妊娠中、赤ちゃんは順調に成長しているものの、ママは身体のあちこちに今までなかったような不調やトラブルが表れてくることがあります。
すぐさま治療や処置が必要ではなくとも、地味に長期間つらい思いをする「妊娠中のマイナートラブル」について、妊娠初期~中期~後期から出産後まで、原因と症状をまとめました。
ママたちのマイナートラブル体験談や、妊娠中に工夫していたことも紹介します。
妊娠初期のマイナートラブルで多いのは
妊娠初期に苦しむこと…といえば代表的なのが「つわり」ですが、それ以外にも、妊娠初期からあらわれてくる身体の変化としては次のようなものがあげられます。
妊娠初期に多いマイナートラブル1|便秘・痔
妊娠すると、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増え、腸をはじめとした消化器官の活動が鈍くなります。
便が固くなることやいきみによって肛門周囲の静脈がうっ血し、痔もできやすくなります。
対策としては
- 水分をしっかりとる
- 排便時にはできるだけいきまないようにする
- 横向きで寝る
- 温水シャワートイレを利用する
などが挙げられます。
先輩ママからは、 「食事や運動などいろいろ試しましたが、一時的に解消したもののすぐに悪化…産院で相談し、最後はお薬を処方してもらいました」 などの体験談も寄せられています。
妊娠初期に多いマイナートラブル2|眠気
子宮や胎児の状態が不安定で、つわりのため栄養バランスもとりにくい妊娠初期には、できるだけ安静に過ごせるように自然と眠くなるといわれています。
でも会社勤めではなかなか好きな時に眠ることは難しいですよね。
「昼休みは、更衣室に毛布を置かせてもらい、仮眠を取っていました」
「妊娠中は夫と自分のお弁当作りを休んで、朝の睡眠時間を長めにとれるようにしていました。中期からは夫が作ってくれたこともありますよ」
などの働くママの工夫も。
妊娠中期のマイナートラブルで多いのは
そろそろ胎動を感じ始める妊娠中期は、つわりが一段落し安定期に入ってホッとする一方で、出産に向けての身体の変化が本格的に始まり戸惑う人も。
中期には、引き続きホルモン変化の影響で以下のようなマイナートラブルも増えてきます。
妊娠中期に多いマイナートラブル1|乳房や乳首の変化
妊娠中期には乳房が張って大きくなったり形が変わってくるほか、以下のような乳首の変化も多く見られます。
- チクチクする/ひりひりする
- 敏感になる
- 脂っぽくなる
- 液体が分泌される
妊娠22週目頃から、乳房内では母乳を作る準備が始まるため、母乳の前駆物質ともいえる液体がにじんでくることもあります。
脂っぽくなるのは乳首を保護するための皮脂の一種だといいます。ゴシゴシ洗いすぎずにそっと泡で汚れを落とす程度にとどめましょう。
妊娠中期に多いマイナートラブル2|肌の変化・かゆみ
妊娠中は、シミ・ソバカスが増えやすくなったり、ホクロが大きくなったり、もともと身体の中で色素の濃い箇所(脇・乳首や乳輪・正中線など)がより黒ずんでくることがあります。
妊娠中に増えるホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が、シミ・ソバカスや黒ずみのもととなるメラニン色素を作り出す「メラノサイト」を活性化させることが原因だそう。
また妊娠中には皮膚が敏感になるところへ、基礎代謝もアップし汗の量も増えることから、かゆみを感じる人も少なくありません。
全身に発疹が現れ強いかゆみを伴う「妊娠性瘙痒性丘疹」に苦しむ妊婦さんもいます。
通常は出産と同時におさまるといいますが、中には産後半年近く残ってしまう場合も。
妊娠中期に多いマイナートラブル3|足がつる・こむら返り
今回のアンケートではちょうど半数のママが妊娠中のマイナートラブルとして「足がつる」を挙げていました。
「足がつるのがひどくて、毎晩ベットで寝るのが怖かったです。一時は寝返りを打つたびに足がつっていた記憶が…」(Yさん・31歳)
「足がつる時は電解質を補給するといいと聞いて、寝る前にスポーツドリンクを飲んで備えていました」(Eさん・34歳)
と、夜寝るときや朝起きるときに足がつるのが恐怖だったという声が多数寄せられています。
妊娠中に足がつる原因やこむら返りの予防法については、以下の記事も参考にしてみて下さい。
<あわせて読みたい人気記事>
https://chanto.jp.net/childbirth/%e5%a6%8a%e5%a8%a0%e4%b8%ad/51731/
妊娠中期に多いマイナートラブル4|虫歯の悪化
妊娠中期に歯の痛みを感じて受診したら、虫歯ができていた・悪化していたということもよくあります。
これは、妊娠中は抵抗力や免疫力が低下して虫歯の原因菌の活動が盛んになることや、妊娠初期につわりで歯磨きができなくなったことでじわじわと虫歯が進行してしまうことが理由とも言われています。
進行した虫歯は治療完了までに2~3か月かかることもあります。
妊娠初期はつわりで口を開けての治療は難しいですし、産後は忙しくなかなか治療に通えません。
後期になると診察台に上がるのも難しくなるため、虫歯の治療は中期までに済ませておくのがおすすめです。
妊婦向けの無料歯科検診の券を配布している自治体も多いので、母子手帳を受け取るときに確認してみましょう。
妊娠後期のマイナートラブルで多いのは
いよいよお産が近づいてくると、大きくなったお腹がさまざまなところへ影響を与えます。
妊娠後期に多いマイナートラブル1|腰痛・股関節痛・坐骨神経痛
妊娠後期には、ますます大きくなるお腹を支えるためどうしても後ろに反った姿勢になり、腰痛に苦しむ妊婦さんが増えます。
また、出産に備えて骨盤が開いてくるため、股関節痛や坐骨神経痛を感じることも。
腰痛は「ベルトで支えると多少マシになった」という先輩ママも複数いました。
また、 「産婦人科で相談した時はよくあることだと言われましたが、だんだん歩けないくらいになってきたので、整体院に行きハリなどでバランスを整えてもらってお産に挑みました」
というママや、逆に 「妊娠中であることを電話で伝えて整形外科を受診したのに、結局何もできないといわれた…最初から産婦人科で相談すべきだった」 という人もいます。
腰痛を抱えてのお産に不安が残る場合は、親身になってくれるところを探して相談するのが一番かもしれません。
妊娠後期に多いマイナートラブル2|むくみ・静脈瘤
妊娠中は血液の循環が盛んになり、血中の水分も多くなります。その結果、全身にむくみによるトラブルがあらわれてきます。
足のむくみについては次のような体験談と対処法が。
「足がよくむくんでいたので、着圧ソックスを毎日はいていました。これがないと、足が象のようになった記憶があります」
「寝る時に枕を足元に置いて高くして寝ていました」
「むくみで足首が消えてビックリしました。履いていた靴も履けなくなったので、靴をわざわざ買いました」
足など外から見て分かる部分だけでなく、むくみは身体の内部にも起こります。
鼻の粘膜もむくんだ状態になるため、鼻づまりや鼻炎が悪化する人や、気道が狭まっていびきをかくようになる人も。
妊娠後期に多いマイナートラブル3|貧血・めまい・立ちくらみ
妊娠30週を過ぎると、体内をめぐる血液の量は妊娠前と比べて30~40%も増加するといわれ、このために血液中の赤血球が不足がちになります。
またママの体内の鉄分がお腹の赤ちゃんへ優先的に送られるため、「鉄欠乏性貧血」になる妊婦さんは少なくありません。
鉄分や酸素不足を補おうと心臓の活動も盛んになるため、動悸・息切れやめまいも起こりやすくなります。
「産婦人科の病院の前で倒れました。病院の前だったためすぐに対処してもらえて助かりました」(Fさん・30歳)
などひやりとする話も。
「貧血がひどかったのですが、週に2、3回会社にたどり着くことができず、何度も途中下車して休憩していました。さすがに仕事にも影響が出るので、有料車両に乗ることに。1ヶ月3万円ほど飛んでいきました」(Kさん・29歳)
満員電車はただでさえ辛いのに、働く妊婦さんには過酷な環境といえます。
貧血の度合いが強い場合は病院で相談するとともに、可能であればリモートワークや時差通勤などの制度を利用できると良いですね。
妊娠後期に多いマイナートラブル4|おりものの増加
出産が近づくとおりものの量が増えてくることもあり、デリケートゾーンのかゆみなどが出てくる人もいます。
量がとても多い、血液混じりなど、おりものの状態がいつもと違うと思ったら、出産が近づいている兆候の「おしるし」の可能性もあるので病院へ連絡しましょう。
その他にも、妊娠中のマイナートラブルについては、以下のような体験談や工夫が寄せられています。
「臨月には大きくなった子宮で胃が圧迫され、第2のつわりのような状態に。いつも胸やけがするので受診したら、逆流性食道炎といわれました。食後や歯磨き時に吐いてしまうことが増えたため、いっきにたくさん食べないようにしたり、食べた後すぐに横にならないように気をつけていました」(Hさん・28歳)
「眠れないことが辛かったです。寝る姿勢に気をつけたり、”眠らないと”と、自分で自分を追い詰めないようにしていました」(Oさん・32歳)
「とにかく寝るときに足の裏がむずむずしてしまい、寝付けない程でした。 イライラするし、むずむずの感覚が気持ち悪いのに、何をしても良くならず発狂しそうでした…」(Mさん・27歳)
「普段からトイレは行けるときに行っておくタイプで回数が多かったのですが、妊娠中はホントにしょっちゅうトイレに行ってました。外出時など、トイレから出た5分後にまたトイレに行ったことも。確かに頻尿でしたが、心配し過ぎもあったのかも」(Sさん・33歳)
「不調が出たときは、雑誌やネットの情報をうのみにせず、自分が取り入れようと思ったことは産婦人科の先生に相談してから取り入れるように注意していました。また、ネガティブになりがちだったため気分が落ち込むときには、これは妊娠しているせいであって、自分の性格がひねくれているわけではないと切り替えるようにして、無駄に落ち込まないようにしていました」(Mさん・34歳)
産後のマイナートラブルで多いのは
出産が終われば、妊娠中のさまざまなトラブルともサヨナラできる…と思いきや、産後にもマイナートラブルは存在します。 代表的なのは次のようなもの。
出産後に多いマイナートラブル1|痔
妊娠中や産後の便秘、出産時のいきみなどがきっかけで、腫れた部分が外に出てしまう痔の症状で苦しむ人も。
出産でうっ血したりむくんだ状態になっている患部の腫れが引けば、塗り薬等で軽快することも多いですが、どうしても戻らない場合は手術も選択肢に入ってきます。
妊娠後期に多いマイナートラブル2|尿漏れ・便漏れ
10か月近い妊娠期と出産時を経て「骨盤底筋」と呼ばれる筋肉がゆるんでしまい、立ち上がったり少しお腹に力がかかると尿が漏れてしまうことがあります。
産院で元に戻すための「産褥体操」を教えてもらえることもありますが、本やインターネットでもやり方を解説したサイトが見つかるので、コツコツ続けていきましょう。
また、出産時には、肛門括約筋や周囲の神経がダメージを受けるため、一時的に感覚がマヒしたように感じられることは珍しくありません。
ただ、産後1か月以上経っても感覚が戻らず、便の漏れがあるような場合は、早期に診察と治療が必要と考えられています。
おわりに
妊娠出産そのものだけでも命がけの大仕事なのに、これだけのマイナートラブルとも付き合わなくてはならないママは本当に偉大ですね…。
初めての妊娠では、かなり症状が重くても「こういうもの」と思って我慢してしまうこともあるかもしれません。
実際、妊婦検診や実母・先輩ママなどに今回紹介したような症状を相談しても「妊娠中にはよくあること」と言われ、自分で工夫して乗り切っていたママも多かったようです。
しかし、妊娠経過の異常が疑われるトラブルに関しては別。筆者の通っていた産院でも「夜中でもすぐに連絡して下さいね」といつも言われていました。
また、妊娠前と同じ感覚で仕事などで無理を重ねているとこういったマイナートラブルも重くなりがち。少しペースを落とせる部分を見つけて、ママにも赤ちゃんにも負担がかかりすぎていないか見直すことも大切です。
マイナートラブルは誰にでも起こるものですが、今回の記事も参考に、必要な対応がとれるような知識を持っておきたいですね。
文/高谷みえこ