「マイペースな子」「マイペースな人」と聞いて、あなたはどんな印象を受けますか?
「のんびり」「個性的」など、さほど悪くない意味から「行動が遅くイライラする」「協調性がない」といった批判的な意味まで、ひとことで「マイペース」と言ってもさまざまな捉え方があると思います。
今回は、わが子がマイペースだと感じているママ・パパへのアンケートを元に、マイペースな子の特徴や、良いところと悪いところ、将来向いている仕事は何か…などを考えていきたいと思います。
「マイペース」とはどんな性格?やっぱり短所?
そもそも「マイペース」とはどんな人のことを言うのでしょうか。
マイペースは和製英語ですが、直訳してみると「自分のペース(歩調)」ですよね。
赤ちゃん・幼児から小学校低学年頃までの子育てでは、何事も他の子と比べず、その子のペースに合わせる方がうまく行くことが多いもの。
しかし子どもたちも成長するにつれ、部活や受験など、競争に勝つことや成果を求められる場面が増えてきます。
その時に、周囲を気にせず自分流のやり方を貫く「マイペースな子」は不利なのではないか…そう心配になるママ・パパもいるかと思います。
また、大人になって職場や友人に「マイペースだね」と言われたら、ほめ言葉なのか、けなしているのか微妙な気持ちになってしまうこともあるでしょう。
そこで、まずはマイペースな性格の良い点と悪い点を比較してみます。
【長所】マイペースな性格の良いところ
マイペースな性格の良い点としては、以下のようなものが挙げられます。
- 周囲の環境に左右されず気持ちが落ち着いている
- 判断基準が自分の中にあるため、言動がぶれない
- 他人に管理されなくても予定を進行できる
- 周囲に流されて自分のポリシーに反することをやらない
- 周りが騒がしかったり浮き足立っていても、淡々と自分のやりたいこと・やるべきことを進められる
- 自分の世界観を持っているため、独創的な意見や作品を作り出せる
小学生なら、数人が誰かの悪口を言っている場面でも「あの子はそんな子じゃない」と自分の考えをはっきり言ったり、イタズラやいじめに加わらずひょうひょうと過ごしている子が時々いますよね。
中高生であれば、メッセージアプリのグループがどんなに盛り上がっても、自分が参加したいと思わなければ淡々と勉強をして寝てしまったりする子がこれに当たります。
また、基本的に他人からの評価をあまり気にせず、いちいち他人と比べたりねたんだりしません。
親としては少しは闘争心を持ってくれれば…と思うかもしれません。
しかし、マイペースな子は、汚い手を使ってライバルを蹴落とそうと考えたり、優位に立とうとしてマウンティングしたりといったことをしないので、「一緒にいると癒される」「安らぐ」と、意外と仲間内で人気があったりします。
【短所】マイペースな性格の悪いところ
一方、悪い意味で「マイペース」と言われる場合、次のような点について言われていることが多いでしょう。
- 周りに合わせられない、協調性がない
- 自分さえ良ければいい
- 頑固
- 空気が読めない
- 時間にルーズ
- 行動が遅い
昭和の時代に「マイペース」という言葉が使われだした当初は、スポーツや稽古事などを「自分に合った速度で進める」という意味がメインだったといいます。
しかし、いつしか「他人のペースで動けない」「決められた時間ではなく、自分の時間に合わせて動く」といった面が社会生活の妨げになるため、「あの人はマイペースだからいらいらする」「マイペース過ぎて学校に遅刻ばかり」と、否定的な意味で使われるようになってきたようです。
また、実は「せっかちで人を待っていられない」というのも一種のマイペースといえます。
ただ、「食べる早さ」などで考えてみると分かりやすいですが、せっかちな人が待つのと、ゆっくりな人がペースを上げるのとでは後者の方が難しいため、一般的には「マイペース=行動がのろい」と思われがちですね。
そして「他人に流されない」のはよいことですが、それと「他人に気遣いしない」のとは微妙に違います。
例えば、デートで自分の行きたい場所だけに行き、相手が何を食べたいのかまったく気にしない…というのは明らかに行き過ぎ。
子ども同士でも、二人で遊んでいるのに、突然「やーめた」と言ってばかりでは友だちが離れてしまいます。
「マイペース」が「自己中」になってしまわないよう気をつけなくてはなりませんね。
また、「マイペース」というのはあくまでも相対的なものであり、答えがいくつもある状況(緊急でないメッセージアプリの返信タイミングなど)では通用しますが、絶対的な決まり(法律、集合時間、仕事の納期など)を守らないのは、「マイペース」とは言えません。
時々、上記のような相手に迷惑をかける行為をした時に「私はマイペースだから」といって開き直る人がいるせいで、余計に「マイペース」という言葉の印象が悪いものになっているのかもしれませんね。
わが子を「マイペース」と思う瞬間
現在4歳から中学生までのお子さんがいるママ・パパたちに、「うちの子はマイペースだなと思うことはありますか?」と聞いてみると、「はい」が66%と、3人に2人が「わが子はマイペースだ」と思っていることが分かりました。
具体的には、
「下の子は長女と比べればマイペース。さすがに平日学校に行くときはちゃんと準備をしますが、休日は声をかけなければ気が済むまで好きなことに没頭することも」(Nさん・39歳・5年生と2年生のママ)
「これをやる、と決めたら絶対脱線しません。どんなに急いでいても、自分が納得した毎日のルーティンは絶対にやるところを見ていると、マイペースだなと感じます」(Yさん・36歳・5歳児のパパ)
「協調性がないわけではありませんが、保育園では自分の好きな遊びを黙々としていることが多いようです。自宅でも自分のペースで物事を進めるのを好み、ペースを乱されることを嫌います」(Uさん・32歳・4歳児のママ)
「中学生の今はそうでもないですが、小学校低学年までは、明らかに時間に間に合わなくなってきても、急いだり焦ったりする様子がありませんでした」(Rさん・42歳・中3のママ)
「お遊戯会のステージの上や運動会の本番など、たくさんの人の前でも人目を気にせず好きなように楽しんでいることが多いです」(Jさん・34歳・6歳児のママ)
登園登校時間や、園での1日のスケジュールなど、成長するにつれて、決められた時間通りに動くことが増えてきますが、子どもは必ずしも大人の理想または都合どおりに動いてくれるとは限りません。
モンテッソーリ教育を取り入れているアメリカのある小学校では、登校時間こそ決まっていますが、午前中の3時間、各自のペースに合った学習内容と休憩時間を自由に決められます。
もし子どもが夢中で本を読んでいたり、研究や絵に没頭していれば、先生は声をかけずに見守るそうです。
高度成長期、一定の作業をきちんとこなすことが求められていた時代には合っていた日本の戦後教育ですが、マイペースな子にとっては最適な教育方針とはいえないのかもしれませんね。
マイペースな子は将来どんな仕事や働き方が向いている?
マイペースなお子さんを持つママ・パパは、自分もマイペースな場合、子どもの気持ちが分かるので心配しつつも見守るスタンスの人が多いようですが、そうでない場合はかなりイライラしたり、将来が心配になったりするようです。
学校では、本人にやる気がありコツコツ取り組んでいれば、マイペースでも成績はある程度上がることが多いでしょう。
しかし、就職すると、ほとんどの企業では常に業務のスケジュールがあり、周囲と連携したり分担したりして、納期や経理の締め日に合わせ仕事を進める必要があります。
自分の判断よりも、周囲の状況を優先して臨機応変に対応を変えたほうがうまく行くことも多いでしょう。
「超マイペースなこの子が、そんな中でやっていけるのか…」と心配にもなりますが、マイペースな人に合った働き方や職種もある程度は存在します。以下はその一例です。
- フリーランス/自営業/起業…仕事の割り振りをするのは自分なので、納得して進められます。
- 営業…結果が重視されるため、毎日の進め方やペースを細かく指示されることは少ないといえます。
- 職人/技術職/研究職…モノや数字に対しては過剰な気遣いや忖度は不要で、コツコツと自分の作業を進めていけば好結果に結びつくことも多いです。
もちろん、どのような仕事でも周囲の人への思いやりや気遣いは必要ですし、途中の段階はマイペースでも、最終的な納期や締め切りを守ることが大前提です。
また、職人系や技術職でも、ひととおりの技術を習得するまでの期間はマイペースで良いというわけにはいきません。
マイペースなために仕事に時間がかかり過ぎるなら、同じ職場で早くこなせる人にコツを教えてもらって取り入れるなどの柔軟性も時には必要です。
お子さんが成長し、職業を考え始める年頃になったら、少しずつそんな話をしていけると良いですね。
おわりに
大人になってみると、マイペースではなくても、逆に「他人の目が気になって自分らしく生きられない」と悩む人はたくさんいます。
マイペースな子の親としては将来が心配な面もありますが、他人に流されず信じた道を進む性格は、周囲を気にするタイプの人からはうらやましく見えていることもあります。
マイペースな子の長所を生かしつつ、時間を守るなどのルールはしっかり守れるように教えていきたいですね。
文/高谷みえこ