自転車保険義務化のイメージ

ニュースでもときどき見かける、子どもの自転車事故。 子ども自身がケガをする以外にも、お年寄りなど歩行者に被害を与えてしまうケースもあり、高額な賠償金が発生しています。 お金ですべてが解決するわけではありませんが、万が一の場合に備えて自転車保険への加入は今や必須といって良いでしょう。

 

しかし、車やバイクと違って、実は自転車は全国的に保険の加入が義務付けられているわけではありません。 そこで今回は、子どもを持つママ・パパ向けに、いま子どもの自転車保険はどんな仕組みになっているのかを解説します。

 

子どもの自転車事故はどのくらい起きている?


「うちの子、自転車は持ってるけど、そんなに乗らないし…」と、自転車保険には特に加入していないという人もいるかもしれません。

 

しかし、警察の発表した事故件数調査によると、平成30年中に自転車が関わった交通事故は年間85,641件。 そのうち、自転車と車やバイクの接触事故は約8万件で、平成20年の約15万件と比べると半分近くと、ずいぶん減ってはいます。

 

ところが自転車と歩行者の事故は2756件と、10年間でほとんど横ばい。前年と比べるとむしろ増えています。 本人が自転車に乗らなくても、歩いていて自転車とぶつかることもあります。

 

また、警察庁発表の「小学生の状態別死者数・死傷者数」(平成25年~29年)を見ると、小学校1年生と4年生では自転車事故の死傷者数は約3200人から約6300人と倍増しています。

 

今はそんなに自転車を使わなくても、成長するにつれ行動範囲が広がって、子どもだけで自転車で出かけることも増えますので、いずれにしても注意が必要といえるでしょう。

 

自転車保険、加入「義務」があるのは限られた自治体だけ


実は、自転車保険は全国一律で加入が義務付けられているわけではありません。

 

近年自転車の重大事故例が相次いだため、国土交通省で保険の義務化が検討されていましたが、結局2019年の3月には

 

義務化する場合、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)のような公的な性格の強い制度を創設することになる。しかし新たに自転車用ナンバープレートが必要になり、登録手続きや費用増加で、販売店や地方自治体に大きな負担がかかる

 

として全国での義務付けはいったん見送られました。

 

ただし、都道府県レベルでは、条例により義務化が決まっている場合があります。 2019年時点で、必ず全員が自転車保険に加入しなければいけない都道府県は

 

  • 埼玉県
  • 神奈川県(10月から)
  • 滋賀県
  • 京都府
  • 大阪府
  • 兵庫県
  • 鹿児島県

 

の7県。

 

そのほか、人口50万人以上で自治体がある程度の決定権を持つ「政令指定都市」では、さいたま市・相模原市・名古屋市なども加入義務を定めています。

 

強制ではないけれども「できるだけ加入しましょう」としているのは北海道・群馬県・千葉県・東京都・鳥取県・ 徳島県・香川県・愛媛県・福岡県・熊本県などがあります。

 

しかし、加入が義務付けられていない県では自転車事故が起きないかというと、決してそうではありませんよね。

 

万が一の事故のときを考え、現在も多くの自治体で義務化が検討されていますので、あなたの住んでいる県も近いうち義務付けられる可能性は高いでしょう。

 

ただし現在のところ、自転車保険に入っていないからといって罰せられたり自転車の使用を禁じられたりすることはなく、自動車の保険とは少し厳格さが違うようです。

 

 

義務化になった時の自転車保険の入り方

家族全員カバーできる保険はどれ?


では、いざ自分の自治体で自転車保険の加入が義務付けられた場合。または、義務化はされていないけれども、子どもが自転車の練習を始め、購入を考えている場合。どこでどうやって保険に入ればいいのでしょうか?

 

最初に確認すべきなのは、現在加入中の他の保険です。

 

自動車保険や火災保険のなかには、オプションで「賠償責任保険」がついているものがあります。この補償内容が、条例で求められる賠償金額などと合っていれば、条例対応と認められますので、新しく自転車保険に加入する必要はありません。

 

ただし、上記が加入者本人(ママやパパ)だけに適用される場合と、家族全員の自転車事故がカバーされる場合がありますので確認が必要です。

 

現在加入している保険が子どもの自転車事故には対応していない場合は、子ども名義で加入済の生命保険や傷害保険・共済に特約で自転車保険をつける、または新しく何らかの保険に加入する方法があります。

 

単体の自転車保険には、他人にケガをさせてしまった場合の賠償責任だけのものと、自分のケガ治療費も支払われるものなどがあり、掛金はそれぞれ異なりますが、個人賠償責任のみであれば、1億円まで補償されて、月500円以下というものが大多数です。

 

ケガの治療費も出て、家族全員の個人賠償責任をカバーしてくれる保険でも、月1000円程度で加入できるものがたくさんありますので、いまお子さんに特にケガのときの保険をかけていない…という場合、検討してみても良いかもしれません。

 

その他、万が一の事故の際、相手が保険に加入していない場合の示談交渉を、プロの弁護士が代行してくれる「示談交渉オプション」がついている保険も多く見られます。

 

自転車購入時にはお店で説明してもらえたり、入学時に学校を通じてチラシが配られることもあります。

 

家庭によって保険の加入状況が違いますので、よく比較検討して、無駄なく、もれなく補償される自転車保険を見つけて下さいね。

 

まとめ


記事内で紹介した平成30年度の事故状況を見ると、自転車で事故に遭った人のうち、3人に1人は「交差点でよく確認せずに渡る」「スピードの出しすぎ」など、なんらかの法令違反をしていたそうです。

 

子どもは大人の行動を見て真似することもありますので、日頃から大人が自転車に乗る時も、交通ルールを守って安全確認をしっかりとする姿を見せていきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:警察庁「平成30年中の交通事故の発生状況」

警察庁交通局「児童・生徒の交通事故」(平成30年3月)

国土交通省「自転車損害賠償保険の加入促進について」

日本経済新聞WEB版 2019年3月「自転車保険、義務化は見送り 国交省「制度づくり困難」」