「母体が第一」7年越しにわが子を抱いた日
── 子どもを迎え入れるまでの準備期間には、「同性カップルが子どもを迎える方法について学ぶコミュニティ」にも参加されたそうですね。
ハヤトさん:はい。でも、参加してみたら女性ばかりで、男性カップルは私たちだけでした。そこで主催者の方と少し話をした時に「あなたたちがやろうとしていることは、リスクが高いですよ」と、はっきり言われました。「妊婦さんの体に何かあった時、本当に揉めないって言い切れる?」と聞かれ、何も言えませんでした。きっとその方はいろんな同性カップルを見てきた上で、まだ生まれてもいない子どもの人生を、本気で考えてくれたからこその言葉だったと思います。
ちょうどその頃、里親の勉強会で知り合った司法書士さんが、養子縁組や同性カップルが家族を守るための法律に詳しく、色々と教えてくださいました。お相手カップルとの話し合いにはより慎重さが必要だと痛感し、その司法書士さんに第三者として入ってもらい、相談するようになりました。
タカフミさん:子どもの権利を法律で制限することはできないので、4人の約束事として取り決めたことを「合意書」という形にまとめていきました。何より生まれてきた子どもが、自分のルーツを知りたいと思った時に、知れる環境を整えたかった。その思いは女性カップルとも共有していました。
── 実際におふたりの元に赤ちゃんが来るまで、どのくらいの年月がかかったのですか?
ハヤトさん:話し合いを始めてから7年後です。妊娠中に、司法書士さんのすすめで「胎児認知」も行いました。婚姻関係にない相手でも、お腹の子の父親が自分だと法的に認める手続きです。こちらの市役所で書類を揃え、遠方にある妊婦さんの本籍地へ行く必要がありました。
ただ、前例の少ないケースだったため役所側もとまどい、双方の市役所を何度も行き来してようやく手続きが完了しました。あわせて先方の女性には親権を辞退し、遺伝子上の父親である私ひとりに親権を指定する旨の一筆を書いてもらいました。そして出生届と一緒に「親権届」というものを提出し、その届けに「父母の協議により親権者を父と定める」と記載しました。
タカフミさん:念には念を入れて準備をしてきましたけど、僕たちは最初から、もし女性側が「やっぱり子どもは渡せない」と言ったら「諦めよう」という話はしていました。体の負担は女性側が圧倒的に大きく、そうなったら争わずに受け入れなくてはいけないと思っていました。結果的には約束通り、退院されるタイミングで赤ちゃんを託していただきました。
── 2023年6月、待望の赤ちゃんが手元にやってきた時は、どんなお気持ちでしたか?
タカフミさん:本当にかわいくて、小さくて…何があってもこの子を守ろうと思いました。女の子で、僕たちは「なーちゃん」と呼んでいます。
ハヤトさん:絶対に自分は親バカにはならないと思っていたんですけど、抱っこした瞬間から完全に親バカになりました(笑)。
取材・文:富田夏子 写真:ハヤト、タカフミ