人に頼るのが苦手な人というのはいますが、夫婦の間ですら「夫の頼ることに抵抗がある」という妻もいます。自立する意識が行き過ぎて、自ら描いた「幸せ」から、少し遠のいていることに気づいた妻たちに話を聞きました。夫婦の間に何が起こっているのでしょうか?

ワンオペの果てに「あれ、旦那って必要…?」(みのりさん/31歳/事務員)


 

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どちらかというと完璧主義な私は、仕事をしつつも、家事育児は自分で納得のいくようにやろうと決めていました。 子どもたちが小さいうちは大変でしたが、保育園に通い出すと1日の流れが決まってきます。ルーティンになればさほど負担でもなく、ふと気づけば、ほぼ自分だけの力でこなせるようになっていました。 そんなある日「旦那のありがたみを感じていない」と気づいたんです。子どもが寝たあとにひと息ついて寝室でドラマを見ていると、旦那が帰宅したので食事のしたくをしました。 寝室に戻ったときには、ドラマはすでに終了。その後、旦那が食べた食器はそのままでお風呂場に向かっているのを見て、「あれ…? 旦那って必要…?」という言葉が心をよぎって。 旦那がいなければ、自分のペースでもっとスムーズに1日の家事が終了するし、自分の時間も確保できると気づいてしまったんです。いま必死に「旦那の必要性」を探しているのですが…今のところ、そう思える場面がありません。

「自分の分は自分で」が行き過ぎて…(涼子さん/34歳/経理事務)


 

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子育てが大変だったころ、夫婦の間で「自分のことは自分でやろう」という約束を交わしました。お互いに相手のことを頼らずに生活をして数年経ったいま、私たちは「自分のこと」しかやらなくなってしまいました。 たとえば洗濯機の中に旦那の洗濯物があれば、自分の分と一緒に干すのですが、心の中ではどうしても「やってあげている」と思ってしまいます。普通なら、そんな風には思いませんよね。 旦那のほうも同じで、私が食器を置きっぱなしにしていると一度くらいは洗ってくれるのですが、二度目は端っこのほうによけられています。なんだか同じ空間にいるのに、すごく「バラバラ」な感覚になるんです。 この夫婦を見て育てば、息子も「自分のことは自分で」という精神で育ちますよね。なんだか夫婦間だけでなく、将来家族までがバラバラになってしまいそうで不安です。

「自立」しすぎて頼ることができない (真美さん/35歳公務員)

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私は結婚後もずっと「自立した女性」を目指していました。仕事も家事や育児も、手を抜かずにやってきたつもりです。でもある日私のミスで残業になり、息子のお迎えの時間を過ぎてしまったことがありました。 急いで迎えに行くと薄暗くなった保育園で、息子は先生とふたりでずっと私を待っていたんです。その光景を見て、緊張の糸が切れたのを感じました。なんだか疲れきっていることに気づいてしまったんです。 その日の夜、旦那に「母親業に専念したい」と相談しましたが、「冗談でしょ()、どうせすぐに働きたくなるよ」と真剣には聞いてくれませんでした。理由を聞こうともくれませんし、話してもきっと理解してもらえないだろうとわかってしまいました。 共働きのほうがお互いを支え合えると思っていましたが、なんだかそれぞれがひとりで立っていて、つらいときに寄りかかることができない関係になっていたんですね。

 

自分が頼る場所をきちんとつくるためには「上手に甘えられる」「ヘルプを出せる」という能力が必要かもしれませんね。 もしあなたが思う「自立」が「我慢」になっているのなら、できるだけ早いうちに誰かに甘える勇気を持ってください。 きっと本当の意味での「自立」に近づくことができますよ。

 

文:矢島みさえ