「無事故、安全第一」批判の声も擁護に変わり

佐田展隆
社長として日々、オーダースーツの事業に取り組む佐田さん

── スーツ登山は意外に機能性も高いんですね。これまで長く続けてきたことで事業の周知にも成功されましたね。

 

佐田さん:最初は自社のために始めたことですがメディアに露出する機会も増え、オーダースーツをつくりに来てくれる人はもちろん、山で会って声をかけてくれる人も増えました。私に会えると雷鳥を見るのと同じくらいのレアさを感じて感動してくれる登山者もいらっしゃいます。

 

また、スーツで登ることを批判する声があったときも、「これまで無事故で安全対策をきちんとしている人だ」「海外の雪山を登ることは普通の人ではできない。それを知ってから批判をしろ」など、私の登山活動を見てくれている人たちが擁護してくれるようになりました。

 

── これまでに印象に残った山はありますか?

 

佐田さん:槍ヶ岳から西穂高岳までの大キレット、ジャンダルムという死者も多く出る登山道に挑んだときのことはよく覚えています。実際に近くで滑落した人を見てしまい、我々はそれでも進みましたが、やはり引き返した人もいました。ワンミスで命を落とすような場所のため、スーツで事故を起こしたら非難されることは目に見えていたので、より慎重に挑みました。

 

── 百名山制覇まであと少し、がんばってくださいね。

 

佐田さん:百名山制覇後はいつかエベレストに登ることが目標です。登山は好きなので百名山以外にもいろいろ登りたいのですが、この企画を始めてからスーツ以外で登山をできなくなってしまったことだけがちょっとした悩みです。先日、子どもと槍ヶ岳に行くときは登山ウェアで行こうと思っていたのですが、「お父さんはスーツでしょ」と言われてしまい(笑)。たまには普通に山登りも楽しみたいです。

 

 取材・文:酒井明子 写真:佐田展隆