「キャリアチェンジ」というと、新卒で数年間働いた後に「やっぱり今後はこの道に進みたい」と感じて転職するもの…というイメージがありますが、実は、これは働くママにも無縁ではありません。
出産後、もとの職場に復帰して再びキャリアを積み上げることは制度上は可能ですが、実際にはさまざまな理由で働き続けられない女性も非常にたくさんいます。
しかし、最近ではこれを「キャリアチェンジの機会」と前向きに捉えている人も増えているとか。
今回は、働くママならではの、キャリアチェンジの理由と形について考えてみます。
「キャリアチェンジ」とは。転職とは違う?
「キャリアチェンジ」は転職の一種ですが、基本的にはそれまで働いてきた職種とは別の分野や未経験の分野に転職することをいいます。
なので、例えば「経理の仕事をしてきて、より良い収入や仕事内容を求めて別の会社の経理部門へ転職した」という場合はキャリアチェンジとは言わず、「キャリアアップ」ととらえることができます。
新卒で設計職に就いたけれども、やはり人と会話してモノ作りのアイデアを広げたいという気持ちが強く、営業や商品開発部門への配置転換を希望したり、別の会社に営業職として転職するのが「キャリアチェンジ」にあたります。
働くママのキャリアチェンジには特有の事情や理由がある
上記のようなキャリアチェンジを考えたり実行したりするのは、社会に出て数年経った20代後半頃が多い印象です。
しかし、「働くママのキャリアチェンジ」には、独身時代と違ったママならではの事情や理由が影響してくるため、純粋に仕事内容や待遇だけで決められない面があります。
育児をしながら新しい環境で働けるのかがイメージにしにくい
求人には残業なしとあっても、実際には部署によって日常的に残業が発生したり、成果を残したければ長時間会社にいるしかないというケースもあります。
また、子どもの急な発熱などで休んだり早退することに協力的な職場かどうかは、入ってみるまで分からないことも多いもの。
ただでさえ新しい職場は分からないことが多いのに、育児に時間が取られる時期の転職に二の足を踏んでしまうママが多いのも無理もないですね。
育休は取っておきたい
最近では、ブラックな職場に絶望した育休中のママが退職前提であえて入園困難な保育園に希望を出すという事例が話題になりましたが、本来、育児休業とは元の職場へ復帰するためのもの。
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つまり、育児休業中には転職活動を行わないのが前提となります。
しかし、キャリアチェンジに備えて出産と同時に退職すると育休手当が支給されなくなってしまいます。
さらに、最近は国民年金でも導入されましたが、厚生年金でも出産前後の年金の免除制度があるため、もしキャリアチェンジを考えていたとしても、出産時期に退職はせず育休を取りたいというのが大部分のママの考えではないでしょうか。
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やむを得ず退職→キャリアチェンジすることも
いっぽう、上記の例とは反対に、職場復帰するつもりだったのに保育園に入れず、やむを得ず退職したり、復帰はしたものの職場のサポート体制が整っていなかったり、体力的に限界を感じて退職を余儀なくされるママも多くいます。
退職後、子どもの手が少し離れてから新しく仕事を探した場合、まったく未経験の職種に就く可能性もあり、思いがけないキャリアチェンジだともいえるでしょう。
出産・育児で価値観が変わる
芸能人でも、出産後、子どもの健康や将来を考えるうちに地球環境や社会問題に興味を持ち、仕事や発信の内容がガラッと変わる人を見かけます。
これまで仕事で成果を出すことや会社に貢献することが最優先だった人も、出産を機に仕事への価値観・求めるものが変わる可能性も十分にあります。
それをきっかけに、「家族と過ごす時間を大切にしたい」「環境に配慮した商品を扱う会社で働きたい」など、価値観が変化したことでキャリアチェンジを考えるママも増えています。
ママのキャリアチェンジ、選択肢はいろいろ
働くママのキャリアチェンジにはさまざまな制約も伴いますが、選択肢は少しずつ増えてきたといえます。
外資系も選択肢に
現在の日本ではまだ、長期的な「キャリアアップ」を視野に色々な部署や職種を経験させるという方針の会社が多いため、キャリアチェンジしたくて転職・就職しても、希望の職種や部署に配属されない可能性もあります。
特定の分野でプロフェッショナルを目指す人は、職種ごとの採用が多い外資系の企業に応募するという方法も。
英語がペラペラでなくてもOKな会社も意外とあり、フレックス制やテレワークを導入している会社も少なくありません。
ただし、ある程度の実務能力が求められているため、前職で別の職種だった人は、学生時代に専攻していた・資格取得・前職のスキルが応用できるなど、何らかの強みを持っておく必要があるでしょう。
時短勤務の専門職も増えている
パートタイムや時短勤務の仕事は、依然としてサービスや販売・一般事務などが多いものの、少しずつ「営業」「人事」「労務」「保険」といった専門職も増えてきています。
リモートワーク・テレワーク・在宅ワーク
フルタイム採用でも、出勤は週2日で残りはリモートワークが可能という会社も出てきていますし、クラウドソーシングの発達によりフリーランスとして在宅で働く道も広がってきています。
リモートワークで長く働ける体制を整えておけば、育児中はもちろん、将来「実家の1人暮らしの母が少しずつ身体が不自由に…」という場合でも、介護をしながらリモートで働くことも可能です。
まとめ
出産・育児で人生のステージは大きく変化し、キャリアの中断に焦ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、どんな状況でも、キャリアチェンジがしたいのか働き方を変えたいのかなど、自分が本当に優先したいものを見極めて判断すればきっと道は開けるはず。
出産と育児を経て鍛えられた、ママたちの無駄のない時間配分やタスク管理能力は必ずキャリアチェンジの強い味方となるでしょう。
文/高谷みえこ