先月、再選後の就任会見で「23日間の長期休暇を取得すること」を発表した東京都杉並区の岸本聡子区長。職員の休暇の取りやすさにつながるという肯定的な意見のほか、就任直後のタイミングを疑問視するなど賛否の声がありました。休暇を終え公務に戻った岸本区長に、休暇取得の理由と休暇中の過ごし方について伺いました。

区長1期目は息子にとっても大変な4年間

── 6月末の区長選で再選を果たし、先月から杉並区長の2期目がスタートしました。その後、7月13日から8月4日までの23日間、長期休暇を取っていましたが、休暇取得の理由について教えてください。

 

岸本区長:離れて住んでいる次男のケアを理由に休みを取りました。区長選が終わった直後で、スケジュールを見ながら9月からの議会が始まる前のタイミングを選んだ形です。

 

岸本聡子杉並区長
オンラインで取材に応じる岸本区長

── 次男のケアというのは具体的にどのようなことですか。

 

岸本区長:長男は成人し、次男は大学生になりました。4年前に区長になる前はベルギーに住んでおり、当時16歳だった次男とはお互いに離れて暮らしています。連絡は密に取ってはいますが、高校、大学入学と、大変な時期に物理的には一緒にいてあげられることはできませんでした。区長としての1期目は、私にとっても大変な4年間でもあったので、ここで一度、自分にも次男にも向き合いたいと思い、3週間お休みを取りました。

 

1期目は、やはり区政と政治家としての仕事が優先だという気持ちで4年間走ってきましたので、選挙が終わったら、その結果に関わらずリチャージする時間を作りたいという思いがありました。

休暇を終え「余白の大切さ実感」

── 現在は公務に復帰していますが、長期休暇を振り返っていかがですか。

 

岸本区長:本当に休みを取ってよかったと思っています。海外で働いていた頃に住んでいた家で次男が生活しており、そこに滞在していました。家の掃除をしたり本を読んだり、買い物に行ってご飯を作るという日常生活を送り、余白の時間があることの大切さを実感しました。一緒にいる時間が増えると、次男がこれまでの胸の内を話し始め、息子がこの4年、必死に頑張ってきたということがわかって、「よく頑張ったね」と伝えました。こういう時間がないと、なかなか言えないこともあると思いますので、一緒の時間を過ごせてよかったと思います。

 

── 休暇中もオンラインミーティングに参加していたほか、業務の報告なども受けていたそうですね。実際に登庁することはなかったそうですが、災害発生時は段階に応じて登庁して対応するなど、緊急時の体制について事前に公表していました。

 

岸本区長:完全に仕事から離れていたわけではなく、必要な報告を受けたり、週1回のオンラインミーティングに参加したりしていました。ただ、日本と時差もあり、仕事をする時間は現地の朝などに限定し、日中は次男と過ごすなど、普段とは明確に違う時間の使い方ができました。

 

杉並区は去年の10月に新しい情報ネットワークシステムを入れてから区役所のデジタル環境が格段によくなりました。民間企業ではすでに当たり前のことだと思いますが、区役所の働き方改革の一環としてようやく情報インフラが整った形です。適切なルールや環境を整えながら職員のリモートワークを徐々に広げています。資料はクラウドで整理され、私も休暇中、効率的に資料に目を通すことができました。新しく導入したシステムの運用を組織の経営層が実用できたことも大きな収穫でした。

「再選直後の長期休暇に」非難の声も 区長に休暇の定めなく

── 長期休暇を取ることは再選後の就任会見で公表しましたが、再選直後に区長が不在になることへの疑問の声や、トップが率先して休むことで職員が休みを取りやすくなるなど賛否の声が寄せられたそうですね。区長の耳にはどのような意見が届いていますか。

 

岸本区長:区役所には50通ほどご意見が寄せられました。杉並区では「区長への手紙」という、区政へのご意見やご要望を受け付けるシステムがあります。文書やメールで寄せられた区民からの意見は、長期休暇のタイミングなど批判的なものもありましたが、それらには丁寧、誠実にお答えしています。

 

── 区の職員には年次休暇(有給休暇)がありますが、区長の休暇について規定はあるのですか。

 

岸本区長:区の職員には、地方公務員法で定められた年次休暇(有給休暇)があるのですが、区長や副区長、教育長など、公務員の特別職には法で定める休暇というものがなく、休暇も働き方も自己裁量で決められます。総理大臣や、国会議員なども同様です。

 

「政治家たるもの、365日働く」という方が多いのですが、私はそれがいいとは思っておりません。日中は区政の仕事をし、夜や週末は政治家としての政務活動もありますので、みずから休みを取らないとまったく休めていない状態になりかねません。1期目の際は、お盆やクリスマスなど一般的なお休みに加えて、区職員と同じようにお盆や年末年始などには1週間ほど休みを取っていました。

 

ただ、振り返ってみても1期目の4年間は、自分の体や心のケアの時間は極端に少ないものでした。次男は何度か日本に来ましたが、私がフル回転で仕事をしていると、彼にしっかり向き合って寄り添える時間までは確保できなかったので、節目のタイミングで休息を取らせていただきました。