手術日は小林麻央さんが亡くなった日だった

── そして、2017年6月22日に手術を受けられました。その日は、乳がんで闘病していた小林麻央さんが亡くなった日でもありましたね。

 

麻倉さん:乳がんの診断を受けてから、私は麻央さんのブログを何度も読み、たくさんの勇気をいただいていました。手術が無事に終わったその日の夜中、術後の痛みに苦しみながらふと携帯電話の画面を見ると、小林麻央さんが亡くなられたというニュースが流れていたのです。

 

私が手術を終えて麻酔から覚めようとしているまさにそのときに、同じ乳がんと闘い抜いた彼女が旅立っていった。その事実を知って、言葉にできないほどのショックを受け、死について、深く、深く考えさせられました。

 

── 同じ病気だっただけに、落ち込んだのではないですか。

 

麻倉さん:落ち込んで、引っ張られてしまいそうになる私を救ってくれたのが、主治医の土井先生でした。翌朝、回診に来た先生は私の顔を見るなり、「で、歌った?」「胸、見た?」と、サバサバした口調でたずねてこられたんです(笑)。泣いている場合じゃないわよ、と言わんばかりの明るいテンションでした。

 

「先生、昨日手術したばかりで、自分の切られた胸なんて怖くて見られませんよ!」と言うと、「きれいに処置できたから見たほうがいいわよ」って。いい意味でその勢いにのまれて、術後のリハビリに向き合うことができました。

 

麻倉未稀
乳がん治療でお世話になった湘南記念病院がリハビリテーション専門病院に生まれ変わる前に、最後のクリスマスライブ。患者やスタッフの方々に歌を届けた

── がんは手術後も、放射線や抗がん剤など、つらい治療が続くといいます。麻倉さんはいかがでしたか。

 

麻倉さん:私の乳がんは「ルミナールA」というタイプで、抗がん剤治療ではなく、ホルモン治療薬を10年飲み続ける必要があります。「抗がん剤じゃないなら、副作用はないのでは?」と思われるかもしれませんが、関節のこわばり、ホットフラッシュ、記憶力の低下などはありました。体力面でも、急にドーンと具合が悪くなることがあり、日常生活や仕事に影響はありますね。

 

ただ、それらについても、歌手活動を続けながら、少しずつ対処法を見つけています。「歌いたい」気持ち、そして、その後開始したがん検診の普及活動などを支えに、これからもがんに向き合っていきたいですね。

 

取材・文:鷺島鈴香 写真:麻倉未稀