ママやパパが小学生だった頃は、秋になると「学芸会」が催され、劇や楽器の演奏などを練習した記憶のある人が多いのではないでしょうか。
しかし令和のいま、小学校では「学芸会」よりも「学習発表会」と呼ばれることが多くなり、内容も変わりつつあるとか。
そこで今回は、現役小学生ママ&パパへのアンケートも参考にしつつ、全国ではどのような学芸会や学習発表会が行われているのかを調べてみました。
「学芸会」と「学習発表会」アンケート結果で多かったのは
まずは小学生のお子さんがいるママ・パパに、「ご自身が小学生の頃、学芸会がありましたか?」と聞いてみたところ、以下のような割合となりました。
- 学芸会があった…31%
- 学習発表会など別の名称だった…39%
- 音楽会や作品展があった…16%
- いずれもなかった…14%
結果を見ると、3人に1人は「学芸会」を経験しているものの、一番多いのは「学習発表会」など別の名称だとのこと。
ドラマやアニメではよく「学芸会で木の役だった…」などのエピソードが出てきますが、どうやら以前から全国的に「学芸会」という名称だったわけではなさそうです。
次に、「お子さんの通う小学校や、地域の小学校に学芸会はありますか?」とたずねたところ、以下のような結果に。
- 学芸会がある…8%
- 学習発表会など別の名称である…46%
- 音楽会がある…39%
- いずれもない…7%
現在ではやはり、学芸会という名称を使っている学校がぐんと減ったことが見てとれます。
この背景にはどのような理由があるのでしょうか。
「学芸会」「学習発表会」の違いは、時代だけでなく地域性も
「学芸会」という呼び名は歴史が古く、明治時代から行われていたといいます。
現在の学習指導要領の中では、行うべき特別活動のひとつとして「学校行事」があり、さらにその中に「文化的行事」があります。
内容は
平素の学習活動の成果を発表し,その向上の意欲を一層高めたり,文化や芸術に親しんだりするような活動を行うこと。
となっていて、名称や具体的なプログラムは学校ごとに決めるようになっています。
ただ、1980年代後半ごろから、ゆとり教育の影響で子どもの学力が下がったことが問題となり、もっと授業時間を確保すべきという動きが起こりました。
その結果、練習や準備に時間がかかる各行事を見直したり、規模を縮小したりする学校が増えたようです。
なかでも学芸会は、「芸」という字に「観客を楽しませる」というイメージがあり、お楽しみのために時間を割いて特別な準備や指導をするのではなく、日頃の学習を生かした形の行事にしようという意図から、「学習発表会」や教科の一部としての「音楽会」「作品展」に変更した学校が多いのではと考えられています。
しかし、いまでも「学芸会」として開催する小学校もあることから、国の方針や時代の変化もあるものの、呼び名や内容は地域や学校ごとの差が大きいようです。
「学芸会」いまどきの小学校ではどんな風に行われている?
アンケートで、「お子さんの小学校ではどのような形で行事が行われていますか?」という質問には、以下のようにいろいろなパターンが寄せられました。
「音楽+短めの劇という音楽劇形式です」
「歌を歌ったり楽器の演奏をするので、ほぼ音楽会です。学年が上がるとセリフが入り、物語的な要素が増えていきますが、昔のような劇スタイルではないですね」
「学芸会と作品展が1年交代であります。学芸会の年は昔ながらの歌やお芝居です」
「学習発表会という名のとおり、本当に今年に入って学習した内容をパネルにしたり発表するというもので、劇や音楽など、いわゆる”芸能”の要素はありません」
「各教科での内容をいくつかの班に分かれて発表します。国語なら音読や群読、算数なら九九の暗唱、体育なら縄跳びやマット運動、音楽ならリコーダーや鍵盤ハーモニカの演奏など。各自、得意なことを選ぶので、なかなか見ごたえがありますよ」
学芸会や学習発表会、昔と今でどう違う?保護者のリアルな感想
アンケートでは、ママやパパの子ども時代と違うと感じた点について、
「児童数が減ったため、2学年合同で劇や合奏を行っていました」
「小学校、中学校、高校の合同音楽会があります」
と、少子化の影響を感じさせるものや、
「自分たちでパソコンを使って作成した資料や動画を使った学習内容の発表がありました」
「音楽劇の演出などを見ていると、昔よりもデジタルなものが増えたと感じます」
と、昔と今では子どもたちの表現・伝え方が変化しているという感想がみられます。
また保護者側の参観についても、
「全学年見られるのが普通だと思っていましたが、わが子の学年だけと決められていました」
「平日の開催でも、両親揃って見に来る人が予想以上に多いのに驚きました」
などの点で昔との違いを感じているようです。
小学校の学芸会&学習発表会での困りごと
「学芸会や学習発表会に関して、何か困ったことはありますか?」という質問に対しては、以下のような回答が寄せられました。
「学年でお揃いの色のTシャツが必要で、手持ちの服にない場合はわざわざ買わないといけないんです」
「冬場、発表会の2週間前に浴衣を用意するよう言われて困りました。通販で見つけたものの高額で…実家の母に相談して、弟が小学生の時に来ていたものを送ってもらいました」
「衣装の指定があるのですが、毎年微妙な色あいで学芸会にしか着ない洋服が増えていきます…」
と、衣装関係でモヤモヤするママは多いようです。 衣装については他にも、
「娘がお姫様的な役に決まって本人は大張り切りですが、衣装を家で作らないといけなかったため、裁縫が苦手な私は半泣きでした」
といった苦労話も。
また、
「ビデオ撮影をしますが、後ろの席だと人の頭でちゃんと撮影できないため、毎年場所取りに朝早くから並びます」
「わが子の学年以外の出し物の時にずっとおしゃべりをしているママグループ。ビデオにも声が入りまくるし、何より一生懸命歌ったり台詞を言っている子どもに失礼だと思います」
と、学芸会にまつわる困りごとは多岐に渡っています。
学芸会は「先生がしっかり準備」「子どもが自主的に決める」どっち?
学芸会や発表会では、先生がかなりしっかりと内容を考えて指導するパターンと、子どもたちが自分で考えて作り上げるパターンがあります。
一般的には、先生主導の方が保護者から見たレベルは高いでしょう。
しかし、とにかく本番までに見栄えよく完成させることが第一優先になってしまうと、指導で叱られることが増えたり、通常の授業にしわ寄せがくるといったデメリットもあります。
いっぽう、子どもたちに任せると、完成度が今一つで、子どもたちはウケているものの保護者にはストーリーすら意味不明…ということも起こりえます。
しかし、その過程で、みんなの意見をまとめることの難しさや、計画を立てて進めること、問題が起きた時にどう解決するかなど、成長につながることも多く、より充実した時間を過ごせる可能性もあります。
ただ、子どもたちの自主性に任せるといっても、必要な時に適切なヘルプが出せるよう見守ることは必須です。
「今年の学芸会はレベルが高い」または「低い」と言いたくなったら、どういう方針で準備を進めたのか、お子さんと話してみるのもいいですね。
おわりに
ここ数年、小学校では、英語や道徳の科目化・必修化やプログラミング教育の導入などでますます授業時間の確保が課題になってきています。
しかし、みんなで協力して何かを表現・発表したり、ステージに立つという非日常的な経験は、日常の授業とはまた違った達成感を得ることができ、成長の糧になるのではないでしょうか。
学習とうまくバランスを取れる形で、これからも「学芸会」や「学習発表会」が存続できるといいですね。
文/高谷みえこ