小学校の英語必修化のイメージ

2020年の東京オリンピック開催や外国人労働者の増加、ビジネスのグローバル化などにより、これからの日本ではますます外国語(特に英語)の必要性が高まっていくとみられています。

 

将来はスマホをかざせばどんな英語も完全に自動翻訳できる時代が来るとしても、やはり最低限の英語は理解できて話せるほうが、圧倒的にスムーズに世界の人々とコミュニケーションがとれるでしょう。

 

そんな時代に向けて、小学校で現在進んでいる「英語必修化」ですが、具体的には何年生から何をすることになっているのか知っていますか?

 

今回は、これからの子どもたちは小学校でどのように外国語(英語)を学ぶのか、わかりやすく解説していきます。

小学校の英語必修化、2020年には3年生からスタート


筆者の長女(2000年生まれ)が地元の公立小学校に入学したとき、外国語は時間割に含まれていませんでした。

 

その後2008年に告示された『学習指導要領』で、小学校でも外国語活動を取り入れるように決定され、2011年から小学校5~6年生に年間35時間分の外国語活動が必修化されました。

 

とはいえ、長女の小学校では、5年生を待たず、低学年から「総合的な学習の時間」を利用して、英語を母国語とするALT(Assistant Language Teacher/外国人指導助手)のもとで英語に触れる時間が設けられていました。

 

しかし、当時他府県から引っ越してきたママ友の話では、 「これでも遅いほうよ!〇〇県はもっと前から独自に小学校で英語をやってたわ」 とのこと。

 

また私立の小学校も同様で、大学受験で重要な位置を占める英語は早い段階からカリキュラムに取り入れていました。

 

そんな世の中の流れに追いつくように、2020年度に全面実施される『新学習指導要領』では、全国の小学校の3~4年生で週に1コマ、年間35時間分の英語学習を必修化。

 

5~6年生では、週に2コマ、年間70時間分が「教科化」されることになります。

小学校の英語「必修化」と「教科化」の違いを知っておこう!


ところで、「必修化」と、2020年に始まる5年生からの「教科化」とは、なにが違うか分かりますか?

 

これまではプリントや独自のテキストにそって英語を学んでいましたが、必修化は、どの小学校でも必ず取り入れるという意味で、基本的に内容は変わりません。

 

いっぽう「教科化」となると、文字通り「教科書」が登場します。

 

そして、授業やテストで通知表に成績がつくのがこれまでとの大きな違い。

 

具体的には次のような学習内容となる予定です。

3~4年生の「外国語(英語)必修化」でめざす学習内容

英語4技能「聞く/話す/読む/書く」のうち、3年生からはおもに「聞く」「話す」がポイント。

 

  • あいさつ
  • 身の回りのものや好きなもの、スポーツなどの名前
  • 数の数え方
  • アルファベット(大文字)

 

などについて、ゲームや歌、ダンス、イラストなどを使いながら、実際に発音を聞いたり、話したりすることで英語に慣れ親しんでいきます。

 

基本的には担任の先生が指導しますが、外国語を母国語とするALTが補助に入ることもあります。

 

英語に楽しく触れるなかで、 「日本語と英語は語順が違うようだ」 「英語は男の子も女の子もI(アイ)なんだね」 「ミルクってこんな発音なの?」 といった気付きを大切にしていこう…という趣旨になっています。

5~6年生の「外国語(英語)教科化」でめざす学習内容

5~6年生では、基本的には担任の先生と専任教員のW体制で授業をすることになっています。

 

学習内容例は、

 

  • 自己紹介
  • ある程度まとまりのある話を聞いて理解する
  • 一日のスケジュールなどを書いたり伝えたりする
  • 物の場所や位置関係についての説明を聞いて概要を把握する
  • ていねいな表現で買い物や注文をする
  • 英語の語順を考えて話したり書いたりする
  • 日本の文化や行事について読んだり書いたりする

 

など多岐に渡ります。

 

基本的に文法やつづりを覚えるのが目的ではなく、「慣れ親しむ」「表現に触れる」「日本語との違いに気づく」などがメインの目的とされていますが、こう見るとかなり本格的な読み書きも含まれているように思えますね。

 

6年生までに扱う単語の数は600~700語。

 

もちろん、漢字と違って単語をすべて覚えるわけではありませんが、点数や成績として残るとなると、「楽しむ」だけで本当に大丈夫…?と少し心配になってしまうママ・パパもいるかもしれません。

 

小学校の英語必修化のメリット・デメリットとは?

小学校の英語必修化と教科化によるメリット&デメリット


英語必修化・教科化にはメリットもありますが、課題もいくつかあります。

英語必修化・教科化の課題とデメリット

数年間の準備期間があったとはいえ、全国の小学校で必修・教科化するには、一定以上のレベルをクリアした指導者が相当数必要です。

 

小学校教員の採用試験では、以前は英語は教える必要がないため重視されていませんでした。つまり、ベテラン~中堅の先生でも、英語を教えるスキルを持っていない先生が多数派ということになります。

 

逆に、民間の人材では、英語はできても小学生に教えるためのテクニックや児童心理の知識を兼ね備えた人は限られており、公立小学校での人材不足が心配されています。

 

この状態では、中学進学時点で子どもたちの学力にばらつきが出る可能性があり、「塾に行かなきゃダメ?!」と心配する保護者が出てくるでしょう。

 

保護者の不安を利用し、「英語は幼児期から始めないと聞き取れない!」「学校の成績をアップ!」と塾やスクールの宣伝・勧誘がエスカレートする可能性もあります。

 

国では、こういった不安を解消するため、先生たちの代表が英語学習の研修に参加し、各校に戻って担任の先生たちに再研修を行う制度や、各校に英語専門の教員(専科教員)を配置することなどを決めていますが、どの程度ばらつきがおさえられるのかは未知数です。

 

そのほか、よくあげられるデメリットとして、「日本語能力の発達の妨げになるのでは?」という意見もあります。 たしかに、日本語の文法をしっかり理解していないうちに英語の文法をメインに覚えさせようとすると、子どもが混乱してしまう可能性はあります。

 

しかし、現在小学校で行う「物の名前を英語で言ってみる」「あいさつ表現を覚える」などの範囲ではそうした心配はあまりないといわれており、実際に1997年から小学校で英語を必修化している韓国でも、母国語への影響よりも英語力の向上のメリットの方が大きいと報告されているそうです。

英語必修化・教科化のメリット

中学生になってから、とつぜん慣れない英語でみんなの前でスピーチをする、隣の人と会話する…と言われても気恥ずかしくてなかなかできないですよね。

 

その点、小学校3年生であれば、クイズ形式や歌などをまじえて、多くの子は楽しみながら英語に親しむことができると考えられています。

 

また、平成24年に文部科学省が実施した「小学校外国語活動実施状況調査」では、中学生の8割が、「小学校の英語の授業で英単語を「読む」「書く」機会が欲しかった」と回答しており、小学校で前倒しして学ぶことで、中学校での学習がスムーズに進むというメリットも期待できます。

必修化と教科化のスタート時期は異なる


ということで、小学校で必ず英語を学ぶ「必修化」は3年生から、教科書ができて成績もつく「教科化」は5年生から。スタート時期は2020年の4月から…というのが最初の質問の答えです。

 

これらの最終目的は、「子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成」することだと「学習指導要領改訂のポイント」には書かれています。

 

お子さんが該当するママ・パパは、この機会にお子さんと一緒に教科書や教材を眺めてみてはいかがでしょうか。

 

文/高谷みえこ

参考:文部科学省「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」

「学習指導要領改訂のポイント」

今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~