中学校や高校で以前から度々存在が取り上げられる「スクールカースト」。 今や小学校にも存在するという話を聞いて、実際のところはどうなのか、小学校に通うお子さんのいるママやパパに話を聞かせてもらいました。

 

スクールカーストでいわゆる「一軍」「下位」と呼ばれる子どもたちの意外な素顔や、スクールカーストに属さず過ごすことは可能なのか?についても考えてみます。

 

スクールカーストとは?意味と現状


「スクールカースト」とは、もともとアメリカのハイスクールで使われていた言葉。

 

人種による差別や貧富の差が激しいアメリカの学校では、アメフトやチアリーダーのチームに所属する裕福な家庭の生徒から、経済的に苦しく成績やファッションもパッとしない生徒まで、似た環境の子たちが階層ごとに序列化された状態になることが多く、これをヒンドゥー教の身分制度「カースト」になぞらえたものです。

 

日本でも2000年頃から「スクールカースト」という言葉が使われ始め、いじめの一因として問題になりましたが、携帯電話やスマートフォンが普及しSNSやメッセージアプリを使う子が増えるとともに、ますます「スクールカースト」は広がっている様相です。

 

中学校や高校では、新学期になるといつの間にかクラス全員がヒエラルキー内に振り分けられ、スポーツが得意な子や容姿のいい子、おしゃべりが上手で発言力の強い子などが「一軍」と呼ばれるようになります。

 

一方で、おとなしい子やコミュニケーションが苦手な子、見た目が地味な子などは「三軍」「下位」「陰キャ」などと呼ばれ、クラスで何かを決める時には、おおよそ「一軍」と呼ばれる子たちの意見が通ります。

 

本来は、同級生のあいだに上下関係があるはずはないのですが、学校という閉ざされた空間では、ぱっと目につくような能力や得意不得意の個人差が、そのまま力関係として機能してしまうことがしばしば起こります。

 

スクールカーストは小学校にもある!?「一軍」ママの証言

こういった人間関係の格差は中学校以上で顕著ですが、最近では「小学校にもスクールカーストがある」という話を聞き、現在小学生のお子さんや、小学校を卒業したお子さんを持つママに話を聞かせてもらいました。

 

Hさん(5年生の女の子と2年生の男の子のママ)は、 「高学年ではスクールカーストができつつある」と話します。

 

「5年生の長女のクラスでは、発育がよくて大人びた女の子数人が、音楽会の内容だとか宿泊研修の班分けなどを仕切って決めるそうです。表面上は多数決とはいえ、おとなしい子たちは彼女たちに”忖度”して、反対意見は言えないみたいですね」

 

それに対し、お子さんはどう感じているのでしょうか?

 

「娘は小さい時から人前に出るのが苦手で、行事では彼女たちの働きに助けられている面もあるので、ほぼ従っているみたいですね。自分の意見も取り入れてほしいと思うことはあるでしょうけど…」

 

小学校2年生の息子さんのクラスではどうでしょうか?

 

「2年生ではまだ全然です!そもそも、息子はたぶんクラスの全体像や誰がどんな子かも分かっていなくて、仲のいい子数人と、日々自分の興味関心のあるボール遊びや虫取りができればいいという感じです。女の子はまた違うのかもしれませんけど」

 

続いて、6年生の男の子と高校生の女の子がいるSさんに話を聞かせてもらいました。

 

「長男は6年生ですが、息子を見ている限りではスクールカーストというのがあるのかないのかよく分かりません。遊び相手も日によってバラバラですし…。担任の先生は、まんべんなくみんなに話しかけ意見を聞いてくれるので、クラスの雰囲気はよさそうです」

 

高校生のお姉ちゃんはどうですか?

 

「長女はわりとクールなタイプで、小学校から続けている陸上がいつも最優先。それ以外ではあまり勝ち負けを気にしないので、スクールカースト的なことで悩んでいる様子は見たことがないですね。でも、もしあったとしても、よほどのことでないと親には言わないと思います」

 

最後に小学校4年生と中学校1年生の姉妹のママJさんにもお話を聞いてみました。

 

「スクールカースト、長女のクラスにもありますよ」

 

Jさんは、同じマンションで長女の幼なじみAちゃんのママと仲が良いので、Aちゃん経由でも学校の様子がよく伝わってくるそう。

 

「人づてに聞いたところでは、娘はいわゆる一軍らしいんです。たしかに活発で男女とも友人は多いですが…でもドラマで見るような、地味な子をみんなでいじめたり、使い走りをさせたりということはないと思います。どちらかというと苦労しているのでは」

 

とのこと。

 

「クラス委員なので、文化祭の内容は全員の意見を聞きたいと用紙を配ったものの、出してくれない子が何人かいて…ていねいに聞いてみたらしいのですが、陰で文句を言われたと嘆いていました。先生もよく動く子にまかせっきりで。家で夜遅くまで作業していたり、親から見ていても大変そうです」

 

いっぽう4年生の妹さんについては、

 

「小さい頃から行動が遅めでぽっちゃりしているためか、よくからかわれていました。これからいよいよ高学年になり、女子は特に難しい年頃。優しくていい子なのに、三軍だとか言われるのでしょうか…」

 

とため息をついていました。

 

スクールカーストに属さないことは可能?

どこの学校にでもあると思われる「スクールカースト」ですが、ママたちの話を聞いていると、スクールカーストに属さず、かといって仲間外れにされるわけでもなく、マイペースで生きている子も一定数いるようです。

 

中学3年生と小学6年生の兄弟のママUさんによると、

 

「次男のクラスでは、女子の中で、ファッションやアイドル好きで派手なグループと、そこになんとか入りたいけど入れてもらえない(らしい)子が数人、自己主張せず穏便に過ごしたい子たちのグループなど、分かりやすいカーストがあるようです。でも、特にどこにも属さず、楽しそうに誰とでも話す女の子がいて、男女ともに人気だとか…というか、次男もその子が気になっているのでしょうね(笑)」

 

また上のお子さんも、強豪といわれる中学校の部活でレギュラーをつとめ、バレンタインにはチョコレートをいくつももらってくるとのことで、いわゆる「一軍」だと思われますが、

 

「小学校時代から付き合いのあるBくんは、物静かでクラスでポツンとしていることもあるそうですが、不思議とウマが合うようで、夏休みには一緒に遊びに行っていましたし、誰のことも1対1で見ているから特定の仲間だけを階層に分ける…といった発想はないと思いますね」

 

と、自分の価値観がしっかりとある子は、「スクールカースト」を意識せずとも充実して過ごせていることが見てとれます。

 

人からどう見られるか、集団の中でどう立ち回るか…は、社会的生活を送るうえで避けては通れませんが、それだけにとらわれると、窮屈で生きにくくなってしまうのかもしれませんね。

 

おわりに


たとえば教室の窓に飛んできた小鳥が、クラスの子どもたちを見て「あの子は1軍、この子は2軍、その子は3軍…」と分類することはありません。

 

つまり、「スクールカースト」とは生まれつき定められたものでもなければ生物学的な基準があるものでもなく、あくまでも、見る側の人間の価値観で決めているものだといえます。

 

しかし、同年代の固定された人間関係が1年間続く学校のクラスでは、いつのまにかそれを絶対的な価値観だとみんなが思い込んでしまいがち。

 

役割が固定された環境は、「下位」と見なされている子だけでなく、「上位」とされている子にとってさえ、実は息苦しく可能性が閉ざされた状態ではないでしょうか。

 

子育てをする親としては、小さい時から折にふれ「人間にはもともと上下などなく、みんな自分だけのいいところがあるんだよ」「価値観はいくつもあるんだよ」と話し、広い視野でものごとを見られるように伝えていきたいですね。

 

文/高谷みえこ