これは決して美談なんかじゃないけれど

── 17年には紅白に出場し、平井堅さんの歌と共にダンスを披露されました。ダンスの振り付けは辻本知彦さんでしたが、辻本さんは大前さんと年齢が近く、Noism出身の方です。複雑な思いはありましたか?

 

大前さん:正直はじめはありましたよ。米津玄師などの有名なアーティストの振り付けを担当している憧れのダンサーでしたし、何より僕があれだけ入りたかったNoismに彼は入れた人です。勝ち組と負け組、光と影というか。でも、紅白が終わるとここでも大きな反響をいただくことができました。悔しさがゼロになったわけではないけれど、僕の今までの状況を知ったうえで一緒に紅白のダンスを作り上げてくれたおかげというか。この経験で、自分のなかで少し前に進んだような気がします。

 

事故から20年以上経ちましたが、大きな経験を経て、今はとてもいい環境で過ごさせてもらってます。でも、障がいを受容して自分を認められるようになるまで10年かかりました。悩み、苦しみ、怒り…美談なんかでは、まったくないです。当初、自分が思い描いていた人生とは形も変わりました。

 

ただ、今となっては方向性が変わってもいい、自分が自分らしくいられる場を見つけたことで、自分を認めることができたと思います。見本に合わせる生き方もありますが、僕は僕らしく、自分のスタイルで生きていることを誇りにもっています。

 

取材・文:松永怜 写真:大前光市