「ああ、今日も一日、怒りっぱなしだった…」 お子さんが寝たあと、ため息をついているママもいるのではないでしょうか。
子どもは発展途上なので、怒られるようなことばかりするのはある意味当たり前。 とはいえ、育児の責任者である親としては叱らないわけにはいきません。 でも、もし、怒る必要のないことまでイライラして怒っているとしたら…?
「いや、どうみても欠点でしょ」と思う前に、一度「リフレーミング」について読んでみて下さい。少しだけイライラが解消するかも?
「リフレーミング」とは。意味を解説
「リフレーミング」は、英語で写真や窓などの「枠」を表す「フレーム」に「~し直す」という意味の「Re/リ」をつけたもの。
私たちが日常見ている世界は、すべてその人の視点(=フレーム)から見たものです。
写真で例えると、動物園で数人がゾウの写真を撮影したとして、ゾウの鼻を撮った人・耳を撮った人・足を撮った人・離れて全身を撮った人…同じゾウでも、それぞれの写真はまったく違うものになりますね。
これを心理学に応用し、視点を意識的に変えることで、ものごとの受け止め方や心の状態を変え、よりよい精神状態や人間関係にしていこうという考え方を「リフレーミング」と呼びます。
よく例えとして挙げられるのは、 「コップにもう半分しか水がない」→「まだ半分も水がある」 「試験時間があと15分しかない」→「まだ15分もある」 などの言い換えですね。
上記のようなことは、教えられずとも自然にできる人もたくさんいますが、はじめて系統立った理論としてまとめられたのは1970年代アメリカの「NLP(Neuro Linguistic Programming/神経言語プログラミング)」だと言われており、過去にはベトナム戦争で心の傷を負った帰還兵の治療や、NBLの選手のメンタル管理などにも採用されてきたそうです。
子どもを「リフレーミング」で見てみると
この「リフレーミング」は、実は育児にも応用がききます。 わが子だけを見ていると「どうしてこの子はこんなに落ち着きがないの?」「5分間じっと座っていられないなんて」とイライラするかもしれませんが、それは好奇心旺盛でやりたいことや興味の対象が多く、思いついたら即動ける行動力の表れとも言えます。
実際、有名な起業家には、幼少期はそんなタイプだった人が非常に多いとも言われます。
また、他のママからは「うちの子は行動が遅くて、気になるおもちゃや遊具があっても、全部先に他の子に取られちゃうのよ。見ていると歯がゆくてイライラする」と、行動力のある子がうらやましく見えているかもしれません。
わが子の短所と思える点が見えたときは、リフレーミングを応用して「他の見方はできないか?」と考える習慣があれば、叱らずに「外が気になると思うけど、食べ終わるまで座っていようね」と声をかけるだけで済むようになるかもしれませんね。
育児のイライラ・怒りすぎを救う「リフレーミング」例
他にも、一見子どもの短所と思える点を、リフレーミングでプラスにとらえる例はいくつもあります。
例1)「うちの子は口下手で…もっとはっきり言いなさい」
口の達者なお友達やきょうだいに一方的にまくしたてられて言い返せない姿を見ると、ママはモヤモヤすることでしょう。
でも、それは相手の話をしっかり聞こうとしている理解力や、いいかげんな返事をしないという思慮深さの表れだとも言えます。
また、そういう子は公共の場所など静かにしているべき場所できちんと静かにしていられることも多いでしょう。
例2)「好き嫌いが多くてわがままなの」
洋服の組み合わせや遊び方などにこだわりがあり、嫌なことは頑として受け入れない子には、「そのくらい合わせればいいのに」と思うかもしれません。
しかし、これもリフレーミングしてみれば、何事にも自分の判断基準を持っていて信念のある子だとも言えます。
有名デザイナーやアーティストの幼少期にはこのタイプが多いともいわれます。
また将来もし周囲から悪いことに誘われても、自分が嫌だと思えばきっぱり断り、流されずにいられるでしょう。
例3)「犬が怖い、先生が怖い、お化けが怖い…なだめるのが大変」
怖がりな子は男女ともにいますが、特に男の子は短所ととらえられがち。
ですが、ここまで人類が発展してきたのは、こういう考え深く慎重な性格の人間が一定数いたからで、そうでなければとっくに毒のある食品や災害で滅びていたのではないかといわれています。
おばけが怖いのは想像力がゆたかな証拠ですし、大声を出す大人が怖い子は、きっと他人に対して大声や暴力で恫喝するような大人にはならないでしょう。
おわりに
小学校でのクラス懇談会で、自己紹介タイムによく担任の先生から出されるお題として「いま子育てで困っていること」があります。
同年代や、上の子がいるママのアドバイスが参考になれば…という狙いですが、わが子の短所や困りごとはみんなどんどん発言します(笑)。
いっぽう、「今回は、お子さんの長所を挙げて下さい」というお題がたまに出されることがありますが、こちらはなかなかとっさに出てこないママも多いよう。これも一種のリフレーミングといえます。
わが子のいいところがいつでも言えるよう、日頃からリフレーミングの練習をしておきたいですね。
文/高谷みえこ
参照/書籍『リフレーミング―心理的枠組の変換をもたらすもの』
リチャード バンドラー、ジョン グリンダ― 著/星和書店