アニメ好きのオタクファイターとして知る人ぞ知るプロボクサー、井上浩樹さん。世界最強の怪物ボクサー・井上尚弥さん、その弟の拓真さんの従兄弟で、自身も元世界チャンピオンの経歴を持ちます。「好きなアニメは?」と話をふると、浩樹さん、話が止まりません!推しは人生に彩りを与え、モチベーションを高める。彼の目を輝かせて語るアニメ愛、オタクワールドが全開です。
稼ぎの7割、推し活で散財は「本当です」
── 浩樹さんはボクシングをやる目的を「好きなアニメ、ゲーム、漫画のため」とされています。実際、ボクシングで稼いだ賞金の7割はそうした趣味に投じてきたそうですね。オタクファイターならではのボクシング観ですが、本当なのでしょうか?
井上さん:本当です。推しているアニメのグッズやイベント代などに費やして、ひどいときは7割を超えていたと思います。ファイトマネーを「全額ベット」というときもありました(笑)。
── それほどアニメ愛が深いのですね。いちばんの推しは?
井上さん:声優の徳井青空さんです。いろんなアニメ作品の声優をされていて、どれも僕が好きなものなんです。好きな作品やキャラから声優の徳井さんにも興味を持つようになり、ファンになっていった感じですね。どこがいいか?明るくて元気なところに惹かれます。徳井さんは漫画や絵本を自身で描いていて、僕もその影響で漫画を描くようになりました。
また、僕は「ヰ乃上ころまる」という名前でVTuber活動もやっているんですけど、その名前の由来も徳井さんのあだ名「そらまる」から取っているんです。あっ、むちゃくちゃキモい人になっていませんか(笑)。

ボクシング試合の入場曲も徳井さんが歌う曲や、好きなアニソンが多いですね。『BanG Dream!(バンドリ!)』というアニメのハッピを着てリングに上がり、トランクスは黄色かピンク色。『バンドリ!』は徳井さんの声優作品で、トランクスの色も徳井さんの声優作品『探偵オペラ ミルキィホームズ』のキャラが黄色のイメージなのと、同じく徳井さんの声優作品『ラブライブ!』のキャラがピンク色のイメージだからという理由です。
── 多くのボクサーは、いかついテーマソングで登場し、トランクスも金色とか銀色とかギラギラしたイメージがありますが…。
井上さん:それはあり得ないですね。僕からしたらアニソンが心を奮い立たせる応援歌で、黄色やピンク色のトランクスが戦闘服ですから。推しに囲まれて試合に臨むと緊張しなくてもすむのもあり、モチベーションが全然違うんですよ。俄然、ファイトが湧いてきます。
試合だけじゃなくて、練習のときも推しの存在は欠かせません。きつい練習を終えた日の夜に、推しの出るアニメや漫画を見て眠ると、疲れがリセットされるんです。好きな感情による癒し効果でしょう。僕にとって推し活はボクシング人生の支えになっています。
部活も初恋もすべてアニメに影響を受けた
── そもそも、アニメ好きになられた原点は何なのでしょうか。
井上さん:小学校低学年頃に出合った『テイルズ オブ デスティニー』という人気のRPGです。登場するキャラクターに魅了され、そこからアニメやゲームの世界にハマるようになりました。ボクシングを始めたのも小学3年生だから同じ時期ですね。
ボクシングを始めてからも『SLAM DUNK』に影響を受けてバスケットボールをやってみたり、『テニスの王子様』の影響でテニスをやろうと思ったことも。高校時代は軽音部でしたが、それも『けいおん!』という漫画が流行ったから。とにかく、アニメや漫画に影響を受けるタイプでした。
── 子どもは少なからず影響を受けるものですが、それはめちゃくちゃ影響されていますね。
井上さん:しかも、僕の初恋相手はじつはゲームのキャラなんです。先の『テイルズ オブ デスティニー』に登場する「ルーティ・カトレット」という泥棒なんですが、明るくて活発なところがかわいくて。
RPGって仲間4人で行動するのが基本なんですが、ルーティとふたりっきりで冒険したいから、主人公とルーティ以外はHPをゼロにしてプレーしてました(笑)。でも続編の『テイルズ オブ デスティニー2』ではルーティが結婚しちゃって。あまりにしんどくて、ゲームに身が入りませんでした。
このゲームも、僕の人生に大きく影響を及ぼしています。『テイルズ オブ エターニア』という前作があるのですが、その作品のコンセプトは「変われる強さ、変わらぬ思い」。僕はこのフレーズをボクシングの試合のスローガンに何度も使っているんです。試合前の会見で「対戦に臨む気持ちは?」と記者さんから聞かれたときも、この言葉を口にしています。ほとんどの記者さんに理解されませんが(笑)。