転校がもたらす人格形成

ほとんどの小学校では、転校する子が毎年学年に一定数いることと思います。 一戸建ての購入や転勤などで、単身赴任か転校か…と迷っているママもいるかもしれません。

 

小学校の年度途中での転校経験は、その後の人格形成や価値観にどのような影響を与えるのでしょうか? 自分自身が転校経験者というママたちに、良かったと思う点やデメリットについて聞いてみました。

 

令和の時代、転校生はどのくらいいる?


皆さんのお子さんや、ママ自身が小学生だった頃、クラスに転校生はどのくらいいたでしょうか?

 

筆者が小学生の頃通っていた小学校の学区は、市の中でも特に転勤族が多いエリアだと言われており、多い時には年間で各学年30人近い児童が転入・転出し、学期末ごとに誰かの「お別れ会」が催されていました。

 

しかし、令和の時代にはそこまで多くの子が転校する小学校は減少、特に年度途中での転入・転出は、親の転勤という理由では非常に少なくなりました。

 

総務省統計局のデータでは、都道府県や市町村間の人口の移動は、1970年代中盤をピークに、多少増減しつつも減り続けています。

 

これには、全国に支社や事業所を持つ大企業の多くで、以前よりも単身赴任が認められるようになったことや、地元から離れることのない「エリア限定採用」が設けられるようになったことなどが理由と考えられます。

 

とはいえ、やはり3月の学年末には引っ越し・転校する子がクラスに1人や2人はいる…というのが現在の多くの小学校の状況ではないでしょうか。

 

経験者が語る…転校は人格形成にどう影響?


子ども時代に転校を経験した人に「転校は、性格や価値観形成にどのような影響があったか」とたずねたアンケートでは、以下のようなメリットとデメリットが挙げられました。

 

転校のメリットや、人格形成にプラスになったこと

転校を経験した人自身が、子どもの頃メリットだと感じていたのは次のような点でした。

 

  • 家族で一緒に過ごせた
  • 学校や地域が荒れていたので脱出できてよかった
  • 女子の仲良しグループに息が詰まっていたので、抜け出せてうれしかった
  • 自分はすぐ泣く子だったが、転校を機にそのイメージをなくすことができた

 

成長後に感じている、人格形成上よかったことは、次のようなものが代表的です。

 

  • 新しい環境に慣れるのが得意になった
  • 色々な価値観が身についた
  • 人間観察が得意になった
  • モノやすみかに執着がなく、ミニマム&シンプルに暮らせている

 

他にも、「1人暮らしや夫の出張を淋しいと思わず平気で過ごせるのがメリットです」などの声がありました。

 

 

転校のデメリットとフォロー方法

一方、転校で辛い思いをした人が挙げたのは次のような点でした。

 

  • 新しい学校に行くときの緊張感とプレッシャーがすごかった
  • その地域特有の気質に慣れるのが大変だった
  • 共通の話題に入れない疎外感
  • 「どうせまたしばらくしたら離れるから…」と心を開けない
  • 幼なじみや親友ができない
  • 浅く広い付き合いになりがち
  • 最初は転校が悲しかったのに、だんだんとドライになっていく自分もイヤだった
  • 卒業式に泣く感覚が分からない
  • 授業の進み具合が異なるので、遅れていた場合追いつくのが大変だった
  • 年度途中の転校では、運動会や音楽会などの行事に合流するのが大変
  • 修学旅行や林間学校がなかった、2回あった
  • じゃんけんや鬼ごっこのルールなどが少しずつ違う
  • 習いごとも変わり、指導方針が違って戸惑う
  • 引っ越しで支出がかさみ、習いごとや欲しいものが制限された
  • 方言でいじめられたり差別されたりした
  • クラスで嫌われている子が近づいてきがち
  • 「前の学校では~」とうっかり言ってしまったのが気に障り、皆に無視されるように
  • 好きな異性がいたのに引っ越すのは悲しかった

 

など、非常に多くの経験談が寄せられました。

 

「じゃんけんのルール」などは、中にはその違いを楽しめる子もいるかもしれません。 また「人付き合いが浅く広い」という点は「誰とでも付き合える」と表裏一体になっていることもあり、すべてがデメリットとも言い切れないかもしれません。

 

しかし「方言でいじめられる」などは、もし転校がなければ発生しないこと。子どもの気持ちを考えると胸が痛みますね。

 

大人になってから感じるデメリットには次のようなものがありました。

 

  • 郷土愛・地元愛がない
  • テレビ番組を見ても応援する故郷がなく盛り上がらない
  • 履歴書を書くのが大変
  • 成人式に知り合いはゼロ、同窓会も呼ばれない

 

ただ、上記のデメリットを教えてくれた人の多くは、子ども時代に何回も転校を経験した人が大部分でした。

 

転校回数が1回だけの場合は、比較的、転校未経験者と近い感覚で育った人も多くいたのが特徴です。

 

とはいえ、転校は子どもにとって大きな変化と心身の負担がかかることは間違いありません。

 

転校時には、子どもが新しい学校で分からないことが多かったり、それを上手く伝えられずに困っていたりしないか、抜け落ちた単元がないか…などを保護者と学校が連絡を取り合い、しっかり確認することが必要ですね。

 

まとめ


今はSNSが普及し、昔と比べると、転校後に連絡が取れないうちに疎遠になったり交流が自然消滅したりすることは減ったといえます。

 

その反面、SNSで前の学校の友だちの楽しそうな集合写真を見たりすると、よけいに淋しく感じてしまうかもしれませんね。

 

転校が性格や人格形成に与える影響は、例えば「郷土愛がない」という人と「全国に愛着のある土地が人より多くできた」という人がいるように、1人1人で異なります。

 

転勤や転校が子どもにとっていいのか悪いのか…という問いに正解はないですが、ママやパパからのフォローだけは絶対に欠かせないですね。

文/高谷みえこ
参考/総務省 統計局「住民基本台帳人口移動報告 平成29年(2017年)結果」