「なんで足がないの?」。子どもからの素朴な質問よりも、大人の「かわいそう」という眼差しや「健常者と同じことを求める」空気感に傷ついてきたという義足のダンサー・大前光市さん。しかし、次第に「普通か否か」という枠にとらわれない「特別枠」という発想を意識できるようになったそうです。

「なんで足がないの?」という言葉よりも

大前光市
普通にとらわれず個人の表現をする唯一無二の存在

── プロのダンサーを目指して大阪芸術大学・舞台芸術学科舞踊コースを卒業し、ダンサーとして活動していた大前さん。24歳のときに、ずっと憧れていた方が新たにプロのダンスカンパニー「Noism」を立ち上げ、創業メンバーに応募されます。しかし、最終オーディションの2日前に暴走運転の車にはねられ、左膝から下を切断することになりました。

 

退院後は義足をつけてバレエをするも、健常者と同じように踊ることがよしとされる空気に限界を覚え、28歳のときに脱退。年1回の「Noism」のオーディションは毎年受け続けましたが、4年目のときに「ここでは無理」と宣告を受けました。

 

新たな道を模索するなかで、20代後半になって現在所属している「Alphact」というアーティスト集団に入ったことで、大きく流れが変わったそうですね。

 

大前さん:今までやってきたバレエのように「見本」にどれだけ近づけるかで評価されるのではなく、僕の個性を認めてくれる仲間に出会えたことで、自信を徐々に取り戻していきました。

 

── その後は舞台を重ね、大前さんにしか表現できない唯一無二の表現が開花していきます。2016年にはリオパラリンピックの閉会式に、17年の紅白では平井堅さんの歌と共にダンスを披露するなど大きな話題を呼びました。さらに講師やワークショップでも活躍の場を広げていきますが、子どもたちから必ず聞かれる質問があるとか。

 

大前さん:「なんで足がないの?」って必ず聞かれます。「車にはねられてなくなったんだよ」と説明しますが「痛くないの?」と続きますね。

 

印象深かったのはある小学校を訪問したとき。義足を外した僕の足を見て、小学1年生の男の子が「なんか、豚みたいやなぁ」と言ったんです。先生たちは凍りつきましたが、僕は「そっかぁ、たしかにそう見えるよね」と笑ってレッスンを続けました。僕の左足の断端(切断した際、残された足の先端部分)は義足をつけるために中心が凹んでいるので、その子にとってそう見えたんですかね。悪意がないこともわかるので、そう言われても別になんとも思わなかったですね。

 

── 純粋に質問してきただけだと。では、大人が「かわいそう」といった反応をすることもありますか?

 

大前さん:今は、僕に初めて会う人は僕のことを知ってて会う人がほとんどだからあまりないですが、以前はありましたよ。あからさまに蔑んだ眼差しや差別を感じたこともあったし、当時バレエを辞めた理由も、健常者と同じダンスができずにかわいそうといった空気があったからです。