「ママ~、〇〇くんが叩いた!」 「△△くんのお母さん、△△くんが順番抜かしするの」 「ママ、幼稚園の◇◇くんてね、お弁当の前に手を洗わないんだよ!」 「先生、AさんとBさんが廊下を走りました」
自分の親、友だちの親、先生…子どもが身近な大人にまわりの子の行動を訴えにくるのは珍しいことではありません。
でも、たまにならともかく毎日のように言いにこられると、内心「またか…」と思ってしまうこともありますよね。
子どもの報告は内容が偏っていたり間違っていたりする可能性もあるので、鵜呑みにしてわが子や相手の子を叱っていいものかどうかも迷います。
今回は、年齢ごとの「告げ口」の背景にある子どもの心理や「告げ口」で困った時におすすめの対応などを紹介します。
保育園、幼稚園、小学校…年齢別の「告げ口」事情
「告げ口」「言いつける」は、辞書で調べると「人の秘密や失敗などをこっそり他人に告げること/密告」とされています。
子どもの告げ口は、本人の目の前でも大声で言ってしまうことも多いので、必ずしも「密告」とは言えませんが、わが子のことを言われると、もし事実なら注意・指導しなければ…と焦ってしまいますよね。
まずは年齢別に、よくある「告げ口」のパターンをみていきましょう。
幼稚園でよくある告げ口とは
「幼稚園のお迎えに行くと、毎日のようにうちの子が叱られたとか叩いてきた等と言いにくるクラスの子がいて…そんなに悪いことばかりしているのかと驚いて先生に聞くと、他の子と変わらないとのこと。毎日困っています」
と嘆いているNさん(34歳・4歳の男の子のママ)。
また、Sさん(31歳・3歳の女の子と1歳の男の子のママ)も次のように思っています。
「娘が園でよく遊ぶAちゃんは、親子で家に来てもらうことも多いのですが、しょっちゅう”おもちゃ貸してくれない””バカって言った”と私に言いつけにきます。そっと様子を見ていると、お互い様というシーンも多いのですが、相手のママさんの手前否定もできず、けっきょく娘に言い聞かせる形にばかりなっていて、ちょっとモヤモヤ…」
幼稚園では、お迎えや帰宅後に家に親子で遊びに行くなど、子ども同士で遊ぶ時に親が居合わせる機会が非常に多いです。
バス通園では必ずしもその限りではありませんが、徒歩圏内の子が多く通う公立幼稚園では、この幼稚園特有の環境から、ママが「告げ口」で困る場面が発生しやすいといえます。
保育園での告げ口事情はどうなっている?
保育園でももちろん「〇〇くんがたたいた~!」ということは日常茶飯事ですが、保育士さんはその点さすがにプロ。
親子の場合は、どうしても必要以上にわが子を厳しく叱ったり、反対に「そのくらいで…」と肩を持ってしまったりしますが、保育士さんなら双方に公平な態度で接してくれますし、なぜそうなったのか、どうすればいいのかを子どもに考えさせてくれるでしょう。
そのおかげか、「告げ口」にまつわるお悩みを持つママは、幼稚園と比べると少ない印象です。
小学校でよくある告げ口とは
小学校になると、自分または相手の子の親に言いつけるのにかわって、担任の先生への「告げ口」が増えてきます。
低学年では特に「困った時は先生に相談しなさい」とわが子に伝えているママも多いと思いますし、先生も困りごとは1人で悩まず教えてほしいと思っていますので、何かあった時に言いに行くこと自体は問題ありません。
ただ、ルールを守らないクラスメイトの行動が許せずに、細かいことでも逐一報告しに行く、自分のわがままを通すために「先生に言うぞ」とおどす…そんな「告げ口」は、子ども同士の関係悪化が心配ですね。
子どもが告げ口する・言いつける時の心理
同じように遊んでいても、ほとんどまわりを気にしない子もいれば、周囲を良く見ている子もいます。
「告げ口」は後者の子に多い行動ですが、その時の子どもの心理とはどんなものでしょうか。
考えられるものをいくつかあげてみました。
- 状況を客観的に見られず、自分がされたことだけを記憶している
- 正義感が強すぎて、他の子のルール違反を放っておけない
- 報告することで役に立ちたい、ほめてほしい
- ちゃんとルールを守る自分をほめてほしい
- ただなぐさめてほしい
- とにかく大人に何か反応してほしい
- 手っ取り早くもめごとの相手より優位に立ちたい
- わが家のルールと世間のルールの違いを確認したい
- 発達面で課題があり、状況に応じてOKとNGを判断するのが苦手
すぐ告げ口する子にはどう話す?
「告げ口」にはいくつかのパターンがあります。
状況別に、どのような対応がベストなのか考えてみたいと思います。
子ども同士のもめごとを言いにくる子には
ママたちはお茶、子どもたちは部屋で遊んでいる…はずなのに、すぐに「ママ―、〇〇君が押してきた」「おもちゃの順番かわってくれない」と言いにくる子もいます。
一緒にいる時なら、お互いさまの状況なのか、どちらかに注意すべきなのか、およそ判断がつきますが、言いつけにくるということはママはその場を見ていないことがほとんど。
わが子の場合でも、他の子の場合でも、まずは「そうなんだ、嫌だったね」と共感してあげたいですね。
何か伝えるべき点があったとしても、まず気持ちを聞いてあげてからの方が入りやすいものです。
「一緒に行ってあげるから、もう1回貸してって言ってみよう」「やめてって言ってみよう」などと声をかけてあげるとうまく行くことも多いです。
「叩かれた」などの場合は、まずは優しく「だいじょうぶ?ケガしなかった?」と確認しましょう。
実際にはケガをしていることはめったにないものですが、念のため確認する目的もあります。
しかし一番の効果としては、ほとんどの子はそう言われると安心して「うん、大丈夫」とにっこりすることが多いです。
なお、普段は何も言わない子がもめごとを訴えてきた場合は、本当に困っていたり、よほど嫌な目にあっていたりする可能性もあります。
成長に合わせ、もめごとは子ども同士で解決させるのを目指すべきですが、いきなりそうしてしまうと気の強い子や口の立つ子が一方的に相手を言い負かしたり、暴力で押さえつけることにもなりかねません。
ちょっとヘンだなと思ったら、そっと様子を見た上で、必要に応じて手助けしてあげましょう。
他人の失敗を報告してくる子には
「今日、Aくんね、お庭の花を勝手にちぎって先生に怒られたんだよ」など、園のお迎え時、その子の親に意気揚々と伝えにくる子がいます。
また、「Bちゃんはちゃんと座っておやつ食べないの」等と自分のママに報告する子もいます。
この場合、「Aくんいけないね!」と一緒になって非難したり、「Bちゃんはできないのにあなたはちゃんと座れてえらいね」と比較してほめるのもあまりおすすめできません。
「そうなんだ、お母さんからもAとおはなししてみるね」 「そうか、Bちゃん、こんどは上手にできるといいね」
程度にとどめておく方がいいでしょう。
また先輩ママによると、毎回誰かが叱られたことを告げ口してくる子には、「今度はAくんのほめられたお話も聞いてみたいな!楽しくなるから」という返事も有効だったそうですよ。
小学校で先生への告げ口が気になる時は
小学校でも、何かあった時にはまず本人に直接言うことが望ましいと考えられています。
なかには、「本人に3回言ってダメなら先生に言う」というルールの担任もいるそうです。
おとなしいタイプの子には難しいかもしれませんが、中学校でも、自分の思いを口に出せることは大切なスキルですので、少しずつ練習できるよう声をかけていきましょう。
おわりに
何かあった時にすぐに大人に言う子・言わない子と個人差はありますが、どちらにしても、それは成長の過程の1つ。
ほとんどの場合、適切な対応をしていれば、告げ口ばかりする時期は一過性で過ぎ去るといわれています。
今回の記事も参考に、わが子にも他の子にもそれぞれ色々な思いがあることをふまえて、温かく見守っていきたいですね。
文/高谷みえこ