ここ最近、地元を離れて実家や友人知人のいない土地で育児をすることを「アウェイ育児」と呼び、その独特のつらさを訴えるSNSの投稿などが共感を読んでいます。

 

そこで今回は、実際にアウェイ育児を経験したママたちの体験談を参考に、どのような点が特に辛いのか・どうやったら抜け出せるのか…を考えてみました。

 

アウェイ育児とは?ワンオペ育児とどう違うの?


「アウェイ育児」とは、結婚や夫の転勤をきっかけに地元を離れ、知り合いのいない土地で出産・育児をすることです。

 

「アウェイ育児」という言葉は2016年頃からよく使われるようになり、NPO法人子育てひろば全国連絡協議会の行ったアンケート調査では、7割以上の人がアウェイ育児(生まれ育った場所で育児をしていない)であることが分かりました。

 

いっぽう、配偶者が仕事で忙しく、子どもが起きている間はほとんど1人で育児をする「ワンオペ育児」。

 

こちらも同じように思えますが、仮に「ワンオペ」状態だったとしても、地元に住んでいればいざという時に実家を頼れたり、自分をよく知っている友人と会って気分転換したりできるため、アウェイ育児と比べると精神的負担を軽減しやすいかもしれません。

 

また、アウェイ育児の原因となる「夫の転勤」は多くの場合選択の余地はなく、妻は退職して専業主婦になることがほとんどです。

 

そのため結果的に「ワンオペ+アウェイ育児」という二重苦になってしまうことも少なくありません。

 

アウェイ育児、やはり7割以上が経験


今回、0歳から14歳のお子さんを持つママ・パパに独自にアンケートを取り、

 

「アウェイ育児という言葉を知っていますか?」

 

と聞いたところ、「知っている」と答えた人は15%程度。

 

ほとんどの人はアウェイ育児という言葉を知りませんでしたが、

 

「実家や地元から離れた知り合いのいない土地での育児を経験したことはありますか?」

 

という質問には63%の人が「はい」と答え、

 

「居住地は地元ですが親兄弟が遠くに引っ越して頼れません」

 

という人も含めると72%と、やはり先の調査と同じく7割以上の人が地元を離れて育児をしていたことが分かりました。

 

「アウェイ育児」には独特のつらさが…ママの体験談

アウェイ育児を経験したママたちの当時の状況や、どんな心境だったかを紹介します。

 

「どの産院が良いのかから始まり、産後もどこで何をしたら良いのか、最近ではどの幼稚園が良いのか、どうやったら生の情報が得られるのか…何をするにしても地域と繋がりがないため毎回悩んできました」(Aさん・35歳・4歳児と1歳児のママ)

 

「私の出産時にはまだ友人は独身ばかり。どうしても疎遠になり、妊娠中から産後しばらくは引きこもり気味でうつっぽくなりました。精神的にだいぶ追い詰められました…」(Tさん・32歳・3歳児のママ)

 

「妻の実家は東京ですが、現在は関西の私の実家近くに住んでいます。引っ越してきた当時は、仕事も育児も相談相手は夫の私と東京の友達だけで、たびたび辛い思いをしていたそうです。やはり、友達に会って相談したり飲みに行ったりして気分転換できるのは大きいですね。今は年1度の帰省時に思いっきり遊んでメンタル面の調整をしているそうですが、今後はもっと帰れるようにしていきたいです」(Hさん・36歳・6歳児と2歳児のパパ)

 

「近所にママ友ができたのはいいのですが、彼女は実家近くに住んでいるため、下の子の急な熱の時は実家に上の子を預けたり、子どもたちはばあばとお出かけだから今日は大掃除するの!と張り切っているのを見ると時々うらやましくなります」(Jさん・34歳・5歳児と1歳児のママ)

 

24時間(眠っている間でさえも)ずっと子どもの安全と健康にアンテナを張りめぐらせ、毎日の育児と家事のタスクをこなし、他人に迷惑をかけずにりっぱに子どもを育てる…という育児そのものの大変さはもちろんあるでしょう。

 

しかし、アウェイ育児の本当につらいところは「いざという時に頼る人がいない」という不安を抱えながら日々過ごすことにもあるのかもしれません。

 

また、

 

「転勤して、やっと知り合いができたと思ったら、また転勤…。3回目になると、もうママ友を作ろうというエネルギーもなくなりました。実家に孫の成長をこまめに見せたり、何かあった時に駆け付けても間に合わないんだろうな…という諦めを抱えて育児しています」(Kさん・30歳・3歳児のママ)

 

という声もありました。

 

子どもが生まれる前後の転勤を断ったことで退職に追い込まれるという、企業内の「パタハラ」が問題になりましたが、育児や家族のあり方から考えると、日本の転勤制度についても真剣に見直すべき時代になってきていると感じます。

 

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アウェイ育児の救世主、アンケート1位は…


育児のつらさは本当に人それぞれ。

 

夫婦の働き方、実家などの手助けの有無、赤ちゃんのタイプなど。

 

赤ちゃんはみんなが育児書どおりに育つわけではなく、ちゃんとお世話をしていても、ぐずりやすい子やなかなか寝ない子、よく泣く子など色々です。

 

もちろん赤ちゃんが悪いのでもお世話が悪いのでもなく、生まれつきの気質なのでどうすることもできません。

 

ですが、子育て経験のない相手だけでなく他のママにまで「ふつう〇〇だよ?」などと言われて、ますます落ち込むママもいます。

 

そこで、なんとかアウェイ育児のつらさを軽減したいと、次のように質問してみました。

 

「自分がアウェイ育児中だとしたら、何が一番うれしいですか?」

 

すると、結果は次のようになりました。

 

  • 配偶者が早く帰ってきたり、休みを取って育児に協力してくれる 66.7%
  • ママ友など交流できる相手ができる 25%
  • 託児所やベビーシッターさんの利用券がもらえる 8.3%

 

アウェイ育児の救世主 第1位:配偶者


「アウェイ育児でうれしいこと」として圧倒的に多かったのは、やはり「配偶者が早く帰ってきたり、休みを取って育児に協力してくれること」でした。

 

子どもは2人の間に生まれるもの。

 

2人で協力して育児するのは当然といえますし、特に、アウェイ育児では近所に気軽に相談や愚痴を言える相手もいないため、パートナーの存在は本当に大きなものになります。

 

そして、今回のアンケートで興味深かったのは次のようなパパの回答です。

 

「実家は離れていましたが、むしろ自分たちなりの育児ができて良かったと感じています。保育園のお迎えなどで実家の手助けを受けている家庭を見ると、正直ちょっとうらやましいこともありましたが…実家にいりびたりになることもなく、夫婦で力を合わせて家事育児をすることで”家族”になれたと思います」(Mさん・37歳・4歳の双子のパパ)

 

こんなパパなら、アウェイ育児も良い結果へとつながるのかもしれません。

 

アウェイ育児の救世主 第2位:ママ友


アウェイ先で新しい出会いを見つけようと気持ちを切り替えたママもいました。

 

「夫の両親と私の母がすでに他界、車で1時間半の実家の父にはたまに顔見せに行くくらい。近くに知人や友人はいますが、育児に協力してもらうような関係ではない。だから、知り合いのいない土地でも別に気にならないです。むしろ、これから育児を通じて知り合が増えるのを期待しています」(Yさん・29歳・0歳児のママ)

 

「最初は近くに祖父母がいる家庭がうらやましかったですが、同じ境遇で、活動的なお母さんがママ友仲間を集めてくれ、よく誰かの家に集合しているうちにママ友が増えました。地域の子育て支援主催の集まりにも積極的に参加していました」(Wさん・38歳・10歳と7歳のママ)

 

アウェイ育児の救世主 第3位:預かり保育やベビーシッターなど子どもをみてくれる人


児童館や支援センターでママ友を作るにも、その時の運もあり、いきなりはうまくいかないこともあります。

 

「児童館ではすでにグループができていて…一緒に遊びたそうに周りで見ているわが子に、入れてって言ってごらんと言ったのですが、いやよーと言い返されしょんぼり戻ってきました。ママたちはおしゃべりに夢中で頼みづらく…。溶け込めない私のせいで息子にも淋しい思いをさせてしまいました」(Nさん・30歳・3歳児と0歳児のママ)

 

「保育園の待機児童が多い地域なのですぐには働けず。夫以外の大人と話したい、せめてママ友ができれば…とわらをもすがる思いで児童館に行きましたが、家や夫の職業・お受験の有無などを聞き出してマウンティングに余念のないママたちにうんざり…もう心折れてしまいました」(Hさん・33歳・1歳児のママ)

 

いろいろな理由で児童館に足を運びにくいママにとっても、子どもと24時間離れられない状況はずっと続きます。

 

そんな時、ママが数時間1人で行動できるだけでもずいぶん家事がはかどりますし、歯医者や美容院に行くこともできます。

 

本来はパパが仕事を休めれば一番ですが、それが難しい時は一時保育を利用できれば助かりますね。

 

ただ、夫やママ友などから「なんで家にいるのに預けるの?」「贅沢では」などと言われて諦めたり、そもそも遠慮して言い出すことすらできないママも多くいます。

 

すべてのママが堂々と子どもを預けて歯医者や美容院に行けるのが当たり前の世の中になるのが一番ですが、残念ながら今すぐには難しいので、せめて検診費用と同じように、母子手帳に託児補助券などがついていればずいぶん利用しやすくなるのではないでしょうか。

 

託児のほかにも、ベビーシッターさんに自宅に来てもらったり、児童館への道中が心配なママのために付き添ってもらうなど、追い詰められたママのSOSをキャッチする方法はいくらあっても困ることはありません。

 

SNSでは、「育児が終わった女性と、ほんの少しだけ助けてほしいママのマッチングアプリができればいいのに」という声もありました。

 

本当にそんなアプリができれば、筆者も登録していつでも困っているママをお助けしたい気持ちでいっぱいです。

 

おわりに


実は、筆者自身、長女の妊娠中から生後半年頃までは完全なアウェイ育児でした。

 

さいわい支援センターや近所に同じ年齢の子がたくさんいたため、徐々にママ友ができて寂しさを感じることはなくなりましたが、それまでの間は本当に孤独で、「妊婦さんやママって、どこにいるんだろう…」とよく思っていました(笑)。

 

あとで知るところによれば、周囲には地元のママがほとんど。みんな実家や友人と過ごしていたのでしょう。

 

もし、あなたが地元に住む側の人で、支援センターや児童館で初めて見る親子がいたら、思いきって声をかけてみてはいかがでしょうか。きっと喜ばれると思います。

 

文/高谷みえこ

参考/NPO法人子育てひろば全国連絡協議会 http://kosodatehiroba.com/