2人目の子どもを望んでいるのに、なかなか授からない「二人目不妊」。 周囲のママ友や同僚は2人目ラッシュなのに…。
1人目が授からない時には多少は感じられる周囲の配慮も、2人目がなかなかできない女性に対しては「もしかして」と察してもらえる確率は限りなく低く、ずけずけと「2人目はまだ?」「早くきょうだい作ってあげないとかわいそう」「年齢が空くと大変よ」などと言ってくる方が未だにいます…。
そんな「二人目不妊」について、考えられる原因と特有のつらさについて取り上げました。
「二人目不妊」の原因
国の調査では、「不妊の検査や治療を受けたことがある」「現在受けている」という夫婦は約50万人で、全体の18.2%、約5.5組に1組の夫婦が不妊症で悩んでいるといわれます。
そのうち子どもがすでに1人いる夫婦は、15%~25%といわれ、二人目不妊で悩んだり、治療している人は決して珍しい存在ではないことが分かります。
1人目・2人目以降に関わらず、不妊の原因にはさまざまなものがあり、検査をしてもけっきょく原因が分からずじまいということもあれば、いくつかの要因が重なっていることも少なくありません。
ここでは、その中から特に二人目不妊に関係が深いと思われるものを集めてみました。
二人目不妊の原因(1)加齢
言うまでもなく、同一人物なら年齢が若い時の方が卵子・精子ともに状態がよく、妊娠の確率は上がるといわれています。
第2子の妊活時には第1子より夫婦ともに年齢が上がっていることは間違いないので、もともと妊娠しにくい体質であれば、第一子でたまたま自然妊娠できたとしても、数年たてば加齢が不妊の原因となりえます。
ただ、これはあくまでも「同じ生活習慣であれば、若い時の方が妊娠率が高い」ということ。
例えば、第1子の時と比べて
- 転勤や転職で残業が減った
- 喫煙をやめた
- バランスのいい食生活を心がけるようになった
など、生活習慣が改善されていれば、男女ともにむしろ前より条件が整う可能性は十分にあります。
二人目不妊の原因(2)病気・体質
1人目の時にスムーズに妊娠したのに、なかなか2人目に恵まれないために受診したところ、次のような病気が見つかった…という人もいます。
高プロラクチン血症
妊娠中や授乳中には、「プロラクチン」という、母乳の分泌を促し、産後の月経を抑制するホルモンが大量に産生されます。 しかし、妊娠出産時以外にこのホルモンが多く分泌されると排卵や月経が起きないため、妊娠しにくくなってしまいます。
早発閉経
POIとも呼ばれ、40歳未満で卵巣が働かなくなり、閉経と同じ状態になってします。 30歳未満の1000人に1人、40歳未満の100人に1人が発症。自然妊娠する確率は5~10%といわれます。
抗リン脂質抗体症候群
体内の免疫機能が、なんらかの原因で自分自身の組織を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種で、妊娠はするものの流産してしまう「不育症」の原因のひとつです。 抗リン脂質抗体症候群の女性が妊娠すると、胎盤を作る細胞に障害が起こり、正常に働かないために妊娠が維持できないのではないかと考えられています。
子宮筋腫
子宮筋腫は成人女性の4人に1人はあるといわれていますが、大きさや位置によっては妊娠を妨げてしまいます。 受精卵は子宮の中に異物があると着床しづらい性質があり、避妊にも応用されていますが、筋腫は異物と認識される以外にも、子宮内の血流を悪くしたり、卵管をふさいでしまったりする可能性も。
そのほか、前回の妊娠のダメージで炎症や子宮内膜症を起こしたり、細菌感染の影響で卵管のつまりが起こるのも二人目不妊に特徴的だといわれます。
また、母乳育児の期間が長い人の中には、まれに黄体ホルモンの分泌が不十分になり、排卵がうまくいかなくなるケースもあるそうです。
これらの病気が増えている背景には、ごみの焼却時に出るダイオキシンや殺虫剤などに含まれる「内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)」が関係するという説もありますが、現在のところ原因は不明です。
二人目不妊の原因(3)環境・社会的な要因
身体面の理由だけでなく、いまの日本には不妊治療をしたくても踏み切れない環境・社会的な問題もたくさんあります。
特に二人目不妊では、次のような点がネックになり、治療開始やステップアップが遅れてしまうことも大きな要因といわれます。
子育てをしながらの治療が困難
上の子がいるのはとても幸せなことですが、いっぽうで、子どもの前で治療のための処置ができない、夜泣きや育児の疲労で夫婦の時間を持つことができないという問題も。
また、仕事が終わって通院しようにも、保育園の迎えがあるため診察時間に間に合わずあきらめてしまう人もいます。
治療薬の副作用で、頭痛やめまいを抱えながらの上の子の育児は困難。また採卵のための卵巣刺激でお腹が張り、安静や入院になる人もいるため、育児を優先して先延ばしにせざるを得ない場合もあります。
1人目の不妊治療経験がある人は、当時、病院で赤ちゃんや子どもを見るのも辛かった記憶があるため、自分も上の子を連れて通院するのをためらいますが、実家や夫・一時保育を頼む先がなく通院をあきらめる人も。
さらに職場では、産休・育休が続いて職場に迷惑がかからないよう、業務が一段落するのを見計らって治療をスタートさせようと思っているうちに同僚が妊娠するなどで治療のタイミングを失う…というのも二人目不妊特有の問題です。
そのほか、体外受精を行う場合は採卵のスケジュールが直前まで分からないため、仕事だけでなく上の子の検診や園行事との兼ね合いまで考えなくてはならず、予定調整のハードルは大変高いものになります。
ワンオペ育児・男性の家事育児分担が少ない
日本の男性の労働時間はまだまだ長く、平日に夫婦で治療に通う時間が取れないばかりか、上の子の育児でクタクタになり、1人目の時よりもストレスや疲労が大きい女性がほとんど。
不妊そのものの原因とはいえませんが、日本では、休日でさえも家事育児の負担が男女で偏っていることも結果的に2人目ができない理由の1つといわれています。
内閣府の調査結果によると、夫が休日にまったく家事育児をしない夫婦では90%以上が一人っ子。
夫が休日に2時間以上家事育児をする場合では、きょうだいの家庭が50%を超え、6時間以上では84.5%の夫婦に2人以上の子どもがいるという結果になっています。
二人目不妊の原因(4)金銭的な要因
現在、不妊治療には、基本的な検査やタイミング法までは保険が適用されますが、より詳しい検査や人工授精・体外受精・顕微授精などのステップアップした治療は保険適用外、自費診療になります。
国では「不妊に悩む方への特定治療支援事業」として助成金を交付していますが、例えば体外受精では1回の費用が20~50万と高額で、何回も行えばかかるお金は数百万以上ということも珍しくなく、助成金は十分とはいえません。
また助成金には所得上限額がもうけられており、フルタイムで共働きだと該当しない人も多いのが実情。
「治療費用以外に、体質改善の漢方薬・鍼灸・整体、食生活の改善、サプリメントなどにも地味にお金がかかります」という声も。
上の子がいれば、その子に十分な教育費も残してあげたいし、小さいうちは親子が触れ合う時間も必要。
高額な治療に進むかどうか迷っているうちに時間が過ぎてしまったり、治療費用を稼ぐために長時間労働をやめられないという悪循環に陥りがちなのが二人目不妊の特徴ともいえます。
二人目不妊のまとめ
周囲に理解されにくいぶん、笑顔で対応しつつも内心傷ついている人も多い二人目不妊。
早い保険診療化を望むとともに、「目の前のママがいま二人目不妊で苦しんでいるかもしれない」ということを念頭に置き、何気ないひとことで傷つけてしまわないよう気をつけたいですね。
文/高谷みえこ
参考:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」
内閣府男女共同参画局「夫の休日の家事・育児時間別にみたこの7年間の第2子以降の出生の状況」
内閣府特命担当大臣(男女共同参画) 「男性の暮らし方・意識の変革に向けて」
書籍「奪われし未来 増補改訂版」シーア・コルボーン、ジョン・ピーターソン・マイヤーズほか著/翔泳社