「高卒で就職すれば」に抱いた違和感「問い」が支えに
── 勉強も熱心にされていたそうですね。
松尾さん:周囲からは「なぜそんなに勉強するの?」と不思議がられました。「施設の子なんだから無理しなくていいよ」という言葉には違和感がありましたし、シスターから「高卒で就職すればいいじゃない」と言われても、「本当にそうなの?」と疑問を抱いていました。施設育ちだからこの程度でいい、という決めつけを受け入れることができず、自分の人生は自分で選びたいと強く思っていたんです。
ただ、すごく虚しさを感じたことはありました。普通の家庭だと成績が上がれば、両親から褒められたり評価されたりするのでしょうが、私は誰にも褒めてもらえない。酷いことをしても誰も怒ってくれない。「それなら生きていても意味ないんじゃないか。このまま車道に飛び出したほうが楽なのかな」と思ったこともあります。なんとか踏みとどまったのは、私がここで死んでも誰も悲しむ人がいないんじゃないかって思ったから。死んでも死に損じゃないかって。だったら生きたほうがいいと思いなおしました。
勉強に精を出したのも、自分の人生を自分で切り開くには進学するしかないと思ったから。だから頑張って勉強をしたんだと思います。
── 幼い頃から常に自分と向き合っていたのですね。
松尾さん:そうだと思います。「私にとっての居場所ってなんだろう」「自分はどうしたいんだろう」と常に自問自答しながら、自分と対話してきました。日記にも、つらいことがあれば「今日もよく乗りきったね」と記し、自分自身に声をかけてきました。親がいなくても、せめて自分だけは自分の味方でいたかったんだと思います。
── そして最終的には大学に見事合格されました。
松尾さん:周りに流されそうになったり、自分が押しつぶされそうになっても、常に「問い」を立てることを辞めなかったことが、人生を切り開くうえで大きな支えになったと思います。
取材:文 岡﨑優子 写真:松尾知枝