近年のアウトドア人気はとどまるところを知らず、夏休みのキャンプ場には子どもや赤ちゃん連れのファミリーをたくさん見かけます。 でも、日帰りのデイキャンプやバーベキューならともかく、1歳前の赤ちゃんを泊まりのキャンプに連れていくことって可能なの?と疑問に思っているママやパパもいることでしょう。
そこで今回は、20年間で数十回以上のキャンプ経験者である筆者の知見と、育児中のママ・パパへのアンケートも参考に、赤ちゃんとキャンプの適齢期について考えてみました。
キャンプ場での年齢制限はほとんどない
遊園地の乗り物等とは違い、一般的なキャンプ場では利用者の年齢制限は特にないことがほとんどです。
ただ、宿泊設備がテントのみの場合、炎天下や高温多湿による熱中症・昼夜の温度差・天候の急変など、身体の小さい赤ちゃんにとって過酷な環境になりやすいのはたしか。年齢制限がないからといって問題ないというわけではありません。
いっぽうで、コテージなどの設備が整ったキャンプ場であれば、ホテルや旅館と大差なく過ごせることも少なくありません。
きょうだいが何人もいる場合、ホテルに泊まるよりもリーズナブルなうえ、赤ちゃんは室内で安全に過ごし、上の子たちには普段できない虫取りや川遊び・満天の星空などかけがえのない体験をさせてあげることもできます。
「0歳代の赤ちゃんをキャンプに連れて行けますか?」現役ママ・パパに聞いてみた
実際、子育て中のパパ・ママは、赤ちゃんを連れてキャンプに行くことをどう思っているでしょうか?
「あなたは1歳未満の赤ちゃんを連れてキャンプ(テント泊)に行けますか?」とたずねたところ、
- 行くつもりはない…89%
- 可能なら行ってみたい…11%
と、圧倒的に反対派が多い結果になりました。 その理由としては、
「そもそも、キャンプって不便を楽しむものですよね。赤ちゃん連れではハードルが高すぎます」(Nさん・30代・2児のママ)
「夫は楽しいかもしれませんが、私はバタバタするだけで楽しむ間もなく終わりそう。わざわざ大変な時期に行かなくても、数年待てば家族で楽しめるのでは」(Uさん・30代・2児のママ)
「自分自身が、テントや外で泊まるのが好きではないので」(複数のママ)
など、ただでさえ大変な環境で過ごすであろうキャンプに、赤ちゃんを連れていくのは考えられないという声があがりました。
また、
「赤ちゃんのうちは夜は安心安全清潔なところで寝させたい」(Hさん・30代・2児のパパ)
「バンガロー泊で、荷造りや片付けの心配がないなら行ってもいいかも」(Gさん・20代・1児のママ)
と、泊まる場所がテントでなければアリかな…という意見もチラホラ見られました。
赤ちゃん連れキャンプで心配なこと
たしかに、キャンプ場には赤ちゃんにとって気をつけなければいけないことがいっぱい。 特にママ・パパたちが心配しているのは次のような点でした。
虫刺され
きちんと管理されているキャンプ場である程度人でにぎわっていれば、意外とスズメバチなどは寄ってこないものですが、夏場は蚊に刺されることは避けれられません。
天然成分の虫よけや蚊取り線香を使う、夕方からは長袖長ズボンを着る、メッシュタイプのテントやタープで過ごす…などである程度は防げますが、100%防ぐことは難しいでしょう。
また、赤ちゃんはもちろん、9歳までの子は日本脳炎の予防接種が完了していないことがほとんど。蚊の移動距離は平均2キロメートル、最大8キロメートルといわれていますが、念のため近隣に養豚場があるキャンプ場は避けた方が良いかもしれません。
そして蚊以上に気をつけたいのは、ブヨ(ブユ)という虫です。
おもに夕方と朝方の薄明るい時間帯に、手足などに噛みつき強いかゆみをもたらします。大人でもたくさん噛まれると手足が腫れあがり、小さい子は発熱することもあるため、日没後は手足を露出せず、赤ちゃんはブヨの出る時間帯は室内やテント内にいることをおすすめします。
赤ちゃんと行くなら、できれば虫刺されの心配が少なく、寒すぎない5月頃か10月後半あたりがベストシーズンかもしれませんね。
ミルク・離乳食
気になるミルクや離乳食の衛生面ですが、液体ミルクや市販のベビーフードが平気な赤ちゃんであればさほど心配いらないと思われます。
ただ、いつもと味が違うと赤ちゃんが嫌がる可能性がありますので、事前に何回か試してみて、口に合うか、常温でも飲んでくれるか確認しておいた方がいいですね。
哺乳瓶の消毒が気になる場合は、使い捨てタイプの哺乳瓶を持参する方法も。
おむつ
使用済みの2日分のおむつを持ち帰るのはかなり大変。
ファミリー歓迎のキャンプ場なら、共同トイレにおむつを捨てるバケツがあったり、コテージで出たゴミを無料または有料で引き取ってくれることもありますので、事前に確認してみましょう。
おむつの一時保管には、消臭・防臭機能のあるナイロン袋も市販されていますので、持っていくのもいいですね。
お風呂
赤ちゃんは大人より汗っかきで、おむつ周りも蒸れやすいため、できるだけお風呂やシャワーで洗ってあげたいもの。
シャワーやお風呂のついたコテージなら安心ですが、共同の家族風呂を使用するタイプのキャンプ場もあります。予約制のことが多く、すぐ埋まることもあるので、こちらも事前に確認しておきましょう。
夜泣き
テント泊で隣との距離が近い場合、赤ちゃんの夜泣きは非常によく聞こえてしまいます。
普段朝までぐっすり寝るタイプの子でも、環境の変化で興奮して夜泣きすることがあるため、迷惑にならないよう、赤ちゃん連れの場合はテントではなくコテージ・バンガロータイプが基本といえます。
赤ちゃんがぐっすり寝ているときに、他のグループが深夜までお酒を飲んで大騒ぎ…というパターンもありますので、いずれにしても隣との距離が離れたコテージを選ぶ方が安心です。
病気
万が一のケガや病気のため、近隣に病院がないキャンプ場は避けた方が無難です。
また、赤ちゃん連れのキャンプでは、1人はアルコールが入っていない状態で運転できるようにしておくことも必要。
母子手帳や保険証はひとまとめにし、事前に最寄り病院の場所と診察時間を確認、スマホの予備バッテリーも持参しておきましょう。
赤ちゃん連れキャンプは、結局いつからがおすすめ?
ここまでを考えると、0歳の赤ちゃんをキャンプに連れていくのは相当の覚悟と準備がいることが分かります。
ただ、1人目の子であれば、成長するまで待ってチャレンジすれば良いのですが、少し年の離れた3人~4人きょうだいともなると、末っ子がキャンプ適齢期になる頃には長子が中学生になり、部活でそれどころではない…という可能性も。
上の子のことも考えると、4~5歳から小学生頃の黄金期に、たくさん野外体験をさせてあげたい気持ちもありますよね。
しかしキャンプそのものに慣れていないファミリーにとって、赤ちゃんを含めた複数の子供を連れて、安全にテントを張ったり火を起こしたりするのは至難の業です。
メンバーがキャンプに慣れていて、子どもにつきっきりで見ていられる大人が複数いるなら、意外といつからでもOKですが、そうでなければ、コテージやバンガローなど、赤ちゃんには家と近い環境が用意してあげられるキャンプ場を利用するのがおすすめです。
また、可能であれば、上の子とパパだけで行く、ツアーを利用する、慣れた友人や身内と一緒に行く…などの方法もあります。
結論として、赤ちゃん連れのキャンプには「いつからOK」という正解はありませんが、とにかく赤ちゃんに危険や負担のかかる計画は絶対にNGということを覚えておきましょう。
赤ちゃんに無理のない計画を
筆者は、実は雪中キャンプを含め数十回以上のキャンプ経験があります。それでも娘たちのキャンプデビューは長女が3歳過ぎ、次女が2歳過ぎだったと記憶しています。
わが家の場合は行きつけのキャンプ場が至れり尽くせりの施設ではなく、安全に過ごせる確信がないため、0~1歳では難しいと判断しました。
しかし、気候もよく、赤ちゃんのお世話をする大人が揃った状態であれば、自然と触れ合う経験は赤ちゃんにとってもママ・パパにとっても大きなプラスになるはず。
また、夜はおおむね眠れる赤ちゃんで、万が一の夜泣きで周囲に迷惑をかけないコテージなどを利用するなら0歳台でもキャンプは可能だと思います。
今回の記事も参考に、赤ちゃん自身に危険や負担がないかどうかを最優先にして、無理のない計画を立てて下さいね。
文/高谷みえこ