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世間一般では、子どもは大人と違って周りの目など気にせずに無邪気にふるまうもの…というイメージがありますが、全ての子がそうという訳ではありません。初めての場所ではママから片時も離れない子、他の子が叱られている声にもおびえてしまう子、大人や友だちに気を使いすぎて本音が言えない子など、ママから見れば「繊細すぎる」と思える子も意外と多いものです。

 

実は「繊細な子」には、生まれつき共通の気質があることが最近分かってきました。 今回は、繊細な子がその良さを損なうことなく成長するためにはどうすればいいのかを考えてみます。

「繊細な子」のママが心配していること

最初に、「うちの子、繊細すぎる気がします」というママからお子さんの様子を聞かせてもらいました。

 

「長男は小さい時から本当に怖がりで心配性なんです。風の音が強いだけでおびえて保育園に行きたくないと言ったり、弟が熱を出すと、死んでしまったらどうしようと部屋の隅でずっとしくしく泣いていたりします。多少なら分かるのですが、私から見るとちょっと病的なのでは?と思うことも」(Yさん・35歳・6歳と2歳の男の子のママ)

 

「絵本やアニメの世界に入り込んで、悲しい場面で大泣きしてしまうことがよくあります。子どもってみんなそんなものかと思っていたのですが、幼稚園の参観で読み聞かせがあった時、ポロポロ泣いていたのはうちの娘1人でした。朝から私の体調や気分が悪い時などは心配してくれる優しい子なのですが、共感しすぎるのか、園で吐いてしまって電話がかかってきたことも」(Jさん・31歳・4歳の女の子のママ)

 

「小さい時から公園や児童館でもいつもおもちゃやボールを奪い取られたり、順番を抜かされたりしても何も言えず。ある週末、それを見た夫が甘やかしすぎだと言い出して、そこからは厳しく接してみたのですが…効果がないどころかもっと萎縮してしまい、改善しないまま現在にいたります。本人は、ケンカして奪い取っても楽しくない、それなら譲る方がいいと言います」(Hさん・37歳・3年生の男の子のママ)

 

人を傷つけたりしない、優しいお子さんの姿が浮かんできますが、このままでは本人が辛いのでは?損するのでは?と心配になるママやパパの気持ちも分かりますね。

HSP(大人)、HSC(子供)ってなに?

上記のような感受性が強く繊細な人のことを、心理学用語で「HSP((Highly Sensitive Person)」と呼ぶことがあります。 子どもの場合は「HSC(Highly Sensitive Child)」で、日本語にすると「特別に感じやすい子ども」といった意味。

 

提唱者はアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士で、書籍『ひといちばい敏感な子』には、次のような子どもの特徴は、しつけや育て方の問題ではなく、生まれつきの気質だと述べられています。

 

  • 音や光・触感・痛みなどの刺激に対して敏感
  • 相手のちょっとした言動から気持ちを読み取ってしまう
  • 慣れない場所や人の輪に溶け込めない

 

こうしたタイプの子は5人に1人はいると言われていて、きょうだいの1人または全員がHSCということも珍しくないそうです。

 

HSCの傾向がある子は、他人の気持ちを思いやって行動できるだけでなく、物事を深く考えたり想像力や表現力が豊かであるともいわれ、決して悪いことではないのですが、「鍛えてやらなければ」と思いやみくもに厳しくすると逆効果になってしまうことも。

 

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「繊細な子」へのおすすめの接し方は

園や学校生活に困難を感じているお子さんを案じたママが、色々調べているうちにHSCのことを知り、まさにうちの子!と、はじめて納得したという話をよく聞きます。

 

ただ、同じ「授業に集中できない」という困りごとでも、ADHDなどの発達障がいによって注意が持続できないのか、「周りの騒ぎ声や、それを厳しく注意する先生の声に反応しすぎて辛くなってしまう」という理由なのかによって、適切な接し方は変わってきます。

 

同じく慣れない場所を怖がったり服や食べ物などに強くこだわるのも、アスペルガーなどの発達障害の特性なのか、敏感さゆえに刺激に耐えられないのかによって接し方を変える必要があります。

 

「HSC」は心理学用語であり、生まれつきの気質をいいますが、「発達障がい」は医学用語で、同じ子でも、相談先や受診先により違った答えが返ってくる可能性があります。また両方の傾向を持っている子もいます。

 

当記事だけでは医学的な診断はできませんが、HSCについては書籍やインターネットでも広くチェックリストが公開されていますので、確認してみるのもひとつの方法。

 

そして、やはりこの子は「繊細な子」だと感じたら、次のような接し方をするように気をつけると、比較的子どもを傷つけずにすむと言われています。

 

  • ママやパパと子どもが違ったタイプの場合、親の価値観を押し付けず、「この子はこう感じている」ということをまず受け入れる
  • 深く考えるタイプの子に対して判断を急かしたり、新しい場所に早くなじむよう強制したりしないで根気強く待つ
  • 暴力はもちろん、突然どなったり脅したりしないで落ち着いて諭す
  • 子どもがママやパパの気持ちを読んで希望通りに動くからといってそれを利用せず、子どもが本音で物事を選べるような雰囲気を作る

 

上記は繊細な子だけでなくどんな子にもおすすめの接し方と言えます。

 

しかし、例えばやんちゃで思いつくままに行動するタイプの子は少々大声で怒られてもあまり引きずらないのに対し、繊細な子には大きなダメージとなってしまうため、より一層注意してあげると良いですね。

まとめ

大人でも、人混みに行くだけでどっと疲れてしまう、職場でちょっと不機嫌そうな相手を見るだけで落ち着かなくなるなど、感受性が強い人はたくさんいますよね。

 

子どもの繊細さを否定せず、理解力と忍耐力をもって、できるだけのびのび育ってくれるようサポートしていきたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考:書籍『ひといちばい敏感な子』 エレイン・N・アーロン 著 明橋大二 訳 1万年堂出版