黒虎軍団入りで直面した、新たな試練

橋本拓実
26歳で黒虎軍団入り。師匠の山田勝己さんと

── 26歳のとき、SASUKEのレジェンドである山田勝己さんが率いる「黒虎軍団」に入られました。黒虎軍団は、完全制覇を目指して最強のSASUKE戦士を育成するというチームです。精鋭部隊に入られて、大きな転機になったのではないでしょうか。 

 

橋本さん:はい。オーディションを受けて、念願の合格を果たすことができました。「これで一歩、夢に近づいた」と本当に嬉しかったです。現在は8人のメンバーが所属していますが、山田さんのご自宅にある私設セットで練習させてもらえるなど、これ以上ない環境でトレーニングをさせてもらっています。

 

── すごいですね。意気込みもさらに強くなったのではないですか。

 

橋本さん:そうですね。でも、そこからが本当の試練の始まりでした。実は、黒虎軍団に所属すると、一般応募枠でのエントリーができなくなるんです。本戦に出場できるのは、大会の約1か月前にチーム内で行われる「トライアル(選考会)」で、8人の中から上位2名に入った選手だけ。

 

仲間であり、全国から集まった最高峰の選手たちがライバルになりました。少しのミスも許されない過酷なサバイバルです。そこから出場権を手にすることがまだできていなくて、31歳になった今も、本戦の舞台には立てていません。

 

── もどかしいですね。

 

橋本さん:「やるべきことはやっているのに、結果が出せない」という現実に、強い焦りや葛藤を感じることもあります。でも、そんな僕に山田さんは「拓実は実力もあるし、誰よりも努力をしている。だからこそ、自分を信じて突き進め」と言い続けてくださっています。その言葉があるから、出場を逃しても「がんばろう!」と立ち上がれますね。

辞めていく仲間を見送りながら

── 18年間、途中で諦めていく仲間もたくさん見てきたと思います。なぜ橋本さんは、進み続けられるのでしょうか。

 

橋本さん:SASUKEに人生を捧げている人は世界中にたくさんいます。自宅に本物そっくりのセットを組んでいる人も少なくありません。いっぽうで「出場」「ステージクリア」を夢見て一緒に切磋琢磨してきた仲間たちが、年齢や環境の変化、怪我などで夢を諦めていく姿もたくさん見てきました。

 

苦しいことや悔しいことは、もちろん数え切れないほどありました。でも、「辞めよう」と思ったことは本当に一度もないんです。なぜなら、トレーニングをしている瞬間が何よりも楽しいから。

 

そして、5歳のときに見た、大雨の中で決してあきらめずに壁に立ち向かうケインさんの姿が、今も忘れられないんです。「絶対にあの舞台に立ちたい」という純粋な気持ちは消えません。5歳の僕が夢見たあの輝かしい舞台に立つまでは、僕はどこまでも挑戦を続けるつもりです。

 

 

18年間、何度跳ね返されても「辞めようと思ったことは一度もない」と言い切る圧倒的な熱量。その情熱の源泉は、5歳の頃から変わらない「SASUKEが大好きだ」という、どこまでも純粋な思いでした。

 

取材・文:大夏えい 写真:橋本拓実