休暇をポジティブにとらえる文化を

── 杉並区の職員は、年20日の年次休暇(有給休暇)に加えて、夏季休暇が5日設けられており、平均取得率は80%に上るそうですね。厚生労働省によると、国内企業の有給休暇の平均付与日数は17.6日で、平均取得日数は10.9日となっているそうです。制度として存在していても、取得が進まない現状についてはどうお考えですか。

 

岸本区長:区役所はさまざまな制度をつくり、区民や事業者にも働き方についてお願いする立場ですから、まず自分たち自身が、安心して働き、休むことのできる職場を実現していく必要があります。

 

私は20年ヨーロッパで働いてきましたが、日本とは休暇を取ることに対する社会的、文化的な感覚は、日本とかなり違う感じています。制度的に見ると休暇の日数自体にはそれほど違いがなくても、休み方には違いがあります。もちろん国や職場によって違いますし、連続して3週間休むのか、1週間ずつ取るのかはそれぞれが決めることですが、私がヨーロッパで働いていたときには、1年に1度か2度、まとまった休暇を取ることがごく自然なこととして受け止められていました。しっかり休む時間があるからこそ、また仕事に向き合える。そういう感覚は、日本との大きな違いのひとつだと思います。

 

働くことって、やりがいとともにしんどさがありますよね。自身の能力も上げていかなくてはならず、精神的なストレスもかかります。休暇中に、自然や文学、自分の好きなことに触れ、家族や友人とコミュニケーションを取ることで得られるものは大きいですし、仕事環境から離れることで視野が広がり、未来への発想も生まれます。休暇を取ることがポジティブにとらえられ、個人にとっても社会にとってもプラスに働くという認識が広まることを願っています。

 

── 有給休暇をいっぺんに取ってしまうと、子どもの急な発熱や親の介護などに備えられないため、ある程度の日数は残しておきたいという声も聞かれます。

 

岸本区長:子どもの急な発熱や親の介護などは、自分ではコントロールできないことです。そのときのために有給休暇を残しておかなければならない、という働き方そのものを変えていく必要があると思います。看護や介護が必要になったときには、そのために設けられている休暇や休業制度を、周囲に遠慮せず使える職場にしていく。

 

一方で、年次有給休暇は、休息したり、家族や友人と過ごしたり、自分の好きなことをするなど、自分自身の生活や幸せのためにも使える。そういう環境と文化をつくることが大切です。制度があるだけでは十分ではありません。「必要なときには安心して制度を使っていい。そして有給休暇もしっかり取っていい」と、組織のトップが明確に伝えることも重要だと思います。

 

── 区長としての2期目がスタートしています。今後取り組んでいくことについて教えてください。

 

岸本区長:自治体には、区民の命と生活を守る「最後の砦」としての役割があります。同時に、困ったときに支えがあり、一人ひとりが自分らしく生き、自分なりの幸せを追求できる地域をつくることも、自治体の大切な仕事だと思っています。安心を守ることと、幸せを支えること。その両方を大切にする杉並区をつくっていきたいです。

 

取材・文:内橋明日香 写真:杉並区役所