妊婦さんと久しぶりに会った時、定番のあいさつのように言われる「お腹大きくなったね!」の言葉。
言う側は、妊娠の経過が順調で赤ちゃんがすくすく育っていることを喜ぶつもりで言っていることがほとんどだと思います。
しかし、妊婦さんの中には、「お腹大きいね」といわれて複雑な気持ちになる人もいるとか…?!
今回は、ママたちの体験談から、その時の状況や気持ちを振りかえり、どんな言葉をかけるのが最適なのか考えてみました。
妊娠中のお腹の大きさが人それぞれ違う理由
妊娠5ヶ月時点で子宮の大きさは大人の頭程度になるといわれ、この頃から、服の上からでもお腹がふくらんでいることが分かり始めます。
臨月になると子宮底長は平均33センチで、足元が見えないほどお腹が出てくる人がほとんど。
しかし、赤ちゃんや子宮の大きさと見た目上のママのお腹の大きさは必ずしも比例していないことも多く、個人差も大きいため、検診で指摘されない限り見た目の大小はあまり気にする必要はありません。
一般的に、見た目のお腹の大きさは次のような点で決まると考えられます。
妊娠後の体重増加
妊娠による体重増加が大きいと、当然お腹まわりにも皮下脂肪がつくため大きく見えるかもしれません。
もともとの体型
もともとふっくらした体型の人はお腹の変化が目立ちにくく、やせ型の人は少しお腹が出た時点でよく目立つでしょう。
また、身長が高いママは縦にスペースがあるためお腹が付き出しにくく、身長が低いママは前方にお腹が出る傾向があります。
骨盤の大きさ
骨盤が広ければ中にすっぽりと子宮が収まりますが、生まれつき骨盤の幅が狭ければ、若干お腹は前にせり出す傾向があります。
筋肉の付き方
スポーツや筋トレが習慣になっていた妊婦さんは、常に腹筋の力で内臓がおさえられているため、そうでない人と比べるとお腹が出にくいでしょう。
過去の妊娠回数
個人差はありますが、初産よりも2回目・3回目の妊娠の方がおなかの組織が伸びやすくなっているため、早期にお腹が出てくる人が多く見られます。
赤ちゃんの体の向き
おなかの赤ちゃんの体位には、頭を下にした「頭位」のほか、足が下の「骨盤位(いわゆる逆子)」や横向きの「横位」などがあります。
赤ちゃんの「横位」が続いている場合は、そのほかの体位と比べてお腹が前に出やすい傾向があります。
羊水の量
羊水の量にも個人差があり、多めならお腹もやや大きくなる傾向があります。
ママたちの「お腹大きいね」と言われた体験談
今回は、出産経験のあるママとパートナーが出産したパパを対象に「妊娠中、お腹が大きいと周囲から言われた経験はありますか?」とたずねてみました。
すると結果は、
- 言われたことがある…82%
- 言われなかった…18%
と、かなりの人が「お腹が大きいね」と言われた経験を持つことが分かりました。
しかし、誰から言われたのか・どんな意図だったのか・どう感じたのか…にはさまざまなパターンがあります。
そのいくつかを紹介しますね。
「2人目妊娠中、いま妊娠〇ヶ月だと伝えたら、お腹が大きすぎると思ったのかびっくりされた記憶があります。ただ、2人目はお腹の皮が伸びてるから大きくなりやすいとか、男の子は前に出るとか聞いていましたし、そもそも大きめな子だったので、特に不安になることもなかったです」(Jさん・33歳・3歳児と1歳児のママ)
「9カ月の時点で腹囲は100センチオーバー。会う人会う人に大きいと言われ続けました。運動不足じゃないかと言われたりも…。検診で骨盤が小さいと言われていたので、勝手に言えば?という感じで気にはしていませんでしたが」(Kさん・35歳・4歳児のママ)
「実家の母はあまりお腹が大きくならなかったようで、もしかして双子なんじゃないの?などと冗談まじりで何度か言われました。あまりしつこく言われるとイラっとしますが、気にしないようにしていました」(Aさん・30歳・2歳児のママ)
「自分でも明らかに大きいなと思っていたので、知り合いに会うとすぐに”あら、大きいわね~”といったことは言われていました。嫌な気持ちはせず、むしろねぎらってもらえている感じでうれしかったです」(Yさん・31歳・1歳児のママ)
「妊娠前から太っているのが気になっていて…当時、妊娠初期からしばらく会っていなかった友人に会った際に”大きくなったね~”と言われたときは、ようやく妊婦になれたようでホッとしました」(Eさん・37歳・7歳児と4歳児のママ)
「うちは双子だったので、同じ週数の妊婦さんと比べると実際にお腹は大きかったと思います。妻も買い物で会った知人に”大きいね”などと言われていましたが、特に気分を害する様子もありませんでした」(Fさん・36歳・2歳の双子のパパ)
モデルの高垣麗子さんも、第一子を妊娠中に自身のブログで「最近あまりにもお腹が大きいと言われることが多く…どこか経過がおかしいのかと不安になります」と心境を綴っていました。
アンケートでも、「うれしかった」「気にならなかった」という人が大部分でしたが、中には「あまり言われると心配になる」「言われたくないが、気にしないようにしていた」という人もいて、言う方は何気なくかけた言葉でも、色々な感じ方があることが分かります。
妊婦さんにはどう言葉をかけたらいいの?
妊娠中は赤ちゃんの発育や出産について不安を感じることが多く神経質になりがちだから、善意の言葉にも過敏に反応してしまうのでは?という意見も見られます。
しかし少し考えてみると、通常、相手の体型のことを話題にするのは失礼な行為。
また、妊婦さんのお腹をなでる人は多いですが、よく考えればいきなり他人のお腹をなでるのも非常識な行為といえます。
それを普通にやってしまうのは、「妊娠」という特別なシチュエーションがそうさせるのかもしれません。
例えば、外国人や芸能人・スポーツ選手・力士などを見ると、別世界の人間のように感じてしまうことはありませんか?
妊婦さんだって非妊娠時と同じ感性を持った人間で、妊娠・出産はプライベートなことだから話題にするのは恥ずかしいと感じる人も当然います。
しかし、お腹が出てきてゆっくり動く妊婦さんのいつもと違った姿を見ると、なんとなくその感覚がマヒしてしまう人もいるのではないでしょうか。
もちろん、腫れものに触るような扱いはイヤで、どんどんお腹のことや妊娠経過を話題にしてOKという妊婦さんもたくさんいます。
特に出産を経験した女性同士やママ友同士では、よりざっくばらんに話す機会が多いと思われます。
男性や出産経験のない女性の場合、自分自身がいつ頃どのくらいのお腹のサイズだったかという基準がないので、そうそう妊婦さんに向かって「お腹大きいね」とは言わないですし、お腹に触ったりしない人の方が多いでしょう。
しかし、妊娠経験がある女性は「自分はこうだったのに、彼女はずいぶんお腹が大きいわ」と比較してしまったり、経験者同士だから失礼に当たらないと感じて平気でお腹に触ったりするのではないでしょうか。
自分が過去にそれらの話題が気にならなかったとしても、相手も妊婦さんというだけで同じ感覚だと思い込んでしまうのは要注意かもしれません。
ある程度打ち解けた同士ならば、その人が妊娠の経過について進んで話したいのか、プライベートなこととして触れずにいてほしいのかは、会話を通じて分かってくると思います。
その段階になるまでは、
「もし彼女が妊娠していなかったら体型を話題にするか?お腹に触ったりするか?」
という基準で接するのが一番ではないでしょうか。
妊娠中の「お腹が大きい」まとめ
今回、先輩ママたちの体験談を聞いてみて、同じ「お腹大きくなったね」という言葉ひとつでも状況や感じ方は大きく違うことが分かり印象的でした。
妊婦さんへの声がけを必要以上に遠慮する必要はないですが、できるだけ安定した気持ちで出産を迎えてもらえるよう、「相手がいつも自分と同じ感覚とは限らない」ということは忘れずにいたいですね。
文/高谷みえこ