AIに読書感想文を書かせるのは「論外」
東京都の令和7年度の調査では、家庭学習時に生成AIを使ったことがある子どもは38%、中学生に絞ると51%となり、どちらも前年度比で2倍以上増加しました。AIは子どもたちにも急速に浸透し、学習での使用にも抵抗感が少ないようです。しかし、栄光ゼミナールの松田先生は「安易に使うものではない」と警鐘を鳴らします。
「たしかにAIは便利ですが、夏休みの読書感想文をAIに作らせたとしても、その意味が薄れてしまいます。AIの文章をコピペのように写し書きしても、自分の考えを筋道立てて説明するといった思考がほとんど働きません。AIを学習に使う際に大切なのは『自分のフィルターを通すこと』。作文でいえば、自分のなかからうまい表現が出てこないときだけAIに聞き、吟味したうえで使うのがいいのでは。そのまま使ったとしても、自分の力にはなりません」(栄光ゼミナール・松田先生)。
国語が苦手なら「暗記もの」を固めて
では、国語力を上げるには何から始めればよいのでしょう。両塾とも「覚えれば確実に点が取れる問題を極めること」だと言います。
「国語の問題は、語彙、文法、古典、長文読解の4つでできています。このうち、最初の3つは暗記である程度点数が取れます。語彙なら漢字やことわざ、熟語。文法なら教科書や便覧の文法事項。古典は古文と漢文の読み方のルールですね」(栄光ゼミナール・松田先生)。
「漢字は眺めるだけでは覚えられません。字形、読み、意味、送りがなや例文などが結びついて、初めて脳に定着します。書く練習だけでなく、どういう場面で使うのかまで調べてほしいですね」(湘南ゼミナール・中河内先生)。
もうひとつ両塾がすすめるのは「文章をきちんと読むこと」。栄光ゼミナールの松田先生は「国語嫌いな子ほど、早く読みたがる」と指摘します。「早読みは読み飛ばしが多く、設問を読んでから問題文を再読することになり効率が悪い。まずはゆっくりでいいので、普段から1回の読みでしっかり文意を読み取る訓練をしてください。読みながら『この文は何を言いたいのか』を考えて『次はどういう展開になりそうか』を予想する。これだけでもだいぶ変わるはずです」。
湘南ゼミナールの中河内先生が特に重視するのは「音読」です。「言語の基本は発声。人間は文字よりも先に『音』で言葉を理解してきました。子どもたちは年齢が上がるにつれ、文章は黙って読むものと思いがちですが、意味をきちんと理解するには音が大きな助けになります。家ではぜひ、声に出して文章を読んでください。次に、言葉を頭で映像にしてみて、抽象的な言葉なら『具体的にはこういうことかな』と想像する。この積み重ねが大切です」。
国語力が伸びれば、他教科も伸びていく
最近の入試全体において、国語力が与える影響は特に大きいとの指摘も。全教科共通の傾向として「長文化・複雑化」しているので、国語力が低いと他科目の点数にも大きく影響するというのです。
「なかでも、『読解力』は全教科において必須です。正しい読み取りができないと、他教科でも失点の大きな原因になってしまいます」(栄光ゼミナール・松田先生)。
たとえば、数学の問題文で条件を読み飛ばす、理科や社会科でグラフや表の読み取りを間違う、英語で「正答と間違い」どちらを選ぶかを間違う…こういったミスは、国語力を上げることで防げるものだといいます。
「受験という観点では、国語力がその子の『天井』、つまり点数を取れる上限を決めていると思います。ですから、母国語である国語よりも他教科の成績が伸び続けるとしたら、本質的には不自然な状態。国語を伸ばせばその子の伸びしろが広がり、他教科も含め全体の成績が上がるはずです」(湘南ゼミナール・中河内先生)。
「読んで、理解して、自分の言葉にする」。地味だけれど欠かせない力を育てることが、子どもの学力を伸ばすいちばんの近道と言えるのかもしれません。
今回お話を伺った方
湘南ゼミナール 教材開発部 国語科責任者・中河内孝先生。
栄光ゼミナール 高校入試責任者・松田裕太郎先生。
取材・文:前島環夏 参考:東京都教育委員会「令和7年度 児童・生徒のインターネット利用状況調査」