年金の支払いが免除される出産後のママのイメージ

いまSNSで、赤ちゃんのママ世代を中心に、「出産すると、しばらく年金払わなくていいらしいよ?!」という噂が流れ、話題になっています。

 

この話は本当なのでしょうか?さっそく確かめてみました。

 

「年金4ヶ月免除」は本当だった!ただし「国民年金」のみ


結論から言います。

 

「出産すると年金の払込が4ヶ月分免除になる」は、本当でした!

 

ただし、これは「国民年金」に限った話。

 

正式には「国民年金の産前産後期間の保険料免除制度」といい、おもに自営業や農業・漁業に就いている人(1号)と、その扶養に入っている人が対象となります。

 

会社勤めで厚生年金に加入している人(2号)は、そもそも以前から産休・育休中の保険料免除制度があるため、今回の対象とはなりません。

 

また会社員の夫の扶養に入っている人(3号)はもともと保険料が発生しないため、免除対象にはなりません。

 

以下は日本年金機構からのお知らせの抜粋です。

 

出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間(以下「産前産後免除期間」といいます。)の国民年金保険料が免除されます。 なお、多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3か月前から6か月間の国民年金保険料が免除されます。 ※出産とは、妊娠85日(4か月)以上の出産をいいます。(死産、流産、早産された方を含みます。)

 

予定日の前月・当月・その後2か月の計4か月間は年金を支払わなくてもいいとはっきり書かれていますね。

 

注目すべきは、「免除」といっても、経済的理由で年金が払えない人向けの免除とは違い、全額払ったこととしてカウントされること。これはうれしいですね (経済的理由で免除を受けた場合は、その期間に関しては、将来受け取れる年金額が1/2または1/3になるとされています)。

 

「年金免除」に該当するのは2019年2月が予定日の人から


この制度は、2019年の4月から開始されたもの。 そして該当するのは2019年(平成31年)2月1日以降に出産した人が免除対象になるそうです。

 

つまり、2019年1月31日より前に赤ちゃんが生まれた人は、残念ながら免除を受けることができません。

 

ただし、2019年2月1日以降に出産し、あとでこの制度を知った!という場合は、さかのぼって免除を受けることができます。 また、年金をまとめて払込(前納)すると少し安くなるため、すでに払込済みという人もいるかと思います。

 

その場合も4ヶ月分は返してもらえるとのことなので、「もう遅いわ」とあきらめずに、必ず申請しましょう。

 

年金手帳

 

でも…なぜ「年金免除」を自己申告?!


国民年金の負担額は、2019年現在、月1万6410円です。4ヶ月分なら6万5640円。大きいですよね!

 

なにかと物入りなうえ、ママが働くことのできない時期に、年金を「休止」ではなく、「払ったことにする」というのは、久しぶりに良いニュースだと思います。

 

ただ、この制度は、本人が申請しないと適用されません。

 

国民年金を納める窓口と、母子手帳を発行する窓口で、個人情報を共有していないからだそうです。 かなり大きな金額なのに、もし気付かなければそのまま…というのが何とも残念。

 

役所や産婦人科など、妊婦さんが行く場所にはポスターやチラシで周知されているのか気になり問い合わせてみたところ、最寄りの市役所に電話してみたところ、

 

「この4月から、母子手帳をお渡しするときに、お知らせの用紙をはさみ込んでお渡ししています」

 

という方法をとっているそうです。

 

母子手帳の交付時には、検診のことや健康面で説明するべきことがかなり多いので、1人1人に年金が1号か2号か3号か…を聞き取きとることまではしていないとのことでした。

 

近所の総合病院の産婦人科をのぞいてみると、特にポスターやチラシなどはありませんでした。 テレビ・雑誌・電車の中吊り・インターネットなどで、大きな広告が出ているのも見たことがありません。

 

実は、この免除分の財源はどこから出ているかというと、2019年から国民年金は1か月あたり67円値上がりしていて、その一部を産前産後の免除分に充てているとのこと。

 

わずかな金額ではありますが、子どもを持たない人の中にはこれを不満に感じる人がいるかもしれず、その風当たりを避けるため…という考え方もできます。

 

だとしても、母子手帳を発行した人のリストを国民年金の担当課へ渡して、該当者で手続きがまだの人にハガキでお知らせする程度はできるのでは?という疑問もわきますね。予算もそこまでかからないと思いますが…。

 

ところで、厚生年金ではもっと長期間の手厚い免除制度がすでに実施されています。

 

このまま少子化が進めば国民年金の財源もそれだけ減っていくのだから、国民年金でも、もっと免除期間を長くしてもいいくらいでは?と思うのは筆者だけでしょうか。

 

「産前産後期間の年金免除」必要書類と手続き


最後に、申請に必要なものと手続き方法を紹介します。

 

いつ申請すればいい?

母子手帳の予定日から6か月前になれば申請できます。 出産後に制度を知った場合でも、さかのぼって申請可能です。

 

申請に必要なものは?

  • 届出用紙「国民年金被保険者関係届書(申出書)」(市町村窓口にありますが、前もって書いて持参するなら、日本年金機構のHPからダウンロード可能です)
  • 母子健康手帳
  • 印鑑(本人自署の場合は押印不要ですが、訂正時などに備えて持っておくと便利です)

 

また、届出用紙には「基礎年金番号」または「個人番号(=マイナンバー)」を記入する欄があるので、記入時には年金手帳またはマイナンバーカードを手元に持っておくといいでしょう。

 

どこに申請するの?

居住地の市役所・区役所または町村役場の国民年金担当窓口へ提出します。

 

役所が遠かったり体調不良で行けない場合は郵送でも提出可能ですが、マイナンバーで申請する場合は、カードの両面をコピーしたものなど、マイナンバーが分かるものを一緒に送る必要があります。

 

以上の手続きについては、日本年金機構に

この制度に関するリーフレット

がありますので目を通しておくと良いですね。

 

まとめ


SNSではこの制度が始まってしばらくすると情報が広がり始め、「なぜ制度をこんなにひっそり始めたのか?」「取り立てはビシバシするのに、免除は教えてくれないんだね」などの声も上がっています。

 

厚生年金の場合、たいていは会社の総務担当者が手続きしてくれるため、自分が免除を受けていること自体知らなかったママもいるほどですが、国保の場合は現状自分で申請するしかないようです。

 

もし、身近に国民年金加入の妊婦さんがいたら、ぜひ「この制度、知ってる?」と声をかけてみて下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考:日本年金機構「Q. 国民年金はどのような人が加入するのですか」

日本年金機構「産前産後期間の国民年金保険料が免除となります!」

国民年金被保険者関係届書(申出書)記入例(PDF 249KB)

厚生労働省「平成31年度の年金額改定についてお知らせします」