「水面が鏡のようになりウユニ塩湖のような写真が撮れる」と、年間約50万人が訪れる人気観光スポット「父母ヶ浜」。その裏ではゴミだらけだった父母ヶ浜を清掃し、絶景を世界に広めるための努力がありました。三豊市観光交流局の石井紫さんにこれまでの経緯と、絶景写真の撮り方を教えてもらいました。

ゴミだらけで埋め立て予定だった浜に年間50万人

石井紫
取材に応じてくれた三豊市観光交流局の石井紫さん

── 石井さんは三豊市観光交流局で父母ヶ浜について発信をされているそうですね。最近は「日本のウユニ塩湖」と呼ばれるほど、美しい景色が人気の観光地・父母ヶ浜。年間50万人近い観光客が来るそうですが、魅力はどこにあるのでしょうか?

 

石井さん:父母ヶ浜のある香川県三豊市生まれの私にとって、父母ヶ浜は日本一夕日がきれいな海岸です。自分が景色の一部になったり、主人公になったりできる写真が撮れることが魅力で、2016年には年間約5500人だった観光客が今では約50万人に。国内だけでなく海外からのお客さまも多いです。

 

── 2016年に比べて観光客の数が100倍以上になっています。きっかけはなんだったのでしょうか?

 

石井さん:以前の三豊市は香川県の観光MAPに名前ものらない、見どころのない街でした。その状況を変えたいという想いが街にずっとあって。2017年から父母ヶ浜を観光スポットとしてアピールすることが決まりました。

 

私は当時、三豊市観光交流局に配属されていました。父母ヶ浜のことは子どものころから知っていましたが、昔は近くにあった別のビーチのほうが海の家やお店も多いし、きれいで人気だったんです。父母ヶ浜は流れ着くゴミが多く、昔の浜辺はあまりきれいではありませんでした。1990年代に一度、父母ヶ浜を埋め立てる話がでたのですが、そのときに公務員や漁師をはじめとする地元の方が反対して、たった7人から浜の清掃活動が始まりました。それが何十年も続いたおかげで、父母ヶ浜はきれいな浜へと生まれ変わっていったんです。

 

── 清掃活動が行われたことできれいな浜になり、観光スポットとして押し出されることになったのですね。

 

石井さん:地元の方たちの何十年にもわたる努力の成果です。2016年にはカメラマンの永井歩子さんが撮った父母ヶ浜の写真が、三豊市のフォトコンテストで佳作をとりました。当時はそこまで話題にならなかったのですが、私としてはその写真がとても印象的でした。

 

普通、父母ヶ浜を撮影するときは高台から夕景を撮るのが定番なのですが、その写真が撮影されたのは浜辺。浜辺にいる人が潮だまりに映っている写真なのですが、水面が鏡のようになっていて、その水面に人物が反射している景色が別の世界にいるような雰囲気です。

 

海外では凹凸のない平らな水面に光が当たるボリビアにあるウユニ塩湖で、そのような景色を見ることができます。SNSで拡散されたことで死ぬまでに見たい絶景のひとつとして有名になった観光地で、「天空の鏡」とも呼ばれています。父母ヶ浜の写真を見て、日本でもそれと同じような写真が撮れるのだと知りました。

 

それで、このような素敵な写真が撮れるとみんなに知ってもらいたいという気持ちで、写真の撮り方を知っていたカメラが好きな市の職員に撮り方を教えてもらいました。そして、地域カメラマンといっしょに写真の撮り方や撮れる時間帯などの撮影条件などを研究し、撮影した写真などをホームページで発信し続けたんです。

 

このような写真を撮るためには浜がきれいであることが最低条件です。それができたのも長年続けていた清掃活動があったからこそだと思っています。

最高の撮影タイムは「干潮の夕方」

── ホームページで写真の撮り方や撮影に最適な時間帯を発信されたそうですが、具体的にどのように撮るのがおすすめなのでしょうか?

 

石井さん:まず大切なのはタイミングです。写真を見て、波打ち際で撮影していると思っている人が多いのですが、波があると人が水に映った写真を撮ることはできません。潮が引いて浜辺に大きな水たまりがたくさんできる干潮のタイミングであることが第一条件です。

 

さらに、父母ヶ浜は地形的に夕方に風が発生しにくいため、水に波が立たない夕方であることも大切。つまり、干潮の夕方が最高の撮影タイムになります。特に日没の1時間半前くらいからが、人や景色が反射しやすくていいですよ。昼間の干潮もダメではないのですが、人物が逆光でシルエットになる夕方がおすすめ。三豊市観光交流局のホームページに1年間の撮影できるタイミングが書いてあるので、ぜひチェックしてください。

 

── タイミングがわかったらどのように撮影するのがいいのでしょうか?

 

石井さん:カメラを目線の高さに構えて撮影しがちなのですが、足元までカメラを持っていき、水面ギリギリで撮るとうまくいきます。特に大きな水たまりの前が撮りやすいですよ。

 

── 写真では傘を持って撮影している人も多いですよね。

 

石井さん:実は以前から浜の清掃をしてくれた方々が、観光客のために写真を撮ってくれています。ご自身が座って撮るための撮影用のイスを用意するだけでなく、観光客の方が荷物を置くカゴや写真映えするカラフルな傘も準備してくれて。写真の撮り方もすごく上手ですよ。

 

── それもボランティアなのですか?

 

石井さん:そうなんです。せっかく観光で来ても写真を誰かが撮らないといけないとみんなで撮れなくて残念じゃないですか。せっかくならみんなで写って欲しいという気持ちからのようですが、撮った写真を見たときのみなさんの喜んでくれる顔が元気の源になっているそうです。その笑顔があると疲れも吹き飛んで、どんどん元気になっている気がするそうですよ(笑)。