大人になってからインターネットやスマホ・SNSなどが登場した世代と異なり、幼少期からそれらが身の回りにあるのが当たり前の世代を指して「デジタル・ネイティブ」と呼ぶことがあります。
令和の時代を生きる子どもたちはもちろん、ママやパパ世代、あるいは職場の同僚・後輩から、子どもの担任の先生まで…今後増えていく「デジタルネイティブ」世代について、意味や特徴・問題点・子どもたちの将来に予想されることなどを解説します。
「デジタルネイティブ」世代とは何年生まれから?ママ・パパも該当するかも
現在、「デジタルネイティブ」といえば、生まれた時または物心ついた時から、生活の中にインターネットやパソコン・スマートフォンなどのIT技術が当たり前に存在していた世代の人々を指します。
日本で使われるようになったのは2007~2008年頃、アメリカの作家マーク・プレンスキー(Marc Prensky)が、書籍『テレビゲーム教育論――ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから』(東京電機大学出版局)で、上記のような若者たちを「デジタルネイティブ (Digital Natives)」と呼んだのが始まりです。
その後、企業向けのIT研修や講演会などで「これからはインターネットに慣れ親しんだ若者たちが社会を動かし、商品やサービスを開発していくはず。企業はそれを念頭におかなければならない」として「デジタルネイティブ」という言葉が頻繁に使われ定着していきました。
ちなみに「デジタル・ネイティブ」の反対語は「デジタルイミグラント (Digital Immigrants) 」だそう。イミグラントは「移民・移住者」という意味で、それまでのインターネットのない世界から移り住んできた人たち=1980年以前に生まれた人々をさしています。
ただし、何年生まれからを「デジタルネイティブ」と呼ぶかについては諸説があり、パソコンが普及しITで起業する人々が現れ始めた1970年代前半生まれからが該当するという説や、物心ついたときにはすでにスマホが普及していた2000年生まれからだとする説もあります。
もちろん、CHANTO世代のお子さんたちは全員がデジタルネイティブであることは間違いありません。
そして、1980年代前半生まれもデジタルネイティブとするなら、2019年現在では30代後半。すっかりママ・パパとなっている人も多い世代です。
「デジタルネイティブ」の特徴とは
デジタルネイティブ世代の特徴として、過去には「電話よりもメールやメッセージアプリで連絡を取る」「知りたいことがあれば図書館へ行くかわりにインターネットで検索する」などが言われていましたが、2019年現在、そういった行動もそろそろ全世代で一般的になりつつあります。
かわって現在、自分のスマホを持ち始める年齢としてもっとも多いのは小学校高学年から中学生ですが、彼らが成長する過程で特徴的なのは次のような点だと言われています。
- リアルで会う前に、SNSで人間関係を構築する
- SNSの「いいね」数など、目に見える形での承認欲求が高い
- 知りたいことはSNSを使い分けて検索する
- モノを買うとき、企業広告ではなくSNSでの口コミや動画をチェックする
以上から分かるように、かつてデジタルネイティブの特徴といわれていた「息をするようにIT機器を使う」ことだけでなく、人間関係からショッピングまで生活のあらゆる場面で「SNS」の重要度が非常に高くなっていることが見てとれます。
「デジタルネイティブ」世代、就職や仕事に問題はない?
幼少期からIT技術に慣れ親しみ、世界中の情報にいつでも触れることができるデジタルネイティブ世代。
そんな子どもたちが成長し就職した後は国際社会で活躍できそうに思いますが、デジタルネイティブ世代が社会に出始めたここ数年で、この世代特有といわれる問題点も挙がってきています。
リアルで質問や意見が言えない
デジタルネイティブ世代はコミュニケーションをSNS優先で行うことに慣れているため、オンラインでは頻繁かつ親密にやりとりできる反面、SNSでつながっていない相手に話しかけるのをためらいがちになります。
職場でわからないことがあっても「今話しかけたら迷惑かも」「みんなの前で質問して、そんなこともわからないのかと思われたら恥ずかしい」などの理由で上司に質問できず、結果、納期に間に合わない、書類が間違っているなどの問題が起きているといいます。
また、欠勤や電車が遅れて遅刻する時などの連絡をSNSで済ませる部下に対して「非常識だ」と怒る上司の声も時々耳にします。
最近は「欠席連絡はスマホから」という塾や学校も増えていますが、子どもが小さいうちから、伝わったかどうか確認できない連絡方法にはリスクがあるということも伝えていきたいですね。
承認されないとやる気を失う
デジタルネイティブ世代は、早ければ小学生のうちから自分の意見や日常をインターネットで発信し、それに対する「いいね」やコメントをもらって承認欲求を満たしています。
仕事で成果を出した時、はっきり口に出してほめるタイプの上司と、淡々と次の業務に進んでいくタイプの上司がいますが、デジタルネイティブ世代ではあまりにも声をかけてもらえないとやる気が起きず、意欲を失ってしまう…という人が上の世代と比べて多いといわれます。
「ほめられないとできない」のは困りますが、ほめること自体はとても大切ですばらしいこと。
「このくらいでほめていたら調子に乗るのでは?」「ほめるなんて気恥ずかしい…」といった固定観念を捨てて素直にほめる姿勢は、親や上司の側でも身につけたいですね。
「探す」作業は得意だが、ゼロから考える作業が苦手
デジタルネイティブ世代は、「聞きなれない言葉の意味」「比較して安く購入する方法」「何かを作成するときの手順」など、検索エンジンや各SNSを使い分けてリサーチするのは大変得意だといわれます。
一方、何もないところから何かを作れといわれると困ってしまうことも。
そのほかの問題・課題として、かつてはパソコンで行っていた表計算なども今はタブレットやスマホアプリで行えるため、新入社員がパソコンやキーボードの使い方が分からない…という老若の逆転現象も起こっているそうです。
おわりに
CHANTO世代のママやパパにとっては、デジタルネイティブ世代のわが子と比較的感覚が近く、むしろ職場の上司や祖父母世代とのギャップを感じる…という人も多いのではないでしょうか。
この記事が感じ方の違いを理解する参考になれば幸いです。
また、中学校入学前後にスマホを使い始める子も多いですが、SNSでのコミュニケーションも、やはり小さい頃から家族や友だちと直接接する上で育んできた、どのような受け答えなら気持ちよくやり取りできるのか・相手は今どのような気持ちなのか…を思いやる力がベースとなります。
世の中で言われる「デジタルネイティブ」世代の特徴は、ある程度共通しているとはいえ、あくまでも傾向。
育児では「世代だから」と決めつけず、1人1人の性格や個性としっかり向き合って接していきたいですね。
文/高谷みえこ
参照/書籍『テレビゲーム教育論――ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから』マーク・プレンスキー著/ 藤本 徹 訳 東京電機大学出版局