき」 ごく当たり前に思える考え方ですが、令和になってもなかなかそう考えられないパパも一定数いるようです。
また、育児に参加する方がいいとは思っていても、仕事が忙しい・子どもがママのお世話でないと嫌がる・やり方が分からない…など色々な理由から結果的にほとんど育児に参加できていない夫へ、妻の不満や愚痴、時には離婚を考える声もSNSやインターネットでは頻繁に見かけます。
でも、せっかく結婚し子どもを授かったなら、できる限り育児の大変さも楽しさも夫婦で共有したいもの。
今回は、「育児をしない夫」の心理と対策を考えてみました。
ママに聞いた「育児しない夫」たちの現状
現在育休中で7か月の赤ちゃんがいるTさん(28歳)は、日頃の家での夫のようすをこう話します。
「平日は夫は残業で帰宅が10時頃になることも多く、子どもはもう眠っていることが多いんです。夜泣きした時には翌日の仕事に差し支えるといけないと思い、私が別の部屋へ連れて行って対応しています」
休日になっても、
「平日子どもと接することが少ない分、週末には一緒に遊んだりお風呂に入れてあげたりしてくれればと思うのですが…実際は昼まで寝ていて、起きたらスマホをいじったりテレビを見てゴロゴロするばかり。ちょっと見ててと言っても、ほったらかしなのですぐ子どもは私のところへハイハイしてきてしまいます。家事で手いっぱいでオムツ替えを頼んだ時も、後でいいじゃんと言われ結局私がやりました」
と、今はなんとか回せていても、育休明けにこの調子で家事育児を協力していけるのか心配だということ。
5歳と3歳のお子さんがいるGさん(32歳)の夫は、比較的早い時間に帰宅するものの、夕食後はオンラインゲームに何時間も費やしているそうです。
「子どもたちが遊ぼうと言っても、ゲームの方が優先で生返事だったり、横できょうだいゲンカが始まってもなだめるどころか”うるさい”と怒る始末。仕事は真面目に行ってくれますが、いくら仕事のストレスの息抜きといっても限度があると思います」 子どもたちが幼く、全身で「パパ、ママ」と駆け寄ってくる期間は意外とあっという間に過ぎ去ってしまいます。
休日くらいはゆっくりしたいとはいえ、その時期に子どもたちとほとんど向き合わず過ごすのはとても残念なこと。
また、お子さんが成長したママからはこんな声も寄せられています。
「夫は自分の付き合いには出かけるのに、子どもを公園に連れて行ったり、家で一緒に遊んだりということがほとんどなく、コミュニケーションを取るのは子どもが何か失敗して叱る時くらい。小さい頃は子どもたちも淋しそうにしていましたが、家事もしないでたまに口を開けば小言ばかり…という父親にやがて愛想をつかし、今では2人とも、パパは好きじゃないと言っています」(Yさん・45歳・高2と中2の女の子のママ)
こんな風になってしまうのはとても残念ですね。
いくら話し合っても改善されない場合はともかく、少しでも見込みがあるなら、夫が子どもと関われるような方法はないものでしょうか。
育児をしない・できない夫の心理
妻が「2人の子どもなのに…!」と不満や疑問を抱く「育児しない夫」の心理は、いったいどうなっているのでしょうか。
育児を「手伝う」と言ってしまう夫の心理は
まずは、よく見かける「育児を手伝う」という表現。
そもそも育児は夫婦で行うものですよね。
「手伝う」はメインの担当者以外の人、例えば祖父母や近所の人などが使う言葉なので、もし夫が「俺だって育児を手伝ってるよ」と口にした場合、育児の担当者は母親で、自分は当事者でないと考えていることになります。
これは夫が子どもの頃に自らの父親がどれだけ育児に関わっていたかにも左右されます。
「僕の父はほとんど子どもと接することなく、淋しい思いをしていたので、自分はできる限り子どもと関わって育てたい。時間があればおもちゃで遊んだり、散歩なども行きます」(Eさん・30歳・0歳児のパパ)
と話すパパもいますが、これとは反対に「自分の父親もほとんど育児に関わらなかったから、そういうものだろう」と考えている男性も少なくはないでしょう。
「どうせママがいいから…」育児に消極的になってしまう夫の心理
「どうせ僕がだっこしても泣くし、結局妻が役に立たないわねって顔で子どもを連れていくので、もう自分が余計なことをしない方がいいのかなと」(Oさん・36歳・0歳児のパパ)
と、うまくできない・何をしていいか分からないから参加しづらいという声も。
たしかに、お腹の中で赤ちゃんの動きを感じながら何か月も過ごし、出産後も1日のほとんどを赤ちゃんと過ごすママの方がはるかに当事者意識が高いのは、最初のうちは当然のことともいえます。
しかし、そこから次第に「父親も当事者である」と感じられるようになるか、ずっと「手伝い」感覚のままかは、夫婦ごとの考え方や出産前後にどう過ごしたかによって大きく異なります。
休日なのに子どもと触れ合おうとしない夫の心理
「仕事から帰ってきた後や休日に子どもと接することが少ない」という夫の心理については、男性と女性でストレスの解消法が異なることからきている可能性もあります。
女性は、嫌な思いや困りごとを誰かと分かち合い共感を得ることでストレスが解消される人の割合が多く、男性は1人の世界に没頭することで嫌なことや困りごとを忘れて心が軽くなる人が多いといわれます。
昭和の時代であればプロ野球中継や新聞を読むこと、現代ならさしずめスマホゲームやSNSというところでしょうか。
しかし中には、
「イクメンがどうとかじゃなく、子どもと遊んでいると本当にかわいいし、”この葉っぱがニンジンにみえるのか”など新鮮な発見があって楽しいので、休みの日は公園遊びを進んで引き受けてます」(Nさん・34歳・1歳児のパパ)
というパパもいました。夫にとって「育児=仕事のストレス発散や気分転換」となれば一番ですね。
「育児しない夫」とあきらめる前に
男性の中でも、上記のように自分から「育児って楽しい」と感じる人もいますが、口には出さなくても「できればやりたくない」と思っている人もいるでしょう。
しかし最初は「仕方なく」でも、関わっているうちに慣れてきて参加のハードルが下がるのは育児に限ったことではありません。
Wさん(30歳・2歳児のママ・妊娠8ヶ月)は、夫が育児を自分に任せっきりなのに「子どもは2人欲しい」という希望を持っていたため、とても悩んだといいます。
「私も子どもにきょうだいを作ってあげたかったのですが、現状では私が仕事も家事も育児も…が無理だと思い、まずは夫が上の子の育児にどれだけ関われるかを見て考えたいと言いました」
出産直後の夫は、ウンチのオムツ替えはもちろん、泣いている赤ちゃんを抱っこしてあやすのもほとんどしたことがなかったそうですが、生後3か月頃から接し方を変更。
とにかく今やるべきことを明るく伝え、父と子が触れ合う時間を増やすようにしたそうです。
「妻が家事で忙しかったら、夫は泣き出した赤ちゃんをあやすことくらい当然できるだろうと思っていたのですが、よく聞いてみると、抱っこすべきなのか手を出さない方がいいのか、言われないと分からないとのこと。なので、最初は毎回”いま洗い物で手が離せないから10分ほど抱っこして”と理由を添えて頼むようにしていました。夫がミルクじゃない?と赤ちゃんを連れてきたら、オムツを先に見てくれる?と笑顔で返事。お腹が空いているとき以外は、私が抱っこしても泣くからお願いねーと明るく押し付けていたら、お互いにだんだん慣れてくれたようです」
どうしても参加できない時は、声だけでもかけて
フルタイムで共働きの場合はともかく、妻が育休中だったりパートなどの時短勤務だったりすると、夫は「仕事をしっかりやることが自分の役割」と思い、バリバリ働いて家事や育児は妻に全面的に任せればいいと考えることがあります。
特に、残業や出張・休日出勤が多い職場であれば、子どもと接する時間がなかなか取れないパパもいるでしょう。
しかし、「お金を稼いでいるんだから」というだけでは、やはり育児に参加しているとは言えません。
妻も、仕事が忙しく少ない休日にゆっくりしたいという夫の気持ちは分かっています。
同時に、育児には休日がなく、24時間子どもの安全や栄養や発達を気にかけながらいくつものタスクを同時進行する大仕事。
それに対し、理解を持って
「今日もご苦労様」 「今日は〇〇どうだった?」 「何もできないけど、いつもありがとう」 「何か困ってることあったら言って」
といった声掛けが夫からあれば、疲れていてもずいぶん頑張れるもの。
それをひとこともなくスマホ片手にゴロゴロ…だと、つい
「私だって365日休みがないのに!」
と不満が爆発してしまう可能性もあります。
いつも子どもや妻を気にかけていることが伝われば、ママの心が安定し、子育てにもいい影響があるという意味で、こまめに感謝やねぎらいの声をかけることは十分「育児への参加」と言えるのではないでしょうか。
育児をしない夫の対策まとめ
なかなか育児に参加しない夫への悩みに対し、「男性なんてそんなもの」「いないと思った方が気が楽」「お金さえ稼いでくれれば」といったアドバイスも見かけます。
たしかに、どれだけ働きかけても変わらない夫なら、生活のためと割り切ってあきらめて暮らしたり、最終的には離婚という選択肢も当然あると思います。
しかし、せっかく夫婦・親子として生きていくなら、可能な限り心が通じ合っていたいもの。
今回の記事も参考に、夫の心理を知って効果的に希望を伝え、少しでも育児の楽しさと大変さを共有できるようになればより良いですね。
文/高谷みえこ
参照/書籍『ベスト・パートナーになるために』ジョン・グレイ 著 大島渚 訳 三笠書房